39.温泉といえば…


温泉と言えば、やっぱこれでしょう!!




『見上げれば同じ空。<39>』




「あぁ〜、気持ちよかったぁ」

食事の後にゆっくり温泉につかって、あがりたてのあたしはツルツル卵肌にご満悦。
間近で見たブルマさんのスタイルの良さには、正直ちょっと女としての自信を削がれもしたけれど(笑)
女湯の暖簾をくぐったところで思わず大きく伸びをするあたしの横を、ビーデルさんが無言のままスタスタと歩いていく。

…あ、そういえば…
お風呂でも結局一言も話さなかったなぁ…

ビーデルさん、ブルマさんや18号さんとは会話しているみたいだったけど。
せっかく途中から合流できたのに…

「あ、来た来た」

そんな声に顔を上げると、悟空がこっちを見て手を振っていた。
その姿を見ただけで、なんだか安心する。
あたしはホワッとした気持ちになって…悟空に駆け寄った。

「女の風呂って長ぇんだなぁ」
「え、そう?」
「オラたちに比べりゃあな。でも気持ちよかったな〜」
「うん、やっぱり広いお風呂はいいね」

ニコニコして会話をするあたしだけど、ふと悟空の服装に目がいく。

「へ〜、悟空も浴衣なんて着るんだね」
「なんかスースーすっけどな。ヤムチャが温泉に来たらこれを着ないとダメだって言うからよ」
「あはは、でも似合うよ」
「そっか?」

何処か腑に落ちない表情をしながら、自分の浴衣姿を見ている悟空。
普段の胴着を見慣れているせいか、違和感はあるけど…うん、似合ってる。
ちょっぴり肌蹴た胸元に鼻血寸ぜ…
いえっ、何でもありません。

「名前とオラ、おんなじの着てるのに随分雰囲気が違って見えるもんなんだなぁ」
「そだね。あたしもなかなか似合うでしょ?」

なんて、冗談で言ったつもりだったのに、悟空はにっこり笑って。

「ああ!すっげぇ可愛いぞ」
「…っ!?」

あたし…思いっきり自爆。
真っ赤になって俯きかけたその時、ふと悟空の後ろで項垂れている姿を見つける。

「なんじゃ〜、混浴はなかったのか…」
「どっかのスケベじいさんがいるってわかってるのに、混浴のある温泉なんて選ぶわけないじゃない」

きっぱりと言い放つブルマさんに笑いがこみ上げる。
どうやらあたしだけではなかったようで、みんな笑っていて…
何だかいいな、こういうの。
そんなことを思って、終始笑顔のあたし。
そのあたしを悟空がひどく優しい瞳で見下ろしていたことに、このときのあたしは気がつくはずもなくて…

「ブルマさん、これからどうするんですか?」
「そうね〜…このまま各自部屋に戻っちゃうってのはつまらないわね」

クリリンさんのそんな質問に、顎に手を当てて考えるような素振りを見せるブルマさん。
その時、ふと閃いた。

「みんなで、卓球やりましょ!」
「…卓球??」

ブルマさんの大きな瞳がますます大きくなってあたしを見詰めた。
その反応に一瞬不安になる。

「あれ?もしかしてないですか、卓球?」
「いいえ、あることにはあるわよ?でも何で今のタイミングで卓球なのかなぁって思って」
「あ、あたしの世界では温泉といえば、卓球なんですよ」
「あら、そうなの」

ですよね、皆さん!
温泉といえば、卓球ですよね!!

「面白そうじゃないか、腕がなるぜ〜」
「俺、やったことないですよ」

ヤムチャさんにクリリンさん、2人とも興味は持ってくれているらしかった。

「そうね、時間もあるしやりましょうか!」
「はいっ!!」

そんなこんなで…
あたしが言い出して、始まった卓球大会in温泉…だけど。
今、あたしは思いっきり後悔しています。


何故って…




ヒュンッ




ドガッ




…ミシッ…





「…え、えっと…」

頬のすぐ横に風を感じた直後に真後ろからはそんなイヤな音。
恐る恐る振り返るあたしだけど…
あの…壁に卓球の玉が、めり込んでいますけど…

「姉ちゃん、弱いな〜」
「あ、はは、ごめんね」

思わず引きつる顔。
向かいのコートで余裕の表情のトランクスくん。
これは強い弱いの前に次元が違いすぎるわ!!

「トランクスくん〜、僕もやりたいよ〜」
「よし、じゃあダブルスにしようぜ!」
「わ〜い」
「なっ…」

天使のように可愛いこの子たちから悪魔のような言葉が聞こえてくる…
絶句するあたしに向けられる、それはそれは素敵な笑顔。

「姉ちゃんも誰かとペア組んでいいよ〜」
「誰かって言われても…」

焦ったように周りを見渡してみるけど。

「あ、私パスね」

目が合っただけであっけなく辞退してくれるブルマさん。

「あたしは見学って言っただろ?この子もいるんだし」

マーロンちゃんを抱っこしながら仁王立ちでそう言い切ってくれる18号さん。

「……………」

当然のごとく、ビーデルさんとは目すら合わない。
どうすれって言うのよ〜〜〜〜。

「どれどれ、じゃ仕方ないからわしがペアを…」
「アンタは名前に近付くんじゃないの」

どこからともなく出てきた亀仙人さまは、ブルマさんに一刀両断されているし。
困り果てたあたしだったけど。

「俺でもよければ、ペア組むかい?」
「あ…」

横からの声に見上げるとヤムチャさんだった。
お願いします、と頭を下げるあたし。
…ヤムチャさん、優しいなぁ…
その頬はうっすらと赤くなっているような気もしたけど、十分すぎるほどに頼もしく見える。

「まぁ、俺もあのチビたち2人が相手じゃあ勝ちは約束できないけどね」
「いえ、あたしも頑張りますっ!!」

グッと拳を握り締める。
その向こうで、もう1台の卓球台で一つの試合が熾烈を極めている様子が目に入る。


悟空VSべジータさん。


白熱していたのは最初からだったけど、今見ればいつの間にか2人とも、超サイヤ人になっている!
もしも〜し、その辺にしないと卓球台が壊れますよ〜〜〜〜。

「じゃあ、名前お姉ちゃん、行っくよ〜」
「おっ、お手柔らかにね悟天くん!!」

どうやら、サイヤ人の中に遊びという名の勝負はないらしい。
身をもって、知りました…