27.いざ、都へっ!!


「え、買い物?」

ある晴れた気持ちの良い日。
洗濯物を干していた手を止めて、声をかけてきた相手を見れば、キラキラさせながらあたしのことを見上げている無邪気な瞳とかち合った。





『見上げれば同じ空。<27>』




「うわぁ、おっきいデパート…」

さすがは都…というべきか。
あたしはポカンと目の前の建物を見上げている。

「名前お姉ちゃん、早く行こうよ」
「あぁ、はいはい」

その時、くいくいと繋いでいた手を引かれる。
その姿を見降ろしながら笑うと、悟天くんは早く早くとさらにあたしの手を引いた。
本当にウキウキしているらしい悟天くんは本当に可愛い。

「悟空、悟飯くん、行こう?」
「はい」
「ああ」

ふと後ろを振り返ってそう言うと、笑顔で頷く悟飯くんと、頭の後ろで手を組みながら歩き始める悟空。
そうなのです。
突然の予定ではあったのですが、孫家全員+あたしで只今、都まで買い物に来ています。
あたしにとっては初めての都でのお買い物…ちょっぴり心も踊ってしまう。

「それにしても、悟天くんは成長期なんだね〜、ついこの前まで着てた服が小さくなっちゃってるなんて」
「へへ〜、すぐに名前お姉ちゃんに追い付いちゃうからね!」
「ははっ、それは頼もしいなぁ」

普段は道着を着てることが多いから、服が小さくなっていることにも全然気付かなかったらしい悟天くん。
うん、何だかすごく悟天くんらしい。
ふと、もう一度後ろを振り返ると悟空と目が合う。

「よかったの?悟空」
「ん?何がだ?」
「修行、したかったんじゃない?」

あたしの言葉に悟空はパチパチと瞬きをしている。
普段、悟空は朝ごはんを食べたらすぐに修行に出掛ける。
今日もそのつもりだと思っていたから、買い物に行こうと思っていることを伝えて「オラも行くかな」という返事が返ってきた時は正直驚いた。

「何だ、そんなことか〜」

瞬きをしていた悟空がいつもの笑顔に戻る。

「名前が行くっつうからオラも行きてぇって思ったんだ。修行はまた明日やりゃあいいしな!」
「…あ、そ、そうなんだ」

屈託のないその笑顔と、直球な言葉に思わず頬が熱を持つあたし。
どうして…さらっとこういう恥ずかしいことを言えるのかなぁ…///

「でも、本当に久しぶりですね…一家全員で買い物なんて」
「そうだなぁ」
「うん!随分前にお母さんと一緒に来たのが最後だったもんね!」


…チクッ…


悟天くんの言葉に一瞬、胸が痛んだ。
や、やだなぁ…何で、チクッてしたんだろう。
悟天くんに悪気はないのに。
当然のことを言ってるだけなのに。

「…名前!名前っ!!!」
「…え、っきゃ!!!」

名前を呼ばれていることに初めて気が付いたあたしがハッとした時。
一瞬にして、足元を何かに持っていかれる感覚。
…転ぶっ!!!
そう思って、訪れる衝撃に思わずぎゅっと目を閉じた。
けど…覚悟した痛みはいつになっても訪れない。

「…ぅ?」
「危なかったなぁ」

恐る恐る目を開けたあたしの瞳に飛び込んできたのは、安堵しているらしい悟空のドアップ。

「わわっ」
「名前、ぼ〜っとしてっと転ぶぞ」
「ご、ごめん」

ふと足元を見るとそこにあったのはエスカレーター。
いつの間にかデパートの中に入っていたみたい。

「あ、もしかしてコレ見たの初めてだったんか?すげぇよな、階段が動くんだからよ」
「いや、エスカレーターは知ってるよ」
「そっか」
「ありがとう、悟空」

そう言いながら笑顔を見せると、悟空は「ああ」と言って顔を背けながら頬を指で掻いていた。
…あれ?もしかして、照れてる??
一瞬そう思ったけど、まさかね。





それから色んなフロアを見て回って…
とりあえず、目的だった悟天くんの服はゲットした。
嬉しそうに買い物袋を胸に抱きしめながら、歩いている悟天くん。
普段は道着ばかりだけど、意外と普通の服もよく似合っていて、選ぶのがすごく楽しかった。

「悟空もたまには私服着ればいいのに…ねぇ、悟飯くん?」

悟天くんと手を繋ぎながらそう言ったら悟飯くんも「ええ」と笑っている。

「いやぁ、オラはいい。窮屈だしな」
「そう?」

予想通りの答えが返ってきて、ちょっぴり残念。
何とな〜く覚えている漫画で見た悟空の私服。
ジャケット姿とか、ジーンズ姿とか…結構似合ってたのになぁ。

「そういえば、名前さんはいいんですか?」
「え?」
「名前さんの服、まだ見ていないじゃないですか」
「あ、あたしはいいよ」

悟飯くんの申し出に困ったように笑いながら、そう言うあたし。

「何でだ?見ていけばいいじゃねぇか」
「…う…」

悟空まで賛同してきて、思わず言葉を詰まらせるあたし。
確かにね!
あたしだって自分の服が欲しくない訳じゃないですよ!
だって、買い物大好きな年頃だもの!!
でも、ね。

「大丈夫、本当に今回はいいから」
「そうか?」

はは、と曖昧に笑うことしか出来ない。
だって、正直な話…今、こうして買い物しながらも心配になってしまう。
一体、今この家の財源はどこなの!?
悟飯くんは学校だし、悟空は働いていないし…どう考えても孫家の財源が見付からない。
それでもあたしを住まわせてくれているんだから、無駄遣いできないもの。
…食費はほとんど自給自足の状態だからいいけど、悟飯くんの学費とか、悟天くんにだって今後かかるだろうし…

「はぁ…」

働こうかなぁ…あたし。

「名前?」
「え?」
「面白ぇなぁ、おめぇ今色んな顔してたぞ」

またしても横から出てきた悟空のドアップに反射的に一歩後ろに下がった。
本当に…心臓に悪い。

「あれ?」

その時、あたしが百面相している間に繋いでいた手を離れて行った悟天くんが近くのお店の前にいるのが目に入った。
興味深そうに何かを眺めている悟天くん。
その後ろから悟飯くんもお店の商品を見ているみたいだった。
あたしもそこへ歩み寄って、ふと気が付く。

「…これ、駄菓子屋さん?」

うわぁ、こっちの世界にも駄菓子屋さんなんてあるんだ〜。
何だか少し懐かしい気分になって、嬉しくなる。

「菓子か?」
「そう、昔ながらのお菓子が売ってるお店」
「へぇ〜、うまそうだけどこれじゃあオラには足んねぇなぁ」

あまりにも悟空らしい感想ね。

「名前さんの世界にもこういうお店あったんですか?」
「うん」
「そうなんですか、僕は初めて見たなぁ」
「悟天くんくらいの歳のときにね、大好きでよく通ってたの」

あたしが育ったのは結構田舎の町だったから。
駄菓子屋さんも普通にあって…学校の帰りにお小遣いで飴を買ったりとか、よくしてたなぁ。
そんな懐かしさに浸りつつ、じ〜っと並んでいるお菓子を見ている悟天くんの頭をそっと撫でる。

「この水飴があたしのお勧めよ。途中で色が変わるんだから」
「そうなの?すごい!」

目をキラキラさせながら、買ってもいいか悟空と悟飯くんに確認している悟天くん。
何だか、小さい頃のあたしを見ているみたい。
お金をもらって、レジへと走っていく悟天くんのあとをついて行くあたしも暖かい気持ちになった。

「はい、どうぞ」
「ありがとう!」

水飴とお釣りを受け取った悟天くんが、また自然とあたしの手を握ってくる。
にこにこしている店員さんにそっと頭を下げるあたし。

「坊やはお母さんと仲良しなのね〜」
「え?」

その次の瞬間には、店員さんの笑顔の一言に絶句してしまったけど。
いやいや、お母さんじゃないし。
ふと下を見ると悟天くんもキョトンとしていた。

「おばちゃん、名前お姉ちゃんはお母さんじゃないよ」
「あら、そうなの?あんまり仲良さそうだったから、お父さんとお母さんなんだとばかり…ごめんなさいね」
「い、いえ」

ふと見上げると、いつの間にか隣に並んでいた悟空もびっくりしているみたいだった。
…てか、あたし…こんな大きな子供がいるように見えるの!?
いやいや、そうじゃなくて…でも、こうして並んでいたら、あたしでも親子に見えちゃうんだぁ…

「あ、はは」

そう考えると、嬉しくもあり、少し複雑な気分でもあり。
苦笑いをしてしまうあたしの手を握る悟天くんの手にきゅっと力が込められる。

「…名前お姉ちゃんが、お母さんになってくれればいいのになぁ」
「…へ?」
「悟っ、悟天っ!」

ポツリと呟かれた悟天くんの言葉。
…え、今、なんて…?
慌てた様子の悟飯くんに悟天くんはキョトンとしている。

「どしたの、兄ちゃん?」
「悟天、そんなこと言われたら名前さんが困るだろ?」
「…でも」


…チクッ…


あ、また…胸がチクッてした。
そうだよね、悟天くんはちょうどお母さんに甘えたい年頃だもんね。
無意識のうちに悟天くんの手の感触を確かめるかのように、強く握り返していた。

「名前お姉ちゃん?」
「ふふ、ありがとう、そんな風に思ってくれて」
「…えへへ」

目線を合わせて、そっと頭を撫でるといつもの元気な悟天くんの笑顔。
お母さんになるのは無理だけど、今あたしに出来ることは甘えたい時、悟天くんに精いっぱい甘えさせてあげることだ。
そのままにっこりと微笑むあたし。

そんなあたしに、ひどく優しい視線が向けられていることに…
この時はまだ、気が付かなかった。



『ネタ希望アンケートより頂きました。ありがとうございました!』

“孫家みんなで買い物に行く”
いただいたコメントは以下です。

○夏さま:
孫家みんなで…って、すごくいいですねっ。ギャグ夢でもほのぼの夢でも、是非読んでみたいです

投票だけの方々も本当にありがとうございました!