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そして次の日、私は公安委員会に呼び出された。
指定された建物に向かった私は厳重にロックがかかった部屋に通された。会議室にいた公安委員会長は、固い顔つきで話し始めた。


「イレイザーヘッドから事のあらましは説明があったと聞いてるわ」


今回は災難だったわね。静かな口調で、公安委員会長は言った。


「あなたの異能は、過去に戻るという史上類を見ない特別な個性。これまでは政府が、あなたが自身のこの個性を使用することを禁じてきた。けれど、今回の任務ではあなたの"時間遡行"の個性が必要なの」
「ええ、分かっています。私も、彼を助けたいです。今回の任務、必ず遂行します」
「…有難う。今まで自分の個性を隠すようにいってきた我々がこんな時ばかりあなたに頼るなんて、ムシのいいことだとは思うわ。単独での仕事で、過去へいけば誰からのサポートも受けることはできない。だけれど、事態は深刻なもの。あなたにしか頼めない」


これを。渡されたのは、小さなチップと一枚の資料だった。
資料に映っているのは、明るいピンクの髪色の男だ。恐らく個性の影響なのだろうその髪は、青白い肌をした大人しそうな顔立ちとちぐはぐな印象を受ける。細身の体躯で、焦凍くんを倒した人間だとは正直とても思えなかった。


「植物を操るタイプの個性、なんですね。でも、それなら焦…夫の、燃焼の個性で対処できたのではないでしょうか」
「主犯がこの男ではあるけれど、犯行自体は複数人で行われたの。あらかじめヒーローショートの個性対策をしたうえで追い詰めていったのでしょうね。あなたには雄英で過ごしてもらいつつ、調査を行っていってもらうことになるわ。ただ、敵連合と花吹が接触があったこと以外には、この男の動向は何もわかっていないの。政府が独自に作っている犯罪者たちとそれに関わっている可能性のある企業のデータベースにアクセスできるようにしておいたから、そのマイクロチップを使って探ってちょうだい」
「…わかりました」


花吹が過去でどこでどのような活動をしていたのか。その時点ですでに犯罪者だったのか。そのようなことが全く分からないとなれば、かなり捜査は難しくなるだろう。学校生活を送りながらのヴィランの調査なんて、少しでも私が怪しい動きをすれば学校自体にいることが難しくなってしまうのではないか?七年前の入学当初の雄英といえば、敵連合の侵入などもあってかなりピリピリしている時期でもある。
会長の説明は続く。それを聞きながら、今回の任務の難易度の高さに思わず唾を呑み込んだ。


「捜査はきっと、とても困難なものになると思うわ」


けれど。会長は続ける。



「何としても、遂行してもらわなければならない。ショートはヴィランの捕獲に成功し、今はあなたと旅行で暫く都外に出ているということになっているの。話の辻妻を合わせるために、数人のヒーローたちで花吹の捕獲に当たっているわ。あなたの個性は過去と未来の時間がイコールではないことだけが、唯一の救いだった」
「ええ、過去で一年いたとしても、こちらではせいぜい二か月しか経っていないと思います」


時間遡行の個性には、現在と遡行した先の過去との間にタイムラグができるという特徴があった。そのため、たとえ高校時代に戻りそこで長い時間を過ごしても、ここでの時間差はあまりできない。焦凍くんが瀕死の重体を負ったことを隠すにしても、あまり長い時間が経つとそれも難しくなってしまう。過去に行ったら、なるべく早く花吹の捕捉に動かなければならない。


「花吹を捕まえる際に必要な武器や備品は、既に依頼済みなの。明後日には出来上がるから、それを受け取り次第すぐに出立してちょうだい」


会長が渡したアドレス。一枚の紙きれには、今一番人気のあるアイテム開発会社の名前が載っていた。