51.迷子の行き着いた場所。


「ん〜…」
「わかる?」
「だって…指が足りないよ、名前お姉ちゃん〜」
「あ、はは…」




『見上げれば同じ空。<51>』




天気は快晴。
とっても気持ちの良い昼下がり。
しかも、今あたしたちは天界に遊びに来ているから…尚更、風が心地よい。

「悟天くん、これはね…」

その気持ちの良い天界の開かれた一室で悟天くんはお勉強中。
少しは勉強しないと…って言って、悟飯くんが小学校低学年向けのドリルを買ってきたのが昨日の話。

「ん〜…難しいよぉ…」

でも、予想していた通りというかなんというか…まったく進まない問題たち。
見兼ねてあたしが教え始めたわけだけど…
たぶん悟天くん…興味のあることはどんどん吸収するのに、そうでもないことにはトコトン苦戦するタイプだね。

「う〜ん…少しでも気分を変えるために天界に来てみたけど…逆効果だったかな」
「ん〜…」

一生懸命頑張って考えている悟天くんだけど、内心は遊びたい気持ちでいっぱいになっているに違いない。

「悟天くんっ、ここまで終わったら遊ぼうね!」
「う…うん…」

そう言ってページの一番下を指差すあたし。
…先は長そうだ…
その時。

「お〜い、悟天!終わったかぁ〜」
「まだだよ、トランクスくん…」

ピョンッと窓から部屋に飛び込んできたのはトランクスくん。
顔をむくれさせている悟天くんのすぐ横に来て、その手元を覗き込んでいる。
そして、「何だよ〜、全然進んでないじゃん」と一言。
それを言っちゃダメだよ、トランクスくん…

「だって、難しいんだもん…トランクスくんは頭良いからいいけどさぁ」
「ま、まぁな!オレは将来ママの会社の社長さんになるからな!」
「ふふっ…トランクスくんの夢は社長さんか〜」

うん、その夢…作中でもしっかりと叶えていたっけなぁ、そういえば。
サラサラのトランクスくんの髪をそっと撫でるあたし。
トランクスくんは「わっ、何すんだよっ」なんて言っていたけど、少し照れているみたいだった。

「悟天くんは?大きくなったら何になりたいの?」
「僕?僕はね〜…」

ん〜…と考える悟天くんが出した答えは…

「えっとね、もっともっとたくさんの怪獣さんたちとお友達になって、怪獣さんの国を作るんだ〜!」

…と、ニコニコ答えてくれた。

「あ、はは…悟天くんらしいね」
「ったく、これだから悟天はガキなんだよなぁ」

そう言うトランクスくんだけど、こういう夢って本当に今しか持てないものね。
あたしは子供らしくって、すっごく良いと思うけどなぁ。

「あ、そうだ、名前姉ちゃん」
「ん?」

呼ばれて視線を向けると、トランクスくんはそれに反して何故かフッと視線を逸らしてしまった。
首を傾げるあたしに、トランクスくんは照れくさそうに頬を掻きながら一言。

「ねっ、姉ちゃんだったら…社長夫人にしてあげてもいいよっ!」

…って。
これには当のあたしも思わずキョトン、としたまま固まってしまう。
ちょっと待って…可愛い…可愛すぎるっ!!!
頬を真っ赤にしてそっぽを向いたままのトランクスくんを思わず抱き締めたくなった。

「ありがとう、楽しみにしてるね!…とりあえず、ちょっと抱き締めていい?」
「なっ…ダメに決まってるだろ!!」
「えぇ〜…」
「あっ!ずるいよ、トランクスくんっ!!」
「うっ、うるさいなっ!悟天はさっさとそれ終わらせろよな!いつまでたっても遊べないじゃないか!」

完全に照れているらしいトランクスくん。
その横であたしは…こういう“ツンデレ”なところはしっかりとベジータさんの血を引いているんだなぁ…
…なんて、ベジータさんに聞かれたら間違いなく命の危機だろうことを思っていた(爆)

「そういえばトランクスくん…ポポさんとの組手は終わったの?」
「うん、ポポさんがちょっと休憩だってさ」
「はは…じゃあ、ピッコロさんに相手してもらえば良いのに」
「…う…」

暇そうにしているトランクスくんにそう提案したら、途端に表情が強張った。
何となくわかる…ピッコロさん、遊び感覚の子供たちの組手でも、全力そうだもんね…

「…いや、オレ、もう少し待ってるよ」
「ごめんね、トランクスくん…」

静かに頷くトランクスくん。
悟天くんも一緒に遊びたい一心で頑張っているし。
ホントに、可愛いな…この2人。






さて…

「…あれ?」

子供2人にたっぷり癒されていたあたしですが…今はまた1人、苦笑いで頬を掻いている。
お手洗いに立ったまでは仕方がない…生理現象だもの!
でもその帰り道にまたしても迷うって、どういうことでしょう…

「確か、こっちから来たと思うんだけどなぁ」

こういう時は、本当にみんなの言う“気”っていうのがわかればいいなぁ…なんて、思ってしまう。
そんなことを考えながら、ここかな?、なんて願いをこめつつ開いた扉はまたしてもハズレ。
ただ…

「…わぁ…」

思わず、感嘆の声を上げてしまった。

「すごいっ…」

目に入ってくる本…本…本っ!!
たくさんの本棚にぎっしりと本が詰まっていて、正直どのくらいあるのか検討もつかない。

「そういえば、前にデンデくんに図書庫に本がたくさんあるから、興味があるならどうぞ…って言われていたっけ」

ふと以前のやりとりを思い出したけど、まさかここまでの規模だったとは。
さすが、天界!!
ポカーンと口を開けながら上を見上げると、あたしの元の世界にもあったタイトルの本が目に入った。

「ん〜…!」

当然気になって手を伸ばす。
結果…届かない!?
でも気になるので、もう一度頑張ってみる。

「んんん〜…!!!」

あと一歩届かない指先に諦めかけたその時。
突然伸びてきた腕が目に入って…

「これか?」

続いて聞こえてくるハスキーボイスにキョトンとしながら振り替えると、いつの間にかあたしのすぐ後ろに人が立っていた。
茫然としているあたしに向かって、その人は手にした本を見せながら

「ん?違ったか?」

と、もう一度聞いてくる。
いいえ、違わないですよ?
それで合ってます。
でも今はそれどころじゃなくて…

「あ…あ…」
「…?何だ?」

ふるふる、とその人を指し示そうとする指先はまるで焦点が合わないまま。
その後、神殿内にあたしの叫び声が響き渡った…

だって…びっくりしたんだもん!!!