36.意外とスパルタなんですね…
よく晴れた空。
深い青を見上げて大きく息を吸って…思い切り伸びをした。
「気持ち良いなぁ」
そして、隣からはいつしか当たり前のように貴方の声が聞こえるようになった。
「ホントだよねぇ」
本当に、本当に心地よい天気。
何だか嬉しくなって、貴方とにっこり笑い合った。
『見上げれば同じ空。<36>』
「さっ、みんな揃ったわね!」
朝からちょっぴりテンションも高めにそう言うと、ブルマさんは小さなカプセルを放り投げた。
中から出てきたのは、それはそれは立派な飛行機。
「クリリンたちとは現地集合ってことで話をつけてるの。じゃっ、みんな乗ってちょうだい」
そういえば、今初めて聞いた…
そっかぁ、今回はクリリンさんも来るんだ。
昨日ブルマさんがあたしを紹介する良い機会だ…とか言っていたっけ。
「クリリンさんに会うの、久し振りだなぁ」
「そっか?」
「そうだよ。ほら、あたしが初めて神殿に行った時に会ったのが最後だもん」
「あ〜、そういやそうだっけな。もう、そんなになるんだなぁ」
悟空はあたしの横でふと空を仰ぎながら呟いた。
あたしがこの世界に来て…バタバタしている間にあっという間に時間は過ぎていっていたんだね。
色々考えていたら、また暗い気持ちになってしまいそうで…
あたしは悟空を見上げながら、笑顔で声をかける。
「他には誰が来るのかな」
「そだなぁ…じっちゃんとかも、来るんじゃねぇか」
「そっかぁ、楽しみだな〜、みんなに会うの」
ドラゴンボールファンとして!
この世界のキャラに直接出会えて、話ができるなんて相当な至福!!
いえね…
突然この世界に飛んできてしまったにも関わらず、ある意味余裕があるとは思うけど(笑)
それでもこうなってしまった以上、帰り方がわかるまでクヨクヨしてても仕方が無い!!
「ほら、アンタたちも早く〜」
気がつけば、もうみんな飛行機に乗り込むところ。
悟空とあたしだけ取り残されていた。
「あっ、は〜い!!」
大きく返事をして、隣の悟空に「早く行こうよ」と声をかけようとした。
けど…
「ブルマ、オラたちはいいんだ」
…へ?
「おめぇたちの飛行機の後ろ、飛んで付いてく」
…えぇぇぇぇ!!?
思わず絶句するあたしに対して、悟空は爽やかな笑顔。
ええ、それはもう眩しすぎるくらい。
「はぁ?何言ってんのよ、孫くん」
「名前の舞空術の練習だ。なっ!」
そんな…
悟空さん…笑顔が眩しすぎますっ!
見えないはずの眩しすぎる後光に、思わずよろめくあたし。
そんな眩しい笑顔で言われたら、あたし…
「う、うん」
もう、頷くしかないじゃないですかっ!!!
その言葉に驚きを隠せない様子のブルマさん。
トランクスくんと悟天くんに至っては、すでに飛行機に乗り込んでいたにも関わらず、悟空の言葉を聞きつけて降りてきている。
「名前、大丈夫なの?」
「まぁ、いざという時は悟空が助けてくれるんで、大丈夫といえば…大丈夫、なんです、が」
言葉尻がどんどん小さくなるあたし。
完全なる尻込みです…(凹)
満面の笑みを浮かべ続けている悟空を横からちらりと見上げた。
「…意外とスパルタなんだね、悟空って」
「そっか?」
うぅ、やっぱり笑顔が眩しい…
「いいか〜、じゃ、そっとだぞ」
「う、ん」
早速ですか!!
…なんて思いつつも、教えてもらった要領で少しずつ足元に気を集中していくあたし。
今回はあっという間に体が軽くなって、数センチふわりと浮いた。
あ…今回は、ちょっと良い感じかも。
「そうだ、その調子その調子」
…なんて、思ったのも束の間。
「っ…きゃあああぁぁぁぁああ…」
グンッ、と全身に負荷がかかったかと思うと、またしてもあたしの体は一瞬にしてはるか上空へ。
「すっ、すっげぇ姉ちゃん!!」
「名前お姉ちゃん、いつの間に飛べるようになったの〜〜〜〜?」
子供たちの感嘆の声も、今のあたしの耳には届きません。
しかも…これは飛んでるんじゃないんだってば(涙)
「あちゃ〜、やっぱ一気にリキが入りすぎちまうんだなぁ…」
「な…なんて不器用な女なんだ…」
「でもよ、オラの言ったことはホントだったろ?べジータ」
はるか上空にいるあたしを悟空が見上げている。
「っていうか、父さん!助けないと!!」
「ああ、わかってる」
一番慌ててくれている…きっとこの中では一番常識人の悟飯くん。
そして、またしても悟空に抱き止められ、事なきを得るあたし。
悟空の見慣れた山吹色の胴着にしがみつきつつ、思わず唇を噛み締めていた。
はぁ、何でこうなっちゃうんだろ。
…悟空の期待に、応えたいのに…