そして、私は今に至る。
今日は初めての対人戦闘訓練がある日だ。コスチュームに着替え集合場所まで行くと、私に気づいた御影が手を振ってくれた。
「もうみんな集まってるんだ。張り切ってるね」
「初めての戦闘訓練だからねー。でも、私かなり緊張してきたかも…。なまえは?」
「うん、私も…。まだ、みんなの個性がどんなのか知らないしね」
緊張したように笑ってみせるが、もちろんみんなの個性のこともこれから起こることも私はすべて知っている。だが、御影の個性は私も知らない。七年前の訓練では上鳴くんたちのところに加わって私たちのグループだけ三人になったのだが、今回は偶数人になるからヒーロー役・ヴィラン役を一人でするグループができるはずだ。モニタリングで彼女の個性を確認することはできが、できれば戦闘は彼女と組みたい。
「A組は人数が二十二人だから、KとLは一人ずつでやってもらうぞ!仲間との連携の練習ができないが、一人のときに会敵することももちろんある!是非頑張ってほしい!」
「一人で、って…。まあ人数の関係上、仕方ないんだろうけど初めてだしなあ、やっぱ二人ずつのところがいいよな」
「そこだけタイマンになるってことだよな」
(もし僕とかっちゃんがKとLに当たったらどうしよう…)
がやがやとみんなが話す中で、不安げな顔つきの緑谷くんがいる。困ったようなその表情を見て思わずふふ、と笑ってしまった。
彼と爆豪くんの間柄については私もよく知るところだ。在学中、私と緑谷くんはかなるよくしゃべる友達同士になっていて、その時に何度か教えてもらったことがある。結局この訓練では彼と爆轟くんは対戦することになるが、お茶子ちゃんたちも一緒だし、何より結果を知っている。本人には伝えることはできないが、心の中でがんばって、と声をかけた。
ーそして、くじの結果。
「K・L組は苗字さんと村田さんですわね」
「なまえ!」
「御影。敵同士になっちゃったけど…。お互い全力でがんばろうね!」
「もちろん」
私の願いが届いたのか、訓練の相手は御影になった。
「苗字さん、御影ちゃんと敵同士になっちゃったのね」
「うん、でも精いっぱい頑張るつもり!」
最初の対戦チームである緑谷くんたちを残し、私は皆とモニタリングルームへ移動した。向かう途中、梅雨ちゃんに話しかけられる。それに応えていると、少し前を歩く彼の姿が目に入った。
(焦凍くん…)
彼に話しかけることはできない。この四月の段階で、私たちはまだお互いのことを殆ど知らないし、言葉を交わしたことだってほぼ無いはず。話題がないし、それに焦凍くんもこのころはまだクラスの皆と親しく話すというわけではなかった。
しかし、私は今すぐにでも焦凍くんの傍へ行きたかった。行ってどうするというわけでもない。抱きしめるわけにもいかない。だが、大好きな、生きている彼の姿を見ていると胸の中にそんな強い気持ちが沸き起こるようだった。
「苗字さん?どうしたの?」
「−ううん、なんでもないよ。やっぱりちょっと緊張してるかも」
不思議そうな梅雨ちゃんの声に、私は焦凍くんから視線を戻した。一瞬、彼の方へと伸ばしかけた手は、梅雨ちゃんに気づかれないように握りしめた。