71.いらっしゃい!!
「おっ!名前、来たみてぇだぞ」
「え、どこどこ?」
窓から顔を出して、悟空が指差す先へと視線を向けた。
目に入ってきたのは、上空で着陸態勢に入っている大きな飛行機。
ボディには“カプセルコーポレーション”のマーク。
『見上げれば同じ空。<71>』
「名前〜、お招きありがとうっ!」
「ブッ!ブルマさんっ!!」
飛行機から降りてきたブルマさん。
そのまま駆け寄られて、力いっぱい抱き締められた。
「くっ…苦しいです、ブルマさん〜〜」
「あ、あはは、ごめんねぇ。嬉しくってつい」
あたしの身体を離しながらにっこりと微笑むブルマさん。
本当に嬉しそうにニコニコしていて、何だかあたしまで嬉しくなってしまった。
本当は少し不安だったから。
都会育ち、お嬢様のブルマさんをココ、パオズ山でパーティーを開くって誘ったって、もしかしたら楽しんでもらえないかもしれない…って。
でも、嬉しいことにどうやらあたしの取り越し苦労だったみたい!
「せ〜っかくの名前のお誘いだもの。みんな連れてきたわよ」
「わぁ、ありがとうございます!嬉しいです」
「名前ちゃん、お久し振り」
「よう」
「あっ、クリリンさんにヤムチャさん!お久し振りです」
ブルマさんの後ろから現れた2人にペコリを挨拶をする。
ヤムチャさんの「相変わらず可愛いなぁ」というお世辞に「そ、そんなことないです」と答えながらもどうしても頬が赤くなってしまう。
悟空もそうだけど…何だかこの世界の人たちは言葉が率直な気がする。
「全く…相変わらずだなぁ、ヤムチャさんは」
…あ、でもクリリンさんはそんな感じじゃないか。
18号さんと出会ったばかりの頃…いつも顔を真っ赤にしていたもんね。
そんな漫画のワンシーンをふと思い出して、小さく笑ってしまった。
「ん?名前ちゃん、どした?」
「いいえ、何でもありません。あっ、プーアルくんとウーロンくんも来てくれたんだね、ありがとう!」
「こんにちは〜」
「こ、こんにちは…」
ヤムチャさんの足元からひょっこりと顔を出した2人。
首元には小さな蝶ネクタイがちょこんと結ばれていて…
可愛すぎるわ、全くvvv
特にプーアルくんのふわふわを見ていると思わず抱き締めたくなるけど、必死に我慢したあたしは…偉いと思う(爆)
「あっ!トランクスくん〜!!」
その時、あたしの横を通り抜けて悟天くんが走り寄った先…
ちょうどトランクスくんが飛行機から降りてきたところだ。
「よっ、悟天」
「待ってたよ、トランクスくん」
「ふふっ、トランクスくん、いらっしゃい」
「うん!こんにちは、名前姉ちゃん」
少し屈みながら声をかけるとトランクスくんからは元気な返事。
可愛いなぁ、本当に。
悟天くんは本当にトランクスくんの到着を待ちわびていたようで、早速遊ぼうと誘っている。
本当に…たくさんの人が来てくれた。
到着するなり、怪しい手付きで近付いてきてクリリンさんに制止されていた亀仙人さん(笑)
18号さんにマーロンちゃん。
いつも18号さんに抱っこされているマーロンちゃんだけど、だいぶあたしにも慣れてきてくれたのか…今日は笑いながら手も振ってくれた。
べジータさんもブルマさんに無理矢理連れてこられたようで…庭にある木に背中を預けたまま腕組みをしている。
一見つまらなそうだけど…帰ろうとしないってことは、参加してくれる気ではいるんだろうなってプラス思考に考えておいた。
それから…
「よっ、邪魔するぜ」
少し遅れて到着したのはラディッツさんだった。
「お、兄ちゃん来たな」
「カカロット、たまには粋なこと考えるじゃねぇか」
「今回の考えたんは名前だぞ」
「へぇ」
挨拶をしようとラディッツさんのところに向かうあたし。
ラディッツさんに直接会うのは…チチさんとの一件ですっかりご迷惑をおかけして以来。
ちょっぴり…気まずかったけど。
「名前、元気そうだな」
「わわっ…」
そう言いながら、ラディッツさんの大きな手で頭をわしゃわしゃと撫でられて…
一瞬悩んだのが…すごく小さなことのように感じられた。
不器用だけど、本当は優しいんだよね…ラディッツさんも、バーダックさんも。
「…あり?父ちゃんは来なかったんか?」
「え?」
…悟空の言葉にラディッツさんを見上げるあたし。
どうみても、ラディッツさん1人しかいない。
悟空の口振りだと、2人共誘ってくれていたようだけど…
「いや、親父にも声はかけたんだけど…先約があるんだとよ」
「そうなんか。じゃ仕方ねぇな」
そっか…バーダックさん、いないんだ。
バーダックさんとも気まずい別れをして、そのままだ。
あたしの勝手かもしれないけど、バーダックさんとの蟠りも…早く無くなればいいな、って思ってしまう。
その時。
ラディッツさんの視線があたしたちの後ろへと向けられた。
「…これ、全部作ったのか?」
「え?」
そこには、悟飯くんと手分けして作った料理の数々。
「あ、はい、一応。今、悟飯くんが最後の仕上げをしてくれていて…」
「こんなに大勢の分、大変だったんじゃねぇのか…そういうことは早く言えよ」
「…へ?」
「ったく…持ってきて正解だったぜ」
小さくため息をつきながらそう言ったラディッツさん。
その手には、何処から出したのかエプロンが握られていて…キョトンとしているあたしと悟空の前で手際よくエプロンを装着すると家の中へと入っていく。
「今からでも手伝えることの1つくらいあるだろ?」
…とのこと。
ほ、本当に、家庭的なんですね
「ははっ、兄ちゃんらしいなぁ」
「…あたしは、原作とのキャラのギャップに毎回びっくりだよ」
「ん?何のことだ?」
「えっ、あ、あぁ、何でもない!」
思わず呟いてしまった一言に悟空が反応して…びっくりして顔の前で両手を振るあたし。
でも、そこは悟空。
それ以上は何も聞いてこなかった。
ホッとしたその時、悟空があたしの肩をポンと叩いてきたから顔を上げる。
「名前、ピッコロたちも着いたみてぇだぞ」
「え…」
悟空の視線の先にはちょうど空から舞い降りたピッコロさんとデンデくんの姿。
「えっ…デンデくん!」
「名前さん、こんにちは」
あたしに向かって手を振るデンデくん。
もう、嬉しいやらびっくりやら…
瞬きを繰り返すあたしにデンデくんは笑った。
「Mr.ポポが僕も行ってきたらいいって言ってくれたんです」
「ポポさんが?」
「まぁ、たまには良かろう」
デンデくんの横で腕組みをしているピッコロさんもそう言いながら口元が笑っている。
デンデくんとは神様の神殿でしか会ったことがない。
下界になんて降りて来られないんだろうって思っていた…神様だから。
それなのに来てくれて…何だかすごく嬉しくなった。
「デンデくん、来てくれてありがとう!楽しもうね」
「はい」
…これで、だいたい全員が揃った…かな。
それぞれ話に花を咲かせ始めているみんなを見渡して…あたしのお出迎えは終わり。
家の中に入って悟飯くんを手伝おうと思った。
…けど。
「おいおい、俺たちには名前のお出迎えはないのか?」
「…え?」
悲しいなぁ〜…なんて言いながら、またしても降り立った影。
今までで、一番驚いた。
そのまま前髪を掻きあげて、額にキスされているのはわかったのに何の反応も出来ないくらいに…ポカン、と立ち尽くすあたし。
「あっ!ベジット、何すんだ!!」
「お〜、こわ。いいじゃねぇか、ちょっとくれぇ」
「ダメだ!!」
横から悟空に力いっぱい腕を引かれて、そのまま彼の腕の中に閉じ込められる。
しかも悟空…目の前のベジットさんを睨みつけながら、あたしの額をリストバンドでゴシゴシと…
「悟空っ、痛いってば〜!」
そんなに強く擦られたら、あたしの額は擦り向けてしまう。
腕をバタつかせつつそう言ったら「ちぇ…わかったよ」と言いながらあたしを離す悟空。
そしてベジットさんと同じようにあたしの前髪を掻きあげるとちゅっと唇を落とした。
「これでよし」
「……………」
満足そうな悟空に対して、茫然としてしまうあたし。
「…恥ずかしいヤツらだな…」
そんな言葉にようやくハッとした。
見るとゴテンクスくんが腕組みをしながら明後日の方角を向いている。
その頬はわずかに赤く染まっていて…は、恥ずかしすぎる…
「ベジット、少し大人しくしてろ」
「い、いててっ…」
そう言いながらベジットさんの腕を捻りあげているのはゴジータさん。
痛がっているベジットさんをよそに…なんて爽やかな笑顔。
「名前、元気そうだな。会えて嬉しいよ」
「ゴジータさん、どうして下界に…」
キョトンとしながら見上げるあたしをゴジータさんは優しい笑顔で見降ろした。
ゴジータさんにベジットさん、それからゴテンクスくん。
前に、3人は神界から下界に降りられるのは神様の神殿だけって言っていたはず。
元々は存在していなかったはずの人格で…混乱の元になりかねないから、って。
「今回は特別にな。許可が降りた」
「そうそう。パオズの山奥なら仲間以外の人間に出会うこともないだろうからってさ」
「大変だったんだぞ、界王神たちを説得するのは」
「…そう、だったんですか」
どうしよう…すごく、嬉しい。
思わず綻んでしまう顔を両手で包み込むあたし。
その時、ベジットさんがゴジータさんの手から抜け出しあたしに近付いてきたと思ったら…また、そっと肩を組まれた。
「そのかわり、いつか名前を連れて来いってさ」
…と、いきなりの爆弾発言。
「は、はいっ!?」
「特に老界王神がな。全く…ここの様子なんて、手に取るように見えているくせに」
「あの〜…界王神様たちのいる場所って神聖なところなんですよね?あたしなんかが行ったらまずいんじゃ」
困ったようにそう言うと、顔を見合わせるベジットさんとゴジータさん。
「でも、そう言っているのは界王神たち本人だしなぁ」
「あぁ」
「…そ、そうですか」
何だか…えらいことになっている気がする。
その“いつか”が本当に訪れるのか…それは今はわからないけど、何だか今から緊張して背筋が伸びる思いだ。
でも…嬉しいな。
何もないパオズ山でのパーティー。
こんなにもたくさんの人たちが集まってくれて…あたしは幸せ者だな、と心からそう思った。