37.皆様、はじめまして!
さて、やってきました。
自然に囲まれた、どう見ても一等地に建っている旅館。
正直びっくりした。
だって、この世界にこんな雰囲気バッチリな温泉施設があるとは思ってもみなかったから。
純和風のお部屋も素敵だし。
旅館のすぐ横を流れているせせらぎは気持ちいいし。
「わぁ〜、すご〜い!」
「ふふ、よかったわ、気に入ってもらえたみたいで」
よいしょ、と荷物を置いて窓へと駆け寄るあたしをブルマさんは満足そうに眺めている。
どうやら…ブルマさんのご両親が行きつけにしている旅館らしい。
ちなみに、結局来るときはあたしも悟空もみんなと一緒に飛行機に乗った。
悟空にとってはブルマさんのお説教付きになってしまったけど。
「まぁ、女同士ゆっくりしましょ」
「はい」
「どうしようか迷ったんだけどね、せっかくみんなが集まるのに個室っていうのもどうかと思って」
「そうですよね。あたしもこのほうがよかったです…ってことは男性もみんな一緒に一部屋なんですか?」
「まぁね」
ウィンクしながら答えるブルマさんだけど、あたしは一瞬で思った。
べジータさん…めちゃめちゃ嫌がりそうだけど(笑)
きっとそこはブルマさんの権力のなせる業なのね…
「ふふっ」
そんなことを思っていたら、ブルマさんが笑った。
そして、思わず首を傾げるあたしの耳元で一言。
「孫くんと同じ部屋がよかった?」
「なっ…」
ボッ、と一気に赤くなるあたしの顔。
「あっ、あたしと悟空は別に、そういうのじゃっ」
「はいはい」
「ブルマさぁん〜」
楽しそうにしているブルマさんに軽くあしらわれつつ、あたしは真っ赤な顔を持て余しながら荷物を解いた。
『見上げれば同じ空。<37>』
そして今。
あたしとブルマさんの2人はロビーにて待機中。
あの…腕組みしながら立っているブルマさんのつま先が規則正しくパタパタと床を叩いていますが。
これって、やっぱり…
「…遅い…」
怒ってます、よねぇ…そうですよねぇ…
その横で直立不動のあたしだけど、チラリとブルマさんのお顔を覗き見てみる。
…うん、やっぱり怒ってる。
「もう、置いてっちゃうわよ?」
「荷物を解くのに時間がかかってる、んでしょうか??」
「そんなことはどうでもいいの。こ〜んなイイ女を2人も待たせるなんて許せないじゃない」
どうしたら良いのかわからず、苦笑いしてしまうあたし。
その時だった。
「悪ぃな、遅くなった」
片手をあげながら登場した悟空を先頭に、男性陣全員が来てくれた。
思わずホッとする。
「待ったか?」
「待ったわよ」
「すみません、武天老師さまが早速風呂に行くって言って聞かなかったんですよ」
悟空についでやってきたクリリンさんがそう言いながら、何処か疲れた表情を見せている。
「クリリンさん、お久し振りです」
「えっ?」
そんなクリリンさんの目の前でペコリと頭を下げて挨拶したあたしだったけど。
当のクリリンさんは何故か驚いた表情であたしを見ている。
え…何??
瞬きを繰り返しながら首を傾げるあたし。
「ははっ、何固まってんだ〜、クリリン。名前だぞ、何回か会ったことあっだろ?」
悟空は横に立って、あたしの肩にポンッと手を置いた。
クリリンさんの表情がみるみる変わっていく。
そう、まるで点と点が線で結ばったような…そんな表情。
「そっ、それはわかってるけどさ…いやぁ、はははっ、雰囲気が違ったからびっくりしちゃって」
「え、そうですか??」
「はは、いやいや、ホントに」
クリリンさんは頭の後ろに片手をやって「まいったまいった」なんて言いながら天井を見上げている。
心なしか、少しだけ頬が赤い。
「…何鼻の下伸ばしてんだい?」
「じゅっ、18号!?そういう訳じゃないって」
クリリンさんの後ろから現れた18号さん。
しっかりと娘さんのマーロンちゃんを抱っこしている。
あたしはブルマさんに2人の簡単な紹介を受けて挨拶をしたけど、18号さんはクリリンさんから少しだけあたしの話を聞いていたようだった。
「あ、18号たちも荷物を部屋に置かないとダメね」
「あたしらは後でいいよ。大した荷物じゃない」
「そう?わかったわ」
2人のそんな会話を聞きながら、あたしは考えていた。
クリリンさんに言われたけど、あたしの雰囲気ってそんなに前と違うのかなぁ…
まぁ、この世界に来たばかりの時は仕事用のスーツだったし、その後神様のところに行った時も軽装で、髪も結い上げていた。
それが今はブルマさんにもらった水色のノースリーブのワンピースにレースのカーディガンを羽織っていて、髪も下ろしている。
だから、雰囲気が違うって思われたのかな、たぶん。
それにしても、気になることはただ一つ。
目を逸らしてしまったクリリンさん…
あたしのこの格好があまりにも似合わなくて、見るに耐えなくてだったらどうしよう(爆)
元の世界でもあんまりプライベートでスカートってほとんど履いたことなかったもんなぁ…はぁ…
「おっ、君が悟空の言ってた子か」
ちょっぴりナーバスになりかけていたその時。
ある意味、聞き慣れた声に顔をあげる。
…ヤムチャさんだ!
「あ、名前です」
「ヤムチャだ。何だよ、悟空ばっかり良い思いしやがって」
「な、何だよヤムチャ〜」
挨拶が済んだ途端、何故か悟空のことを肘でつつき始めるヤムチャさん。
「僕プーアルです、はじめまして」
「ウ、ウーロンです」
「あ、はじめまして〜、名前です」
ふと視線を落とすとそこにいたのはおなじみのコンビ。
想像していた以上に小さいっ!可愛いっ!!
思わず抱きしめたくなるところをグッとこらえるあたし。
その時だった。
「ええの〜!!!」
「っ!!」
いきなり真横に現れた人物に思わずビクッとする。
「武天老師さま、機嫌直ったんですか?」
「クリリン!こんな可愛い子がおるなら、そうと早く言わんか!」
「だから、悟空が名前も連れてくるみたいだって言ったじゃないですか」
何処か呆れたようにクリリンさんが呟いている。
でも武天老師さまの耳にはそんなの届いていないようで…
「そ〜かそ〜か、名前ちゃん、と言うのか」
「あ、は、はい」
何故かじりじりと近付いてくる武天老師さまに、失礼だとは思いつつも反射的に一歩後ろに下がった。
「可愛いの〜。こりゃまた確かに…」
「あ、あの…」
頬を赤く染めた武天老師さまの視線が、あたしの胸元に注がれているのは気のせいですか?
うん、気のせいだって思いたい。
どうしよう…漫画の中のブルマさんだったら、きっと一発バチーンとかましてるんだろうけど。
あたしにとっては初対面の人!そんなことできません!!
困り果てて、もう一歩後ろに下がった…その瞬間。
あたしの視界が山吹色でいっぱいになる。
「じっちゃん、早く飯に行こうぜ?オラもう腹ペコだぁ…」
「む…そ、そうじゃな」
「ほら、名前も行くぞ」
「あ、うん」
振り返って笑顔を向ける悟空に思わず頷く。
そして悟空は俯き加減のあたしの頭をそっと撫でて…先に歩いていってしまった。
「あ、あれ?」
その後姿を見て思う。
もしかして…助けてくれた、のかな…
「残念。あと一歩遅かったら私が引っぱたいてやったのに」
そんな声がしたからふと後ろを見やるとすでにビンタの体制に入っていたブルマさん。
「スケベじじいに情け容赦は無用だよ」
「は、はい」
18号さんに鋭い視線を向けられながらそんなことを言われたら…
もう頷くしかない。
その後。
みんなでご飯を食べに行ったけど、そこはさすがのサイヤ人。
またしてもすごい食べっぷりを披露していた。
しかも今は4人ものサイヤ人が揃ってる。
ちょっぴり、この旅館の料理長さん、経営者さんのことが心配になってしまった…
「あれ?そういえば、悟飯くんは?」
「ああ、あいつなら学校終わってから来るってよ!友達も連れてくるって言ってたぞ」
「へぇ、そうだったんだ」
どうやらもう一人、初対面の人が増えるらしいです。
ん、楽しみ!!