04

今回の依頼はいつもとは違う、少し変わった案件だった。


『騒音被害?』
「そうなのよ!!」


依頼を頼んできたのは彼女も面識のある近所に住む主婦。なんでも、ここ何年か近くの家で爆発音が多発しているという。


「ドーン!!っていう爆発したような音と、地震みたいな揺れがもうかれこれ何回も起きててね?うちの近所の中では暗黙の了解みたいになってるけど、本当はみんな迷惑してるのよ。」
『実際に何度も起きてるんですか。』
「えぇ、でもそれも不定期だからいつ起きるか分からなくて内心こっちはヒヤヒヤものよ!!」
『本人に直接話をしたりは?』
「したわよ!!でも"実験が失敗した"とかどうのこうの言って結局理由をあやふやにされて終わるの!!もしかしたらあの人…犯罪者のために発明品を作ってるのかも。」
『いやぁ…いくら爆発音が多発してるからって、そこと繋がるかは「そんなの分からないじゃない!!」


もし仮に爆弾魔のような犯罪者のために爆弾を作っているのなら、わざわざ住宅街で、それも自分の居住スペースがある場所で爆弾を試すのは少々リスクが高いような気がするけど…と志津馬は心の中で考える。


「あ、それと…もう一つ不思議なことがあって。」
『不思議なこと?』
「かなりデカい爆発音がしたにも関わらず、救急車もパトカーも来ないの!!普通それだけデカい音したら事件か事故が起きたとか思うじゃない!?」
『たしかに…それは妙ですね。』
「ね、気になるでしょ!?だからそれも合わせてあの博士が一体どんな発明品を作ってるのか、実態を明らかにしてほしいのよ!!」


というわけで、早速調査を始めることにした彼女だったのだが…


『一度挨拶しているだけに、こういうことで会うのはなんか…気まずいな。』


"阿笠"という表札を見ながら志津馬がそうボヤいていると、


「どっひゃぁああ!!」
『うわっ!!』


誰かの叫び声とともに、依頼主が言っていた爆発音のような音が周りに響き渡る。地鳴りのような衝撃もあって彼女はその場でしゃがみ込むが、しばらくして静かになり体を起こし阿笠邸の中を除くと、博士らしき人物が庭の奥の方でひっくり返りのびていた。


『え…あ、阿笠さん!?』
「う、うぅ…誰か、わしの名前を呼んだかのう…?」
『阿笠さん!!しっかりしてください!!』
「…おぉー!!君はたしか、探偵の!!」


すいません入りますね、と断りを入れた彼女が門を開き駆け寄ると彼はむくっとその場から起き上がり、何事もなかったかのように服についた汚れを手ではたき落としていく。


『大丈夫ですか、ケガは!?』
「なぁに、これくらい大したことないわい。少しうるさかったかのう。」
『…少しじゃなくてだいぶ大きな音してましたけど。』
「そうかそうか。いやぁ〜こういうのは日常茶飯事じゃから、すっかり慣れてしまっておったわい。ほっほ!!」
『(いや笑い事じゃないんだか…?)』


あっけらかんと笑っている彼に彼女は眉をひそめながら目をパチパチさせる。


「それより、ワシに何か用じゃったかな?」
『…阿笠さん。今回は調査依頼を受けて、あなたの発明品についての実態調査をしに参りました。』
「わ、ワシの発明品についての実態調査…?」
『はい。中で少しお話、よろしいですか?』


その様子から察するに、深刻なことなのかもしれないと半ば半信半疑で阿笠は彼女を家へ招き入れた。中に入り阿笠邸の広さに驚きつつも、今は仕事中だからと彼女は我に返り真剣な表情に戻り事の詳細を話す。話を聞いた阿笠はその内容に思わず目を見開いた。


「なんじゃと!?そ、それはつまり…ワシの発明品が犯罪に使うための道具として扱われておるのではないかと近所で噂されているということかね!?」
『端的に言えば、そうなりますね。』
「ありえん!!ワシは世のため人のために役に立つ、安心安全な発明品しか作らないことをモットーに発明品を作っておるんじゃぞ!?『お、落ち着いてください阿笠さん!!』


声を荒らげて勢いよく立ち上がる阿笠に志津馬も両手を上げ制止しようとしていると…


「どうしたんだよ博士。珍しく怒鳴ったりして。」
「一体何の騒ぎ?」


玄関の方から声が聞こえ彼女はそちらの方を見た。そこにいたのはこの前ひったくりを捕まえた時に出会った子どもたちの姿が。


『君たち、この前の…!?』
「あー!!探偵のお姉さーん!!」
「どうしてここにいるんですかぁー!?」
「たしかに近々とは言ったけど。」
「まさかこんなに早ぇーとはな…」
『君たちこそどうしてここに?』
「オレたちはお菓子パーティーしにきたんだぜ!!」
「ちょっと元太くん、それは宿題が終わってからって言ったじゃないですか!!」
「そうだよ!!」
「わ、分かってるけどよぉ…」
「なんじゃ、この子達のことを知ってるのかね?」
『えぇ。ひったくりに遭遇した時に偶然彼らと居合わせて。』


彼らが彼女のところに駆け寄っていくのを見て阿笠の怒りも少し収まる。聞くところによると彼らは近所の学校に通っている小学生たちでよくこの阿笠邸に遊びに来るらしい。



「ねーちゃんも博士んちに遊びに来たのかー?」
『違うよ。今日は仕事。』
「ってことは、探偵としてちゃんと依頼を受けてここに来たってこと?」
『そ。』
「もしかして、表の庭にあった大きな穴と何か関係してるのかしら。」
『はは、察しが良いねお嬢さん。』
「ちょっと困ったことになっとってのう…」


そう言うと阿笠は事の経緯を子どもたちに話し出す。というか、子供に話すんだ…と志津馬は内心驚いていた。


「なるほど。つまりは博士がこのところ実験を行うたび騒音に近い音を発していることに対しての苦情と、犯行に使うための発明品を犯罪者に流しているという疑惑がかけられ、その内部調査をしてほしいって志津馬さんは近所に住む人から頼まれたんだね?」
『まぁ、そういうことだね。』
「だからあれほど言ったじゃない。外で実験をするときはくれぐれも近所迷惑にならない程度に細心の注意を払って、って。」
「しかし、発明に失敗はつきものじゃから「言い訳しない。」
「すいません…」
『(この二人のパワーバランスおかしくないか…?)』


やけに物分りの良いコナンと名乗る少年や、綺麗な茶髪が印象的な灰原という少女と阿笠の関係性に違和感を感じつつも、彼女は平静を装うため目の前のお茶をすすった。


『それともう一つ疑問が。こういう騒音騒ぎが起きてもパトカーも消防も来ないのはなぜなんです?』
「あぁそれは以前、ワシが何度も同じような騒ぎを起こしまったとき警察への110番通報が多くて一時周りの交通がパニックになってしまった時があってのう。今後はこっちから連絡しない限り来なくて大丈夫だと伝えたのが理由で事は収まったんじゃ。」
『(確かにそれは迷惑な話だ…)』
「でもでも、博士の発明品は悪い人が使うようなものじゃないよ!!」
「そうだぞ!!オレたちだって博士の発明品持ってるしよぉ!!」
『え、君たちも持ってるの?』
「はい!!あ、実物を見せましょうか…これです!!」


じゃーん!!と、少年探偵団が見せてきたのはシャーロック・ホームズのような探偵の姿がかたどられたバッジ。


『普通のバッジに見えるけど…』
「ですよね?でもそれが違うんですよ。見ててくださーい?」


そう言うと光彦はおもむろに席を立つと外へと出て行ってしまった。


『ちょっ、どこ行くの?』
「いいから見とけって!!」
「これを耳元にあててみて!!」
『う、うん…』


歩美の指示通り、志津馬がバッジを耳元にあてると…


《あーあー、テステス、マイクテスト…志津馬さーん!!光彦です!!僕の声が聞こえますかー!!》
『聞こえる…え、聞こえるよ光彦くん!!なんで!?』
《このバッジは、バッジを持っている人だけの通信手段になるんです!!》
「中に超小型の通信装置が搭載してあって、トランシーバーの働きをしているんじゃ。」
『……普通にすごいじゃないですか!!』


予想以上のものを目の当たりにして彼女は思わず声を上げる。光彦が外から戻ってくると今度は元太がある物を見せてきた。


「すげぇーのはそれだけじゃねぇぞ!!この腕時計も、ライトが付くんだぜ!!」
『本当だ…』
「その腕時計型ライトは最長で30分点灯することができ、その上防水加工付きじゃ。停電したときや緊急時にも使える優れものじゃぞ。」
『なるほど…いやいや、でもこれは単なる子供だましという可能性も捨てきれません。』


そう言うと彼女の態度は一変しておもむろにその場から立ち上がる。


『念のため、他の発明品も見せてもらえますか。近隣住民の方々の安全のためにも。』
「それは別に構わんが…」
「博士。志津馬さんを研究室に案内してあげれば?」
「そ、そうじゃな。それでワシの疑いが晴れるのならばお安い御用じゃよ。」


こうして博士の案内で志津馬は彼の研究室へと向かった。


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