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翌日、名前は感謝を込めてショートメールを安室に送った。返信は当たり障りのない内容が届いて、特にやりとりをすることなく終わった。
電話をかける勇気はまだ持てない。
名刺を受け取ってくれなかったという拒絶と、逆に安室から連絡先を貰った諾了、名前はどうすればいいのか決めかねていた。

寧ろそれよりも今は名前自身に降り掛かっている事件のことでいっぱいいっぱいで、安室とどういう風に接したらいいのかは二の次だった。
出来ることなら元いた場所へ帰りたい。けれど帰り方が分からない。そう思っていた。

はぁ、先輩たち元気かな…
本当にパラレルワールドに飛んで来たとしたら、元いた私の場所は空白になってるのかな、それとも行方不明になってるのかな
水商売なんて辞めたいな、でも行くところが無くなっちゃうな
でもまずは生活基盤を整えないと調べ物も出来ないし頑張らなきゃ…

頭の中ではぐるぐると考えが巡る。
どうしたら、どうすれば。
考えていると着信音が部屋に鳴り響いた。画面には毛利小五郎の文字。
躊躇わずに応答する。

おはようございます、から始まり、ものの数分で、それではまたと電話を切った。

この前は行けなくて申し訳なかったという内容だったが、名前から安室の話を振ると、伝言を頼んだのは事実らしいがそれ以上の事は頼んでいなかった事が発覚した。
聞いていた話と違うでは無いか。これはどういうことなのだろうと思い巡らすが、答えは一向に出ない。
怒りとはほぼ無縁の名前であるが、解けない謎が多すぎて苛立ちを覚える。

考えてもなにも分からないのならと、名前は行動を起こすことに決めた。

「今日って安室さんはシフト入ってるのかな…」