56.いつか来ると思っていた日。


心のどこかではわかっていたの。
…いつかきっと、こんな日が来るって…




『見上げれば同じ空。<56>』




「ねぇねぇ名前お姉ちゃん、何見てるの??」
「ブルマさんにね、この前借りたんだ」
「ふぅん…」

ソファに座ってファッション誌を読むあたし。
寄ってきた悟天くんも雑誌を横から覗き込んだけど、あんまり興味がないみたい。

「面白いの?」
「面白いよ〜、あたしが住んでいたところとはお洒落も結構違うみたいだし」

そう言いながらまたページをめくる。
さすが天下一武闘会があるくらい武道が人気の世界なだけあって、女の子のお洒落にも道着のようなデザインが組み込まれているものもあって、見ているだけで楽しい。
あたしだって女の子だもんね!
お洒落に興味がないと言ったら嘘になる。

「僕、服よりも美味しそうなものがたくさん載った本の方がいいなぁ」
「はは…」

本当に悟天くんらしい。
そんな悟天くんが年頃になったらすっかりプレイボーイになってしまうんだから、子供の成長ってわからないものよね…本当に。
その時、水の音が止まったことに気が付いて雑誌を置くと立ち上がるあたし。
そんなあたしのことを「どっか行くの?」とでも言わんばかりに見上げてくる悟天くん。
まったくもって可愛すぎるvv

「洗濯物、終わったみたいだから行ってくるね」
「あっ、じゃあ僕もお手伝いする〜!」
「うん、ありがとう」

洗濯機から洗い物を取り出して、庭まで運んで、綺麗に干して…
その一つ一つを悟天くんが手伝ってくれる。
本当に最近はよくお手伝いしてくれるようになったなぁ…
この前トランクスくんとどんな遊びをした…とか。
昨日はどんな夢を見た…とか。
今日は何が食べたい…とか。
本当に他愛ない話なんだけど、悟天くんは途切れることなく色んな話をしてくれて、あたしをそれを聞いているのがすごく楽しくて…




本当に、きっとあたしに子供がいたらこんな感じなんだろうなぁ…って。




最近自分でも気が付くくらいよくそう思うようになった。
あたしもそんなことを思う歳になったってことだよね…(笑)

「名前お姉ちゃん、僕お腹空いちゃったよ〜」

洗濯物を干し終わって部屋の中に入る。
ふと時計を見るともうすぐ正午になろうとしていた。

「もうちょっと待ってね。悟空もそろそろ帰ってくると思うから」
「そうだぞ悟天、父さんが修行から帰ってくるまで兄ちゃんが勉強見てやろうか?」
「…え〜、いいよ〜…」

ちょうど部屋から出てきた悟飯くんにそう言われて、悟天くんはそっとあたしの後ろに隠れてしまった。
遊び盛りの悟天くん…勉強はやっぱり遠慮しないモノでしかないみたい。
悟飯くんも「本当に悟天は仕方ないなぁ」なんて苦笑いしていたけど…

「悟飯くん、珍しいね」
「え?」
「ううん、まだお昼じゃないのにお部屋から出てくるなんて珍しいなぁって思って」
「あぁ、少し息抜きしようかなと思って。僕もたまには名前さんとゆっくり話がしたいですよ」

そんな風に言われて嬉しくないはずがない。
ちょっとびっくりしたけど、あたしも思わず笑顔になる。

「本当?嬉しいなぁ〜、あっ、じゃあお茶でも淹れようか」
「えぇ、いいですね」

ニコニコしながら台所に向かうあたし。
「僕も一緒にやるよ」と言いながらついてくる悟天くんにはカップを準備してもらった。
その時。
玄関のチャイムが鳴る。

「あれ?誰だろう」

蛇口を閉めて台所を出ようとしたけど、

「あ、いいですよ、僕が出ます」

という悟飯くんの声が聞こえてきたからお言葉に甘えた。
でも…それからしばらくたつけど、悟飯くんがリビングに戻ってきた気配はない。
玄関からは誰かの話し声が聞こえるし…

「誰か来たのかな、名前お姉ちゃん?」
「ね…お客様ならあがってもらえばいいのに…」

そんなことを呟いて、あたしも玄関に向かった。
またトコトコとついてくる悟天くん。

「悟飯くん?誰か来た…の…?」

玄関にひょこっと顔を出したあたしの目に映ったのは意外な人物の姿。
すぐ隣からは「あっ!」という少し嬉しそうな驚いた声が聞こえて…
悟飯くんは「っ…名前さんっ…」と驚いたあとに、少しだけ困った表情であたしの顔を見ていて…

「あれ?誰だ?その娘っ子?」

大きな目で、驚いたようにあたしのことを見るその人に、あたしは小さく頭を下げることしか出来なかった。
隣にいた悟天くんの「お母さん!」という嬉しそうな声が、あたしにはすごくすごく遠くに聞こえたような気がした。



…いつかきっと、こんな日が来るんじゃないかと思ってた…



わかっていながら、目を伏せ続けた事実が…今、目の前にある…