30.慣れない状況=対処不能。


「えっと…」
「ん?」
「あの…」
「何だ?はっきり言えよ」
「とりあえず、どいてくれませんか?」




『見上げれば同じ空。<30>』




外は綺麗なオレンジ色の夕焼け。
明日もお天気になりそう…洗濯日和は気持ちがいいよね。
でも…そんな空模様とは打って変わって、あたしは今、大変困惑しています。
もう、結構パニックです。
何で?
どうして、こんなことになった??

「残念。そりゃあ聞けないお願いってもんだぜ」
「あ、はは…ホントにどけてくれませんかね??」

もう苦笑いするしかない。
目の前の人物は、戸惑っているあたしを見て楽しんでいるのでしょうか??
笑顔を引き攣らせているあたしの前で不敵に微笑んだまま…
しかも、大きな手があたしの頬にそっと添えられている。

「全く…困ったお姫様だな」
「いえ、なんていうか、もう…」

これ以上後ろに下がろうにももう壁に背中を押しつけられていて、不可能。
こんな状況、はっきり言って慣れてないんです!
どうしたらいいのか、わからないんです!!
何故かあたしは…初対面のこのターレス、という男に口説かれている…らしい…んです…

「名前、だったよな…」
「は、はい」
「俺は一目で気に入った…なぁ、俺のものになれよ」

ひぃぃぃぃぃっ!!!
みっ、耳元でしゃべらないでぇぇぇ!!!
思わず体を強張らせて、心の中で叫び声をあげるあたし。
そんなあたしがこの人の瞳には一体どう映ったのか…

「ふっ、ホント可愛いな」

…なんて、不敵な笑みのまま言われてしまった。
もういいですか?
意識、手放していいですか??

「一体…何を、おっしゃってるのか…」

思わず眩暈を催した…その時。

「ダメだよっ!」

聞き慣れた声に現実へと引き戻される。
ん?と思って声がしたほうへ視線を落とすと、目の前のターレスさんの足に悟天くんがしがみついていた。
しかも、力いっぱいターレスさんのことを睨みつけている悟天くん。

「んだよ、悟天」
「名前お姉ちゃんはターレスおじさんのものになんかならないよ!」

悟っ、悟天くん!
意味分かって言ってるの!!?(汗)
しかも、ターレスさん…思いっきり眉間にしわを寄せているし。

「悟天、ガキは邪魔すんな」
「でもよぉターレス」
「あ?何だよ、ラディッツまで」
「口説くのはお前の勝手だけどな?名前はカカロットのお気に入りだぞ」
「…何だと?」

ふとターレスさんの肩越しに見えたラディッツさん。
ターレスさんはその言葉に小さく舌打ちをして、また視線をあたしへと戻してきた。
そうなんです…あたしはまだバーダックさんの家にいるのです。
そろそろ帰ろうかなぁ…なんて思っていた矢先のこの大惨事…
ターレスさんはラディッツさん、悟空の従兄弟にあたる人らしい。

じっと見られていて、正直居心地は悪いけど…
それ以上に悟空に似すぎていて、変な感じ。
ラディッツさんを訪ねてきたターレスさんとふと目が合ったと思った次の瞬間には、もうこの状態だったけど。

「名前」
「はっ、はい?」
「お前、まだカカロットのものにはなってねぇんだよな?」
「…へっ?」

突然の一言に、ぼっと顔が赤くなる。
そんなあたしを見て、ターレスさんは笑った。

「やっぱりな!だったら、この俺にもまだチャンスはあるってわけだ」
「はぁ…俺、知らねぇぞ?」

何故かため息をついているラディッツさん。
そして、不敵な笑みが復活したターレスさん。

「な、なっ…」

何なの!
一体、今の一瞬で何を分かりあったの、この2人は!!!

「俺、マジだからな?」
「〜〜〜〜〜〜っ」

頬を行ったり来たりしていた手が顎に添えられる。
え?と思っていた刹那、くいっと顔を上に向けられて…
目の前の胸を押し返したけど、どうすることも出来ず、ただぎゅっと固く目を閉じるあたし。

その時だった。


ドッカン!!!



「っ!!!」

突然の轟音にびくっと肩を竦めた。
でも、立っていたその姿に思わずほっとする。

「悟、悟空〜…」

…壁、大穴あいてるけど…

「ターレス!名前から離れろよな!!」
「カカロット…へぇ、話をすればってヤツか」
「名前の近くにおめぇの気を感じると思ったら…イヤな予感的中じゃねぇか」

今もターレスさんが間近にいて固まり続けるあたしをちらっと見た悟空は、そのままターレスさんを睨みつける。
こんな状況、想像してもいなかった。
ラディッツさんはどこか冷静に「お前はこっちに来てな」なんて悟天くんを呼び寄せているし。

「悟空、ごめんねっ!帰り、すっかり遅くなっちゃって」
「オラそんなことに腹立ててんじゃねぇ」
「っ…」

腹、立ててるんですか!?
…お、怒ってるの??
あの優しい悟空が??
その事実に驚愕して、あたしは言葉を詰まらせた。

「ガキだな、カカロット」
「ガキでもいいさ…でもな、名前だけはダメだ!」
「へぇ?マジでご執心なんだな」

二ヤリと笑ったターレスさん。
そして、あたしの唇を指でゆっくりとなぞっていく。
その瞬間、悟空の雰囲気が変わった。

「オラ…もう我慢出来ねぇ!!」

前言撤回。
雰囲気が変わった…なんてものじゃない。
超サイヤ人になっちゃった…

「なっ…それは反則だろうが!」
「そんなんどうでもいい!名前から離れねぇと、おめぇをブッ飛ばす!!」

戦慄の空気の中…あたしはいつもと違う悟空に、何故か言葉が出なかった。




ちなみに…
悟空とターレスさんの争いはぶつかり合う前に終わった。
ちょうど、ひと風呂浴び終えたバーダックさんが戻ってきて…
2人とも怒号と共に、ものすごいゲンコツをくらって瞳に涙を浮かべていた。
…っていうか…
超サイヤ人でも瞳に涙を溜めちゃうようなゲンコツって…

親父のゲンコツ最強説、ここに浮上!



『ネタ希望アンケートより頂きました。ありがとうございました!』

“ターレスに迫られる”
いただいたコメントは以下です。

○ふみさま:
ターレスネタも見てみたい・・・。

○今日子さま:
ターレス大好きなので、是非ターレスとの絡みを書いて頂きたいです。

投票だけの方々もどうもありがとうございました☆