03

「ヴィラン!?バカだろ!?」
「ヒーローの学校に入りこんでくるなんてアホすぎるぞ!」


皆がざわめいて、誰も彼もが焦った声を上げる。その間にも、ワープの中から出てくるたくさんのヴィラン。
百ちゃんが「先生!」と13号先生を呼ぶ。


「侵入者用センサーは!」
「もちろんありますが…!」


(センサーが反応しない。きっと、あちらのヴィランの仕業だ)


それがどういうことなのかというと、つまり奴らは私たちをここで殺す気なのだ。
七年前にも同じ目に遭っているから分かるというのもわかるが、未来で実際にヴィランの捕獲や戦闘にあたったときの経験からそれが今はっきりと分かった。当時は何が何だか分からずただ怖かったが、未来での経験を記憶している今の身体をもってしてもその緊張感に思わず唾を呑み込んだ。

だが、私にはやるべきことがあるのだ。


「なまえ、どうしよう、なんでヴィランが…!」


御影も焦った声を上げて、襲い来るヴィランにどうすることも出来ず慌てている。相澤先生は私たちに指示を飛ばし、自身の首に巻かれた捕縛布に手をかけた。


「13号避難開始!学校に連絡試せ!センサーの対策も頭にあるヴィランだ。電場系の"個性"が妨害している可能性もある。上鳴おまえも"個性"で連絡試せ」
「っス!」


矢継ぎ早にそう告げられ、上鳴くんは応えるもその表所はどうすればいいのか分からない不安そうなものだ。当たり前だ。まさかこんなことになるなんて誰も思っていなかったのだから。それに少し前まで中学生だったのに、急にヴィランとの戦闘になるなんて考えもしない。


「苗字くん、村田くんも早く非難を!!!」


飯田くんに呼ばれ、ゲートへ向かう皆の方へと走る。御影はひとりヴィランの足止めに向かった相澤先生を振り返る。気がかりなのだ。咄嗟に御影の手を掴み、私は彼女を強く引っ張った。


「御影、先生なら絶対に大丈夫!今は早く逃げよう!」
「−う、うん!分かった!!」
「すごい…!多対一こそ、先生の得意分野だったんだ!」
「分析している場合じゃない!早く非難を!!」


戦っている先生を思わずいつものように分析し始める緑谷くん。飯田くんに言われ、「早く!緑谷君も!」と三人で皆の方へと急ぐ。
ーが、私は知っている。私たちは逃げられないのだ。


「−させませんよ」


ぶわり、と目の前に立ちふさがるように広がった黒いワープ体。−敵連合の黒霧だ。

どくん、と強く心臓が鳴った。


「初めまして。我々は敵連合。僭越ながら…この度ヒーローの巣窟、雄英高校に入らせて頂いたのは」


「平和の象徴オールマイトに息絶えて戴きたいと思ってのことでして」


隣の緑谷くんが息を呑むのが分かった。私だって七年前、この場面に遭遇した時は本当に怖かった。ヒーローになるための実習だったが、結局ほとんど動けなかったのを思い出す。
そうしている間にも、敵連合の黒霧は自身のワープ体を広げていく。それをさせるかと、切島くんと爆豪くんが各々攻撃を奴に放った。


「その前に俺たちにやられることは考えてなかったか!?」
「危ない危ない…。そう…生徒とはいえど優秀な金の卵…」

「−ダメだ、どきなさい二人とも!」


危険を察知し、叫んだ13号先生の声が届くのよりも早く。

黒霧のワープ体が辺り一面を呑み込むように広がった。
ぎゅう、と拳を握りしめ、首筋に伝った一粒の汗が、緊張で張りつめた肌を通って落ちる。

ーそして、私は一人、皆とは離れた箇所へと突っ込んだ。


「−皆!!」


緑谷君の声を最後に、なにも見えなくなった。
黒い霧。私たちを別々の場所へと飛ばしたそのワープが霧散し、私が落ちた場所はどこかの教室の中だった。


「苗字!?」


聞き覚えのある声。顔を上げ、視界に入ったのは切島くんと爆豪くんの二人だった。