ch1:マヨナカテレビ
こっちに引っ越してきてから二度目の春。
バイトを始めてからはそこそこ忙しいような、それでいて充実した日々を送っている。
まるであの夜の出来事が無かったかのように平和


そして何も無い日々。


一緒に闘ってきた先輩達が居ない。
見た目は可憐なロボットの少女や、ただの犬ではない勇敢な彼、弟のように可愛がっていた後輩だって居ない。

別に今の暮らしに不満がある訳じゃない。ただ、みんなが居ないことが寂しいのだ。
だって私達はずっと一緒だったのだ。
たった一年と言われるかもしれない。でも、私にとってその一年は何物にも変えがたいものであった。


「辛気くさっ……」


あまりにも卑屈な自分の思考に嫌気がさし、こんな考え方はやめようと頬杖をつき直した。
何も無いことが当たり前だったのだ。学生は学生らしく、青春を謳歌しよう。
こうして何も無い日々がまた続く……


はずだった





「ねえ、マヨナカテレビって知ってる?」


隣の席の女子に唐突に聞かれた言葉
私は初めて聞いた単語に一瞬思考が停止する。マヨナカテレビ…?そんなものは聞いたことが無い。

「マヨナカテレビ?なにそれおいしいの?」
てか誰でしたっけ?

隣の席の女子は気にした風でもなく平然と名前を名のった。
ほうほうそうでしたと、そういえば昨日お互いに自己紹介しましたなと思い出す。

「で、えーっと……」
「ハルカよ。」
「そう、ハルカさん。」
「ハルカでいいわ。」
「じゃあハルコ。」
「誰よそれ。」
「嘘、冗談。それでマヨナカテレビって?」

さあさっさと続きを言うのだと促すとハルカはため息をついた。

「その顔、むかつく……それで、マヨナカテレビっていうのは…」






――――時が過ぎ、時刻は0時を差す数分前
マヨナカテレビを見ようと稲羽市の一部の学生がテレビの前に座りだす。ある者は自分の運命の人を見ようと、

ある者は好奇心から本当に映るかどうか、

そしてある者は……
[ 2/5 ]