12.またしても衝撃体験!



ブルマさんと楽しく女同士の会話に花を咲かせていたあたしですが…その、数分後、ちょっとした事件。
いやいや、あたしの中では大事件が起きました。



『見上げれば同じ空。<12>』



「あ、はは…」
「「お姉ちゃん、すっげぇ〜!!」」
「……………」

思わず笑顔が引きつってますブルマさん。
そして、何故かテンションが上がりまくりのお子様2名。そんな3人の視線を受け、一番の驚きと共に絶句しているあたし。

「な、何で??」

訳がわからずそう呟くあたしの手の中にはボッキリと折れて…真っ二つになっているフォークが1本。
ブルマさんとの話に盛り上がっている最中、待ちきれなくなったトランクスくんと悟天くんが勢いよく部屋の中に…それも窓から突入してきて…驚いて思わず力が入った瞬間。


ボキッ…と。


ものすごい音と共に、あたしの手に握られていたフォークが…折れちゃいました。
せっかくケーキをいただいていたのに…ほ、本当に何で〜〜〜〜っ!!?

「あ、あたし、そんな怪力じゃない、んですよ!?」

精一杯の弁解だけど、子供たちのキラキラした瞳が迫ってくる。

「お姉ちゃん、すごいよ!」
「やっぱり強いんじゃないの?ホントはさ!」
「……………」

またまた絶句してしまうあたし。
あたし…一応これでも女の子なのよ〜。
何の拍子かはわからないけど、こんな事態になって恥ずかしくない訳がない!2人の子供の向こうではブルマさんがこっそり同じデザインのフォークを曲げようと力を込めているみたいだけど、結局曲がるどころか、手のほうが先に痛くなったようで、断念しているし…
さらにその時。

「紅愛〜、話終わったか?」

悟空が戻ってきた。
瞬時に部屋の中の異様な雰囲気を察したようで、一瞬キョトンとしている。

「何やってんだ?おめぇら」
「何、といいますか…」

思わず目を逸らすあたし。…って、悟天くん!ご丁寧に説明しなくていいからっ!!
しかも悟空も何やら瞳をキラキラさせているし…うぅっ、イヤな予感がする。そしてこういう時の予感は大抵当たるものなのよ!

「すっげぇじゃねぇか、紅愛!」
「いや、すごいっていうか…」
「オラ、紅愛に修行つけてみてぇな!!」
「なっ…」

やめて下さい。
絶対死ぬ。
即座にそう言おうとしたけど…

「何言ってんのよ、孫くん!紅愛は女の子なのよ?アンタらみたいな戦闘オタクじゃないの!」
「で、でもよ〜」
「修行つけるなんて、絶〜っ対ダメよ!!」

悟空に掴みかからんばかりの勢いのブルマさんのほうが素早かった。それでも悟空は諦めがつかないようで…

「ちょっとだけでもダメかぁ?」

なんて、食い下がらんとしていたりする。

「あ、あたしにそんなことしても、面白くないと思うよ?」

思わず自分でも苦笑いでそんな反論をしてみるけど…あぅ…振り返った悟空の笑顔が眩しい。

「そんなことねぇって。力の使い方がわかってねぇだけだろうからな!とっさにそんだけの力が出るなら、引き出せる力もまだあるかもしれねぇし!!」
「いや、ないない」
「…ふん、くだらんな」

全力での否定を続けるあたしの耳に、またしても聞いたことのある声。
ふと視線を向けると、そこには扉のところに背中を凭れかけさせながら、腕組みをしているべジータさんの姿があった。

「何だべジータ、結局おめぇも来たんか」
「ふん…」

何だかんだ言って、べジータも興味あるんじゃねぇか〜…なんて言っている悟空を完全に無視して、べジータさんの視線はあたしから離れない。
何ていうか…すっごい迫力なんですけど。
当のあたしも何も言えず、黙ること数十秒…見かねたブルマさんが間に入ってきた。

「べジータ、アンタただでさえ目付きが悪いんだから、あんまり睨むんじゃないわよ、紅愛が可哀相じゃない」
「な…」

一瞬不服そうにしながら、それでも舌打ちをしつつあたしから視線を外すべジータさん。
見てしまった…ブルマさん強し!!の瞬間。
何故か感動のようなものを覚えているあたしの横に、再び悟空が立つ。
見上げると、またニッコリ微笑まれた。またしても顔が赤くなってしまいそうで、そんな顔を見られないようにそっと俯く。

「さ、紅愛も悟天も、そろそろ帰ぇるか!」
「うん!」

元気に返事をした悟天くんが寄ってくる。
ふと窓の外を見ると、もう随分日が傾いてきていた。思っていた以上に、話し込んでたんだなぁ…



ブルマさん一家に見送られ、玄関から外に出る。
悟天くんはもうフワリと宙に浮いて、トランクスくんに手を振っていた。

「ちぇ〜、もっとゆっくり遊びたかったなぁ」
「ふふっ、じゃあまた遊びに来てもいいかな?」
「うん、もちろんだよ!絶対また来てよね!!」

嬉々としているトランクスくんの横に立つブルマさん。そしてふと気付いたかのように、あたしの顔を見つめてくる。

「そういえば、紅愛はどうやってココまで来たの?飛べないわよね?」
「え?えぇ」

確かにあたしは空なんて飛べません。
飛行機のカプセルあげようか?なんて、すごく親切な言葉をかけてくれるブルマさんだけど、あたしは一瞬返答に困ってしまう。

「え、えっと…」

思わず口篭ってしまって、全然気付かなかった。悟空があたしのすぐ背後に立っていることに。

「なぁに大丈夫だ。来る時はこうやって来たからな」
「っ、きゃ…」

ハッとしたときにはもう悟空に抱き上げられていて…というか、お姫様抱っこというものをされていて。
悟空の整った横顔が目の前に!
そして逞しい腕でしっかりとあたしの体を抱きとめてくれていて!!

「おめぇ、やっぱ軽ぃなぁ〜…ちゃんと食ってるんか?」

いえ、あたしにとってはそんなどころでなくて。

…か、顔から火が出ます…

思わず真っ赤になるあたしとニコニコしている悟空を交互に見たブルマさんが一言。

「あらあら、お熱いことで」

パオズ山までのお空の道のり。
果たしてもつか、あたしの心臓!!
そんなフレーズが何故かあたしの頭の中をグルグルと回っていました…