そして、放課後。
「あ、」
「おお来た緑谷!!!おつかれ!!!」
ガラリと教室のドアを開け、緑谷くんが帰ってきた。その腕にはギプスが固定され、ところどころに小さな怪我が残ってはいるものの、リカバリーガールのもとでかなり回復できたようだ。
彼が爆豪くんとの対戦でこうなることは知っていはいたが、こうしてみるとかなり痛々しい怪我だ。
「いや何喋ってっかわかんなかったけどアツかったぜおめー!!」
「へっ!?」
「よく避けたよー」
「一戦目であんなのやられたから俺らも力入っちまったぜ」
美奈ちゃんや砂藤くんたちも、切島くんと一緒に緑谷くんに賞賛の声を浴びせる。それに驚きながら「あ、ありがとう」とあたふたする彼に、隣にいた御影がほっとした表情になった。
「腕だけまだ治ってないけど、よかったね緑谷くん。凄く怪我は酷かったから大丈夫かなって心配してたけど…」
「本当に。あ、緑谷くん!怪我、治して貰えたんだね。よかった!」
こっちに気づいた緑谷君に、私たちも駆け寄る。
「苗字さん」「村田さん」顔を上げた緑谷君の頬にはまだ擦り傷が残っている。
「うん、腕は僕の体力のあれで…心配してくれてありがとう」
緑谷君くんはそう笑ったが、一緒にいたお茶子ちゃんは心配そうだ。同じチームだったから、彼の怪我が余計に気になっていたんだろう。「治してもらえてほんまに良かった〜…」心底ほっとしたような息を吐いた。
それに対して緑谷君はそわそわとした様子で、
「そ、それでかっちゃんは?あの後どうなった?」
「それが…」
お茶子ちゃんの顔が曇る。
「皆止めたんだけど、さっき黙って帰っちゃったよ」
それを聞いた緑谷くんは、「、そっか。…うん、わかった。ありがとう!」「え、デクくん!?」すぐにドアを開けて、行ってしまった。爆豪くんは、緑谷くんに負けたことでかなり精神的なダメージを負っていた。一年生も半ばを過ぎるころにはふたりの仲はかなり良くなったようだったが、今はとてもギスギスしている。あれだけ激しい戦闘になり大きな怪我を負ったとはいえ、緑谷くんはやはり彼のことが気になるのだろう。
出て行ってしまった緑谷くんを御影は心配そうに見送った。
「緑谷くん、爆豪くんと仲直りできたらいいよね。喧嘩?かどうかは私たちからは分からなかったけど…」
「そうだね」
彼女の言葉に私も頷く。と、
「御影!今日の凄かったねー!」
元気いっぱいな声がして、美奈ちゃんが御影にがばりと抱き着いた。それに嬉しそうに振り返った御影も、「ありがとう」と返す。
「苗字さんも、惜しかったよね。あとちょっとで勝てそうだったのに」
「ありがとう、芦戸さん」
芦戸さん。我ながら他人行儀な呼び方だ。
七年前では、私も彼女を皆とおなじように「美奈ちゃん」と呼んでいたものだった。美奈ちゃんだけでなく、お茶子ちゃんや梅雨ちゃんのことも。流石に男子は苗字呼びだったのだが。
今回の任務ではあまり親密に接しすぎると後々動きずらくなる可能性もある。また、些細な会話から未来のことをぽろりと口にしてそれが疑いにつながるなんてことはあってはならないから、私は極力、皆との接触を避けていたのだった。
今回の任務はさっさと方をつけるつもりだし、多少昔と違うことをしたところで未来が大きく変わるということもないのだが、それでもやはり寂しいものだなと一人思った。