ー私がヴィランと共にワープした先は、USJ内にある森の部分だった。雄英に在籍していた中で何度もここを使ったことがあったから、この場所が普段は全く人気はないことを知っていたのだ。
「−で」
くるりと振り返り、後ろにいるヴィランを見る。
「んだよ…!」
私が取った行動に困惑しているのか、一人だけ別の場所に連れてこられたヴィランは焦った表情を浮かべた。しかし個性によって手に現れた刀の切っ先は私に向けられている。ぎらぎらと輝く刃。向けられる殺気も、かつての七年前の自分ならただ屈するしかなかったが今の私は違う。
「な、!!!」
ワープで間合いを詰め、武器を持つヴィランの手をがっしりと掴む。それに奴が動揺した瞬間、両腕と脚をワープで別の空間へと拘束して身動きが取れないようにした。
「黙って。私の質問にだけ答えて。もし逆らえば、あなたの手足を身体から切り離す」
「なんッ、」
「"花吹草治"という男を知ってる?」
私の言葉に頭に血が上ったのか、身体を起こそうとしたヴィランの耳を指先で強く捻った。
「さっさと答えて貰わないと、この耳ともさよならしなくちゃいけなくなるから。で、知ってるの?」
「そ、そんなヤツ知らねえよ!!俺はただ、」
「髪がピンクでやつれた顔の、痩せっぽちの男だよ。本当に覚えがないの?」
花吹草治は今は三十歳のはずだ。ただ、明らかになっている見た目と今ではまた違うかもしれない。少しでもいいから何らかの情報を今掴まなくてはならないが、さっさと終わらせなければ塚内さんたち警察が到着してしまう。敵連合の死柄木弔たちとオールマイトの戦闘は今どのくらいまで来ているだろうか。
当時の時間のことなどは流石に思い出せない。とにかく早く終わらせないと。ワープで空間別に固定したヴィランの腕への圧力を強める。
「ひっ」
「知ってるのに隠したりしてない?はなぶきそうじ。本当に、この名前に聞き覚えが「あっ!!!!」」
と、急にヴィランが大きな声を上げた。
「俺は直接会ったわけじゃねえが、ほかの奴らがそいつの名前を喋ってたような…!たしか、"ミツダ"製薬会社にいるとかいう、」
「ミツダ製薬会社?」
ヴィランの言葉に、ぐいと顔を近づける。ミツダ製薬会社。そう言ったヴィランは、「ただ聞いただけの話だって!!!」と足をバタつかせながら、早く自分を解放してくれと言わんばかりに嘆いた。
「もういいだろ!!!話したんだから、早く俺を解放してくれ!!!!」
(ミツダ製薬会社…)
聞いたことのない会社名だ。そこに花吹が在籍しているというのだろうか?
なにか喚きたてるヴィランを横目に考える。製薬会社。未来で焦凍くんを襲ったときは、"ロゼッタ"という反社会組織グループに属していたはずだが、それなら会社は奴の表の顔なのか?それとも会社も何らかの組織で、ロゼッタはまた新たに加入した組織?
思考を続けながらも、ヴィランに顔をぐいと近づける。太ももの銃と一緒にホルダーに入れていた小さなチップを、ヴィランの胸へ取り付けた。
「今の私たちの会話は誰にも言わないで。"俺は何も見ていない"。分かるでしょう?」
「な、何なんだよコレ!!!」
「監視カメラ付きの"何か"だよ。もしあなたが誰かに今起きたことを口外したなら爆発するかもだけど」
「、わ、分かった分かったから!!"俺はなにも見ていない"!!!」
そう叫んだヴィランからワープを解く。漸く解放されて後退るヴィラン。もう彼に用はない。肩に手を付き、USJ内の他の場所へ飛ばす。チップは適当に用意した監視機能なんてついていない代物だが、彼がこのことを周りに話さない抑止力になればそれで構わない。
ヴィランがいなくなって一人取り残されて、なんとか情報を得られたことにはあと安堵のため息が漏れた。
("ミツダ製薬会社"か。帰ってすぐに調べないと)
しかし、いくら仕方がなかったとはいえあ、んな乱暴な詰問は流石に良くなかったかと後悔する。ヒーローは原則としていくら相手が社会犯罪者だとしても必要以上に危害を加えたり殴ったりするのはご法度なのだ。公安委員会からは任務遂行のために多少手荒にやってもいいと許しが出ているが、やはり多少の罪悪感を感じてしまったのだった。