26.「もう、怖くねぇな」


今なら、あたしも悟空を抱きしめることが出来るかもしれない。
…そんな風に思った。
思った、けれど…そんな穏やかな気持ちも長くは続かなかった。




『見上げれば同じ空。<26>』




ゴロゴロゴロ…


ピシャーンッ!!!


「きっ!きゃぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「わわっ、何だよ名前!!」

その時、とびきり大きな雷が鳴り響いた。
落ちたっ!!!今の絶対落ちたっ!!!!!
あたしは思わず悟空にしがみついた。
もう、一瞬にして色気も雰囲気もへったくれもない…
はっきり言って、それどころじゃない!

「あたしダメなの!雷、怖いの〜〜〜っ!!」
「何だ、そうだったのけ」

パニックになるあたしに反して、悟空は冷静だった。
その悟空にしがみついたまま、体の震えをおさえることが出来ないあたし。
しかもその時、さらなる追い討ち…

「〜〜〜〜〜〜っ!!!??」
「お、今の雷で停電になっちまったんか」

電気まで消えて、部屋の中は真っ暗に。
ダメ!もうホントにダメ!!!

「イヤぁぁぁ!!もうホントにヤだぁぁぁぁ!!!」
「名前っ、暴れんなって。オラの側にいれば大ぇ丈夫だから、なっ!」
「うぅぅぅ〜〜〜っ」

悟空の言葉から優しさが伝わってくる。
それは十分すぎるくらいにわかる…でも、怖いものはやっぱり怖い。
あたしは震えながら悟空にしがみついたまま。

「と、とりあえず向こうに座っか」
「…う、うん」

あたしをなだめるように頭をポンポン、と撫でる悟空。
その悟空に促されてゆっくりと歩き始めた。
その時。




ピシャーーーーーンッ




「ぎゃぁぁぁぁぁ!!二発目〜〜!!!神様の意地悪〜〜〜〜!!!!」
「名前、この雷はデンデのせいじゃねぇと思うぞ」
「そりゃそうだけっ…きゃあっ!!!」

悟空の冷静な突っ込みに思わず返答をした瞬間。
あたしの足元は思いっきり何かに躓いた。

「あぶねぇ!!」

とっさに悟空が庇ってくれたのがわかった。

「いたた…」

ごめんね、悟空…
一緒になって倒れこんだけど、後頭部にはしっかりと悟空の腕が回されていて。
少しの痛みを感じた程度で済んだ…でも、それよりも。

「悟っ、悟空っ…て、ててて、手ぇ!!!」
「え?何だ?」
「手が、変なトコに当たってる〜!」
「あぁ、悪ぃ。どうりで柔らけぇと思ったぞ〜」
「おっ、おかしなこと言わないでよぉ!!」

暗闇の中で何が起こっているかについては、皆さんの想像にお任せします…(笑)
真っ暗で本当に何も見えない。
だけど、一緒に倒れこんだ悟空があたしの上に圧し掛かっているだろうことは何となくわかった。

「悟空、どいて…恥ずかしいよ」
「ん?あ、あぁ」

耐え切れなくなって思わずそう呟くと、悟空もゆっくりと体を起こしてくれる。

「それにしても、電気・・・つかないね」
「ああ、そうだな」

仰向けに倒れたまま瞬きを繰り返すあたし。
こうすれば何か見えてくるかと思ってもみるけれど、やっぱり暗闇のまま。
何も見えない。
遠くではまだ雷も鳴り続けていて…

「怖いなぁ…」
「お、そうだ!いい考えがあっぞ!」
「えっ」

あたしのすぐ上で悟空の嬉々とした声が聞こえた。
そして、次の瞬間。
突然眩しい光が瞳に差し込んできて、あたしは思わず目を閉じる。
ゆっくりと目を開けると、そこには…

「ははっ、名前見えたぞ〜」
「悟、悟空?」

金色の光を放つ悟空の姿。
これって…超サイヤ人??
悟空の体を包む金色のオーラが辺りを明るく照らしている。
突然の変化にあたしはまたまたびっくり。
そして、思っていた以上に悟空が近くて、さらにびっくり。

「これで明るくなったろ。もう、怖くねぇな?」
「あ、ありがとう」
「それにしても名前、意外と怖がりなんだなぁ」
「そ、そんなこと言ったって〜」

悟空が笑いながら、あたしの頭を撫でた。
相変わらず、圧し掛かられているような体制だけど…悟空の大きな手が何だか心地よい。
雷は大嫌い。
でも、今回はその雷のおかげで悟空との距離が少し縮まったような…
そんな気がした。





ちなみに、そのすぐ後。
雷の音と停電に同じく驚いた悟飯くんと悟天くんが急いで入浴を終えてきて…

「なっ…と、父さん!?」
「あれぇ?お父さんと名前お姉ちゃん、何やってんの??」

キョトンとしている悟天くんの両目を悟飯くんが素早く塞いだ。

「父さん!そ、そういうことは子供のいないところでにして下さいよ!!」
「ん?何がだ、悟飯??」

激しく誤解をしたらしい悟飯くん。
まぁ確かに、仰向けに倒れているあたしの上に悟空が圧し掛かっているような体制になっているのだから、紛らわしかったのかもしれないけど…

「そんなんじゃないのよ、悟飯く〜ん!!」

むしろ、暗闇の中で足を取られてすっ転んだだけなんです〜っ!
心の中の必死の叫びは、果たして赤面する悟飯くんへと届いただろうか。

「ま、まさか強引に事に及んだ訳じゃあないですよね!?」

真剣な形相で詰め寄ってくる孫家、長男。
うん、どうやら届いていないようです!

う、うわぁぁん…