52.まさかの3人組!!


「何だ、一体どうしたというのだっ!?」
「名前お姉ちゃん、大丈夫!?」

あたしの予期せぬ叫び声は神殿全体に響き渡り…
次々に外からみんなが集まってきた。
そして、あたしは…二度目の驚きに遭遇してしまう。




『見上げれば同じ空。<52>』




ピッコロさんに、デンデくんに、悟天くん、トランクスくんが次々図書庫に入ってくる。
そこまでは普通の光景。
あたしが驚いたのは、この次から…だった。

「何だ?今の声」
「珍しいね…女の人がいるの?ここに」

続けて入ってきた2人の人物に…

「…へ…?」

思わず目が点になった。
見知った…でも、あたしの記憶ではココにはいるはずのない人たち。

「さっき話したろう…コイツが異世界から来た、という者だ」
「へぇ〜、女だとは思わなかったなぁ…」

ピッコロさんにそう捕捉されて、部屋に入ってきたその人はあたしのことを興味深そうに見ている。
そして、その視線はあたしのすぐ横に立っている人へと移されて…口元がにんまりと弧を描いた。

「お前、何かしたんじゃねぇのか?」
「…なに?」
「珍しいな〜、硬派なゴジータが手を出すなんてよ」
「馬鹿が。お前と一緒にするな、ベジット…俺は何もしていない」
「はぁ?じゃあ、さっきの悲鳴は」
「あっ…あれは、ちょっとびっくりしちゃって!!急に、後ろから声がするとは思ってなかったので!!」

すみません、と言葉を付け加えてあたしは視線を逸らした。
ただ、びっくりしたにしても…思わず叫んでしまったけど、今となっては恥ずかしい…

「やっぱそうだよなぁ、ゴジータはベジットとは違うもんな」
「ゴテンクス…お前がそういうこと言うから、俺が軽いみたいに思われんだろうが」
「だって、その通りだろ〜」
「黙れ」

いきなり横から技を掛けられ、もがいているゴテンクス…くん。
その時、またまた真上から声を掛けられたあたしが見上げると、ゴジータさんが申し訳なさそうに髪を掻いていた。

「すまなかったな…あんなに驚くとは思っていなかった」
「いっ、いえっ…あたしこそ、ホント…すみませんでした」

ペコリ、と頭を下げるあたしにゴジータさんは小さく笑って、持っていた本をそっと手渡してくれた。
…優しいなぁ、この人。

「なぁなぁ、いつから来てたんだ!」
「あぁ、ついさっきさ。お前らもココにいるって聞いて、ちょうど探しに来ようと思ってたんだ」
「そっかぁ〜、ねぇ!組手しようよっ!」

ふと顔を上げると、ゴテンクスくんが悟天くん、トランクスくんに囲まれていた。
2人よりも少し背が大きいゴテンクスくんはこうして見ると2人のお兄ちゃんみたいに見える。

「おい、悟天は勉強がまだ終わってないだろ?」
「え〜…だってぇ…」

茫然としているあたしをちら、と見る悟天くん。

「ねぇ、名前お姉ちゃん…いいでしょ?ちょっとだけ」
「あ、うん…いいんじゃないかな」

ほぼ棒読みでそう告げるあたしに悟天くんは本当に嬉しそうに喜びながら、部屋を飛びだしていった。
当のあたしは…
目の前の出来事に思考は停止寸前。
デンデくんに「さぁ、僕らも向こうに行きましょう?」と声をかけられるまで、動けないままだった。




だって…目の前にあの3人ですよっ!!
しかも、本人たちがちゃんと存在しているのに…一体何で???




「な…何だか、ゴジータさんとベジットさんの声って…悟空とベジータさんに似てますねっ!!!」

あたしの頭の中を回っている疑問を解決するべく…
そんな質問で勝負に出たあたし。
だって…ストーリーを知っているから、とは言えないものね!
みんなと一緒にテーブルについてまったりしていたゴジータさんとベジットさんは一瞬驚いた顔をした。

「…な、何だよ、急に」
「えっ…いえ、何となく?」

かなりしどろもどろだし、目も泳ぐ。
しかもベジットさんがテーブルに乗り出して、あたしのことをじ〜っと見てくるものだから、さらにどうしたらいいのかわからなくなる。

「……………」
「え〜っと…」

やっぱり…聞き方、まずかったかなぁ…
ひたすら視線が泳ぐあたしだけど、ピッコロさんの一言に救われた。

「ベジット、コイツになら話しても構わんだろう」
「何だよ、ずいぶん甘いんじゃねぇの?」
「そうじゃない。どのみち、悟空と暮らしているんだ…遅かれ早かれ、いつかわかるだろう」
「…?」

首を傾げるあたしの目の前で、ベジットさんは小さく口笛を吹いた。

「へぇ〜…悟空と暮らしてるってことは、ヤツのこれって訳?」
「……………」

ベジットさんがビシッと小指を立てて見せる。
…言いたいことはわかりますけど…
ベジットさん、その表現の仕方…古っ!!!(爆)

「え、えぇ…まぁ…」
「ふ〜ん、あの悟空がねぇ…」

あたしのことをじ〜っと見ながら、ベジットさんはさらに身を乗り出してくる。

「俺も、半分はヤツなんだぜ?どうだ?俺とも一緒に…がふっ!」
「っ…!!?」

一瞬の出来事。
何故か乗り出してきていたベジットさんがテーブルに沈んだと思ったら、その後頭部にはしっかりとゴジータさんの手が乗せられていた。
そして、もがくベジットさんを気にする様子もなく、ゴジータさんが口を開く。

「俺もベジットも元々は悟空とベジータが融合、合体したものなんだ」
「…は、はぁ…」
「本来ならば、悟空やベジータとこうして同じ空間に存在することは有り得ない」

…で…ですよねぇ?
うんうん、と頷きながら、あたしは真剣に聞いた。
その時、ゴジータさんの手から逃れたベジットさんがそのままゴジータさんに詰め寄っていたけど…軽くあしらわれているようだった。
ゴジータさんの説明を要約すると…たぶん、こういうこと。

「つまり…魔人ブウっていうのに殺された人たちを生き返らせるようドラゴンボールに願ったら…一緒に復活した、ってこと…ですか?」
「まぁ…そうなるな」
「俺らにとっても、思いもよらない事態…ってやつだったしな」
「…そんなことが…」

あたしが知っている原作とはあまりにかけ離れている事実。
いないはずの人たちの存在。
どうしてここまで変わってしまったのか…
もう気にしないって決めたのに、思わず膝の上の両手を握り締めた。
ふと窓の外を見ると、悟天くんたちがゴテンクスくんと組手をしている姿が見えた。
2対1でも、ゴテンクスくんがじわじわと押しているみたい…

「あれ…でもあたし、前にもココに来たけど、その時はいなかったですよね?」
「名前さん、3人は普段界王神界というところにいるんですよ」
「…え?」
「元はこうして存在していなかったはずの人格だからな…この世界にいては混乱の元になりかねないんだ」

デンデくんの言葉にゴジータさんが捕捉した。
その一言に、あたしは何だか…胸が締め付けられるような感覚に陥った。

「…どうした?」
「……………」

それに気が付いたのか、ピッコロさんに話し掛けられる。

「…何だかそれ、悲しいって…思って…」
「なに?」

ゴジータさんがあたしの目を見つめ…
ベジットさんも窓の外へと向けていた視線をあたしに戻し…

「あたし、よくわからないけど…」

…言っても、いいかな…
自問自答しながら、あたしはまるで言葉を選ぶみたいに…一言、一言話した。

「元々は存在していなかったはずの人格って言っても…今、こうしてあたしと話してるじゃないですか」

落ち着いた雰囲気のゴジータさんも。
話しやすそうな雰囲気を醸し出しているベジットさんも。
外で元気に組手をしているゴテンクスくんも。

「あたしにとっては1人の人にしか思えません。きっと、他のみんなも今はそう思っているんじゃないかなって思います」
「……………」
「でも、何だか…さっきの言い方だと、まるで…隠れて生活しているみたいで…そんなの…」

そんなの、すごく悲しい。
そこまで言って、あたしはハッとした。
ゴジータさんとベジットさんの少し驚いたような表情を見て、思わず視線を逸らす。
すみません…と小さく呟いて、俯くあたし。
そうだよね…よく知らないあたしがこんなことを言って…
ピッコロさんが何かを言い掛けたその時。

「…え?」

あたしの頭が大きな手で撫でられて…今度はあたしのほうがびっくりして顔を上げた。

「ありがとう」

瞬きを繰り返すあたしの視線の先には柔らかい表情のゴジータさん。
ベジットさんもテーブルに頬杖を付きながら、笑っている。

「君のように言ってくれる人がいて、嬉しいよ」
「ははっ…まぁ、神界からも一応ココにだったら下界に降りていいって許可は出てるしな」
「…そ、そうなんですか?」

キョトン、としているあたしに対して2人は穏やかに笑っている。

「ココに来れば自由にみんなとも会うことができる。だから、気にするな」
「あぁ!また会いに来るさ!…お前のこと、気に入ったしな」
「…へっ?」

こそっとそう耳打ちしてきたのはベジットさん。
そして驚くあたしの顔を見て、ニッと笑う。
…からかわれているのでしょうか…もしかして…

「お前…悟空が黙っていないぞ」
「何だよ、ピッコロ〜、聞こえてんのかよ」
「貴様らの聴覚とは出来が違うんだ」
「そうなんだよなぁ、悟空の女じゃなかったらなぁ〜…」

なぁなぁ、うまくいってんの!?なんて言いながら、また乗り出してくるベジットさんを交わしつつ、あたしは思った。
ベジットさん、後頭部をまたしてもゴジータさんに殴られているし…何だか、面白いなぁ、この人たち。
今日は帰ったら、悟空に彼らに会ったって話をしよう!
あたしが知っているドラゴンボールとは同じようで、全然違うこの世界。
でも、戸惑いだらけのこの世界が少しずつ居心地の良い場所になりつつあること…
あたしの居場所になりつつあること…
心の中に起こっている変化を、他の誰でもない悟空に聞いてほしいな…って、そう思った。