49.思考回路はショート寸前
皆でわぁわぁ騒いで…たくさん食べて…
すっかり夜も更けてきた。
そろそろ帰らないと…そう思っていたその時。
「名前お姉ちゃん、ブルマさんが今日は泊まって行きなさいって」
「え?」
悟天くんが突然そう言ってきた。
いや、それはさすがに迷惑になるでしょう…
そう思いつつ、悟天くんに手を引かれブルマさんの元へ向かう。
「あぁ、来た来た。悟天くんから聞いた?」
「聞きましたけど…そこまで迷惑はかけられな」
「何言ってんの〜、開いてる部屋ならいっぱいあんのよ?もう遅いし、アンタたちパオズ山まで帰らないといけないんだから、大変じゃない」
「それは…そうですけど」
う〜ん…と考えるあたし。
隣では悟天くんが「ねぇ、泊まっていこうよ〜」とずっと袖を引っ張ってきているし…
いつの間にか加わったトランクスくんも「そうだよ、いいでしょ名前姉ちゃん?」とあたしの表情を見上げてきている。
「ん〜…どうする、悟空?」
「ん?まぁ、ブルマが良いっつってんだから、良いんじゃねぇか?悟飯の学校も明日こっから通った方が早いだろ?」
「えぇ、それはまぁ」
「じゃあ、決まりだ!」
悟空の一言にトランクスくんと悟天くんは2人揃ってわ〜い、と喜んでいる。
「仕方ないなぁ…じゃあ、お世話になります、ブルマさん」
「えぇ、ゆっくり休んでいってvv」
その時、ブルマさんが何故かにんまりと笑っているような気がしたけど…
特に気にもしなかったあたし。
後悔先に立たず…とは、良く言ったものだ。
『見上げれば同じ空。<49>』
「……………」
ゲストルーム…と呼ばれる部屋にあたしは泊まることになった。
シャワーを借りた後で部屋に入って、あたしは絶句した。
…正直どこから突っ込みを入れて良いのかわからない。
広い、綺麗な部屋。
大きなダブルベッドが一つ。
何故か…枕は2つ。
そして極め付け…そのベッドの上には一枚の置手紙。
『悟飯くんも悟天くんもトランクスが一緒に寝るって連れて行ってるから、邪魔者はいないわよv』
……………。
「ブッ、ブルマさぁぁぁぁんっ!!!」
あの時の“にんまり”はこういうことだったのか!!
茫然と立ち尽くした後、盛大に置手紙を小さく丸めて…
ブルマさんに詰め寄りに行こうと思った。
だけど…
「ひゃ〜、あっちぃ〜」
扉を開けようとした瞬間、悟空が濡れた髪をタオルで拭きながら入ってきた。
思わず持っていた丸めた置手紙を後ろに隠すあたし。
「あり?オラたちだけか?」
「う、うん…悟飯くんと悟天くんはトランクスくんが一緒に寝たいから、って」
「ははっ、トランクスのヤツ、いつも兄貴がいるのが羨ましいって言ってるみてぇだかんな」
「そうなんだ…」
悟空はこの状況に特に気にする様子もなく、ベッドに腰掛けている。
普段とは違って、上半身はアンダーシャツ一枚の姿にドキドキしてしまう。
これ…完全にブルマさんの策略にはまっているような気がする…
「……………(よし!気にするな、あたし!!気にしたら負けだわ!!)」
そう自分に言い聞かせて、グッと胸の前で両手を握った。
ちなみに…丸まった置手紙は悟空に見付からないようにそっとゴミ箱へin。
あれを見られたら、それこそたまったものじゃない。
「どした?寝ねぇんか?」
「えっ…あぁ、寝る寝る!」
ふと見ると、悟空はすでにベッドに入っていて…
一人決意を固めているあたしを不思議そうに見ていた。
えぇい、もう…おやすみなさい!!!
…消灯…(笑)
さて…どれくらいたったでしょう。
はい、全く眠れません。
気まずさのあまり、悟空に背を向けるようにして布団に入ったあたし…
そのまま動けないままになっているのですが、背中にある温もりが気になって仕方がない。
一緒に寝るのは初めてじゃないけど…こうして想いが通じ合ってからというもの。
あたしが変に意識してしまって、別々に寝る毎日が続いていたものね…
「……………」
息をひそめても、背中の温もりが気になってしまう…どうしても。
普段の悟空ならすぐに寝息が聞こえてくるのに…今日はすごく静か。
もしかして…悟空も起きてる、のかな?
「…なぁ」
そう思った瞬間、話しかけられたから思わず体が飛び上がりそうになった。
「名前、もう寝てっか?」
「…う、ううん」
一瞬、とっさに寝たフリをしたほうがいいかっ!!?とも思ったけど、悟空を相手にそんなこと出来なくて…
あたしは小さく返事をした。
背中の温もりが動く気配が伝わってくる。
「おめぇ…何か怒ってんのか?」
「え…」
思わず「どうして?」と聞き返すと同時に、悟空のほうへ体を向けると悟空は肘をつくようにして上半身を少し起こした状態であたしのことをじっと見ていた。
「いや…オラ、何かしたかなって思ってよ」
「別に何もしてないよ?あたし、怒ってないけど…」
「そっか…じゃあ、何でそんな離れて寝てんだ?」
…ドキ。
「い、いやぁ…何でって訳でも、ないけど…」
あたしの返答はまさにしどろもどろ。
誰かっ…悟空に乙女心を教えてあげて下さい!(切実)
「なぁんだ、怒ってねぇんならもっとくっついて寝ようぜ?」
「えっ、えぇっ…!」
「な、何驚ぇてんだよ?別に一緒に寝んの初めてじゃねぇしよ」
「それは、うん、まぁ…」
悟空の言ってることはもっともなんだけど…
あ〜とか、う〜とか唸りながら、色んなところへ視線を泳がせていたあたし。
悟空は嬉しそうにあたしの体をグイッと引き寄せて…
広くて大きな胸にあたしはすっぽりと収まってしまう。
「ははっ、おめぇホント小せぇな〜」
「そりゃ悟空に比べたら小さいよ…女だもん」
「そうだよなぁ」
布団の中で抱き締められて…あたしの顔はちょうど悟空の胸のあたり。
悟空はあたしの頭に顎を乗せた状態。
そのまま、しばらく色んな話をした。
「何だか…久し振りだね」
「何がだ?」
「ん…こうやって2人きりで話をするの」
まぁ、あたしが変に意識してしまって悟空の側に行けなくなっていた…のもあってなんだけど。
その時、ふと時計が目に入って…結構な夜中になっていることに少し驚いて。
何とか体を捩ると顔を上げて、悟空と目を合わせた。
「…眠たくないの?」
「ん?」
「悟空がこんな遅くまで起きてるのなんて…初めてじゃない?」
「あ〜…」
その時、悟空もぼんやりと時計を見て…またあたしと目を合わせてくる。
「なんか、もったいねぇなぁって思ってよ…寝ちまうの」
「悟空…」
そう言いながら、悟空に髪を撫でられて、思わず頬を赤くしてしまうあたし。
「…なぁ…キス、していっか?」
突然真剣な目でそう聞かれて、あたしの頬はますます熱を帯びていく。
「悟、悟空…そういうのは、聞かないでするものだよ…?」
「そうなんか?でも、黙ってやったら怒らねぇか?」
「怒らないよ〜…つ、付き合ってるんでしょ?あたしたち」
…顔から火が出る、とはまさにこのことだ…
は、恥ずかしすぎるっ!!!
あまりの恥ずかしさに耐えられなくて、思わず一旦目を逸らそうとしたあたし。
でもその時、悟空が体制を変えて…今度はあたしの上に覆いかぶさるような姿勢でじっと見詰めてきたから…
目を逸らすことすら、出来なかった。
「名前」
「悟っ…ん…」
クイッと顎を持ち上げられたと思ったら、そのまま唇を塞がれた。
初めての悟空とのキスに、頭がパンクしそうになる。
「…んっ…」
何度も、何度も…優しく啄ばむようにキスを繰り返す悟空。
「…やわらけぇな、おめぇの唇…」
「っ…」
そう一言だけ口にして、また降ってくるキス。
たった一言話している間にも、何度か唇同士が触れ合って…気が狂いそうになる。
気が付くと、片手も悟空によってしっかりと握られていた。
あたし、ホントに…余裕がない。
「名前…」
「…ん?」
「好きだぞ」
「あた、し…も…」
そのまま頬、瞼、口端…色んなところにキスが降ってくる。
そして…悟空の唇が顎のラインを降りて、首筋に辿り着いて…チリ、とした痛みが走った。
「っ悟、空っ…」
それと同時に、悟空の空いている手があたしの胸にそっと触れたから…
驚いて、その手を握った。
悟空はじっとあたしを見て…また唇にキスをしてくる。
「ん…」
「…キスはよくても…こっちは、まだダメなんか…」
お願いだから。
キスしながら、しゃべらないで…
そして悟空の言葉に小さく「ごめんね」とだけ答えるあたし。
そうなのです!心の準備が出来ていないんですよ!!
…でないと、本当に鼻血で失血死…なんて笑えないので…ごめん、悟空。
唇が離れて、うるうるしながら悟空のことを見上げると、また額にキスされた。
「んな顔すんなって…オラ、別に怒ってねぇぞ」
「ん、わかってる…」
「まぁ、焦っても仕方ねぇしな!」
そう言ってにこっと笑う悟空は、本当に優しいと思う。
こういうところが、本当に本当に大好きなんだ…あたし。
「ありがとう、大好き…」
その夜は、もう一度キスをして、2人で抱き合いながら眠った。
ものすごく安心出来る夜。
翌朝…ブルマさんがルンルンしながら起こしに来たのは言うまでもない。
そして、未遂だったという事実を知って、心の底から残念がっていたのも…言うまでもない…