02

みんなの訓練が続々と終わっていって、残すところ私と御影の対戦のみになった。
ヒーロー役が私で、御影はヴィラン役。
スタート場所に入って、ウォームアップに手足を動かしながら考える。


(今回は建物の構造が分からないから、少しづつ距離を縮めていくしかない。御影は多分、核を守っているはずだ。初めての戦闘訓練で、しかも組む相手がいないのにわざわざどこにいるか分からないヴィランを探すなんてデメリットのほうが多いんだし…)


▽▽▽

「そういえばさー、みんな苗字の個性のこと知ってる?」
「いや俺知らん」
「俺もー」
「御影ちゃんの個性も謎よね」


モニタリングルームでは、訓練をすでに済ませたクラスメイトたちが集まって画面を見ていた。オールマイトのスタートの合図が入り、歩き始める苗字なまえの姿が青白いブルーライトの中に映し出される。


(苗字さんって、どんな個性なんだろう?)


麗日は考えた。
苗字なまえは、どちらかえといえばあまり目立たないタイプで控えめな印象があるクラスメイトだ。何度か話したことはあるものの、あまり彼女のことはよく知らない。
村田御影。御影とは麗日ももうかなり仲良くなっていた。彼女は、苗字と仲良さげによく話しているのをよく見かけるが、二人は同じ中学出身なのだろうか?
どちらの個性も、まだみんな知らなかった。彼女たちふたりは体力測定の時、個性を使わなかったからだ。個性使用が可能だったのにそうしないということは、ああいう場面ではあまり使いようのない個性ということなのだろうか?しかし、ヒーロー科に入学しているわけだから戦闘に適しているものの、はず…


「あれっ」


うーんと首を捻って考えていた麗日は、切島の声にはっとしてモニターを見上げた。


「苗字さんが、消えた…!?」
「えっ、今の今までモニターに映ってたよね?」
「どこにーあっ、あそこ!」


はっとして、麗日は声を上げた。
皆の視線が分割されたモニターの一番左上に集中する。ーそこには、つい先ほどまでは一階のフロアにいたはずのなまえがいた。それを見た皆の間にどよめきが広がる。


「なんでもうあんな所に居るんだ!?」
「もしかして、瞬間移動とかの個性ってこと?」
「いやー…多分あれ、空間移動だろ」


ざわつく周囲の中で、同じく画面を見上げていた轟が静かな口調で言った。


「階全体にはいくつか部屋もある。もし瞬間移動したなら、そのドアまでは潜り抜けられないはずだ。なのに、あいつはもう二階にいる。ほとんどワープみたいなもんか」
「えっ強すぎない?」
「オールマイトは知ってたんですか?」


ワープ。それは数ある個性の中でもかなり希少性が高いものだ。生まれたときから大体の者が何らかの個性を有して生まれてくるこの社会において、力の強い個性を持っているということは生まれながらにしてアドバンテージを持っているということと同じ。まさかクラスメイトがそうだったとは。
驚いて、後方を振り返って訊ねた上鳴に、オールマイトは頷いた。


「ああ。彼女の個性のことはあらかじめ相澤先生から聞いているよ。体育測定の時では使わなかったそうだが、今回の対人戦闘の訓練となれば使いどころ満載だろう。測定の時に個性の様子を確認できなかったぶん、ここでしっかり見ておくよう、先生からも頼まれているのさ!」
「そうだったんだ…」
「じゃあ、村田さんの個性も分かりますのね。一体どんな…」


皆が注目するなか、モニターの中のなまえは進んでいく。轟もまた、皆と共に彼女の姿をじっと見ていた。