片思いしてるクラスメイトとそれを知っている爆豪

「本当にごめんなさい」
「うるせぇつってんだよ。何回言えば分んだ?あ?」
「でも、こんな事になったのは私の所為だし」

何度五月蝿いと言われても謝らずにはいられない。まさか、まさか自分の個性を誤って発動させたなんて。

私の個性は“隔離”。自分を含めあらゆるものを世界から隔離して亜空間に一定時間閉じ込めることが出来る。時間は疎らで持っても20分位だ。しかも自分で解除することが出来なくて今はそれをひたすら練習しているのだ。
ついこの間爆豪くんを間違って隔離してしまってからはそんな私をみかねてか進捗状況を聞いてきてくれるようになり、今日も練習の成果を聞いてくれた。

「てめぇどうなんだ?」
「う、んと…まだかな?もうちょっとって感じなんだけど」
「お前まだ自分で解除できねぇのかよ」
「本当にあと少しなんだけどね…あっ!!」
「は?」

教室で話していたはずなのに気が付けば箱状の空間に私と爆豪くんだけ。しかも私の亜空間は広さがそこまでなく、2人入ると密着はしないものの肩と肩が触れそうなほど近くなる。呼吸で肩が僅かに上下に動くだけでも反応してしまう。

それよりもまた爆豪くんに迷惑をかけてしまった。
何度爆豪くんに迷惑をかければ私は気が済むのだろうか。いや、嫌いだから迷惑をかけたいとそういうわけではなく。
寧ろ爆豪くんには恋心を抱いているわけで…。あれ?でも待って。私もしかしたら迷惑だと思われているのかも?定期的に聞いてくれる進捗状況も自分に迷惑がかからないかを心配して聞いているのかも!

「そうだよね…そうに違いない…」
「何独り言を言ってんだてめぇは」
「あ、ごめんなさい」
「だから謝んなって言ってんだろうが!」

あぁ、また怒られた。きっと好感度バロメーターがあれば今頃下がっているに違いない。情けない自分に息を吐き出しながら膝を抱えると爆豪くんが話かけてくれた。

「お前他の奴を巻き込んだ事あんのかよ」
「…情けない事に…」
「はぁ?!誰だよ!!つかお前俺の事が!!」

顔のすぐ横、わりと耳元の近くで怒鳴られて咄嗟に耳を手で塞いで爆豪くんの方に振り向くと思ったよりも顔が近くて、驚き後ろに仰け反ると壁に当たって後頭部を打つ。

「ぎゃっ!」
「そいつとこんな近くにいたんか?」
「まぁ…これ以上広くできないもん」
「誰だよ」

ヤオモモ…。と呟けば爆豪くんは目を一瞬大きくさせ、大きな溜息を吐いた。そして私を睨んでまた怒鳴る。

「ややこしい言い方してんじゃねぇよ!!」
「へ?んー、ごめんなさい?」

野郎かと思ったじゃねぇか。ボソッと呟かれた言葉に顔に熱を帯びた。爆豪くん以外の人とこんなに近い距離になった事はない。私が警戒して男の子といる時に個性を使わないようにしているからだ。ヒーローを目指している身としてはどうかと思うけど、ちゃんと扱えない今は迷惑をかけないようにするしかないのだ。

「名前お前何顔を赤くさせてんだよ!!」
「だって!こんな状況になるの爆豪くんだけで!は、恥ずかしいんだもん」
「おまっ!!」
「へ?…は!!忘れて!今の忘れて!!」

まさかの失言に顔に熱が集まり、爆豪くんの顔が見られなくなって俯くと、頭の後ろに爆豪くんの手が回り気が付いた時には爆豪くんの逞しい肩に額が当たっていた。ふわりと香る甘い匂いに、肌に伝わる彼の体温に一瞬時が止まったんじゃないかと錯覚するほど何が起こったのか理解が出来なかった。

「落ち着け」
「むむむ、むりだよ…」

好きな人に抱き締められているような体制になって落ち着けるわけがない。早鐘を打つ心臓の音が爆豪くんにも伝わってしまうんじゃないかと心配になる。早く、早く隔離の個性が解けて欲しいのにもう少しだけ近くにいたいなんて我儘なお願いだ。でもこれ以上長くいると私の心臓が持たないかもしれない。
私の願いが届いたのか個性が解けて、亜空間から誰もいない教室に変わり爆豪くんの腕が緩んだ隙に脱兎の如く逃げ出すとすぐに爆豪くんに呼び止められる。

「逃げんな」

忙しなく五月蠅い程高鳴る心臓の音よりも爆豪くんの声が耳にクリアに聞こえて、思わず足を止めてしまった。でもやっぱり爆豪くんの方には振り返れなくて、教室の扉に額を預ける。固く目を瞑り恥ずかしさに耐えていると靴底が床に掠る音が聞こえてきて、扉に何かが当たる音がし目を開けると爆豪くんの手が扉に伸びていた。

「名前こっち向けよ」
「むりだよ…」
「名前」

名前を呼ばれただけなのに体が勝手に動き出す。爆豪くんに洗脳なんて個性はないのに私は彼の言う事に逆らう事が出来なくて、赤い顔を隠すこともなく振り向くと爆豪くんは私の手を取って指を絡めて扉に縫い付ける。

「待って、爆豪くん…!私期待しちゃうから離して」
「んなもんどーでもいいから言えよ」
「な、にを」

この状況で何を言えと言うんだ。
爆豪くんの視線は鋭い筈なのに甘くて、甘い筈なのに逃れる事は出来ないものだった。

「言えよ」

もうこの気持ちを白状した方が楽になるんだろうか。きっと爆豪くんは私の気持ちにも気が付いているに違いない。他人に敏感な爆豪くん相手にこの気持ちを隠し通そうなんて無謀だったのかもしれない。
でも、この状況に爆豪くんの視線に震える唇を小さく開ける。

「すき…」
「何がだよ」
「爆豪くんが好き…です」

爆豪くんの目を見つめながら言うと彼は、短く息を吐き捨てて目を細めて笑う。

「やっとかよ。遅せぇんだよ」

この人はこんな笑い方をする人だったなんて、知らなかった。
胸の奥が締め付けられるようなそんな感覚が苦しいのに愛おしい。こんな感覚を与えてくれるのは爆豪くんだけだ。