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「来たー!!キャプテンが来たよー!!」
「何!?」
「本当か!?」

大声で叫びながら走って戻ってくるベポさん達にみんながざわつきだす。
かくいう私も立ち上がって彼らを迎えた。

サンジさんがいなくなってから数日。
私は麦わらの一味の皆さんと一旦別れ、「くじらの森」にてみんなと一緒に復興作業を手伝いながら過ごしていた。
今までは麦わらの一味の皆さんと来た為に「恩人」という扱いを受け、チョッパー先生の治療の手伝いもあって割と好き勝手島の中を動き回れていたのだが、聞けばみんなは「海賊」の扱いとして猫の王…ネコマムシの旦那さんの預かりとなっているそうで。
「くじらの森」からは基本的に出られず過ごしているというので私もそれに倣うことにしたのだ。

正直なところ研修的な意味で治療の手伝いは最後までしたかったが、ミヤギ先生やトリスタンさんもいることだし仲間が行動制限を受けているのならそちらに準じた方が数ヶ月ぶりに再会したみんなも安心できるだろうと思い、そう決めた。
まあ実際のところは腹部の怪我がわりと大きかったことを知ったイッカクさんが血相変えて頼むから此処にいてくれと頭を下げてきたことが大きな要因ではあるのだけど。
そんな訳で今日も作業を手伝い、ひと段落で休憩をしている時だった。

「侵入者だ!」
「「「!!」」」

見張りをしていた “侠客団”ガーディアンズ の1人が突如として声を張り上げる。
その言葉に即座に反応し、森の中に消えていくペドロさん始め、侠客団の皆さん。
その後ろから慌てて着いていくベポさん達。
侵入者…まさかこの国を滅ぼした奴らが戻ってきたのだろうか。
ざわつくみんなと共に不安な気持ちでその後の報せを待っていると、冒頭で述べた通りに泣き笑いの顔で叫ぶベポさん達が戻ってきたのだった。

「キャプテンが到着したって!?」
「本人にはまだ会えてないけどさっきの森への侵入者が麦わらだったんだ」
「キャプテンも一緒に到着したって!此処から出らんないから来てほしいって言伝頼んだから来てくれると思う!」
「そうか漸く…!」
「早く会いてェな〜!」

口々に安堵と喜びの声を洩らすみんなの中で、バレないようにごくりと唾を飲む。
…まずい、いざ会うとなると緊張してきた。

みんなと違い私が先生と離れていたのはたかだか2週間弱だけれど、その短い時間で私の中での彼への感情は180度ひっくり返ってしまった訳だから変な汗のひとつやふたつかくというものだ。
急に黙った私を、イッカクさんとペンギンさんが横から肘で小突きまわしてくる。
ええいやめろ。

「な〜に黙ってんだ名前ちゃん」
「お迎え行ってあげなさいよ…名前なら出歩いてても此処の人たちに何も言われないでしょ」
「え、いや、その、だ、ダメですよそんなの」
「ダメじゃねェだろ大丈夫だろ。“恩人”まだ有効だろ」
「此処でその立場使わなかったらいつ使うってのよ」

少なくとも今此処でこんなことで使うべきでないことだけははっきり分かる。

「ど、何処にいるか分かんないですし、」
「残りの麦わらの一味と来たってんならそいつらといるだろ。“右腹の森”の隠し砦」
「これから暗くなりますし!」
「今から出ればまだ間に合うわよ。なんならミンク族の誰かに一緒に着いてって貰えるよう進言するわ」

しどろもどろでなんとか言い訳を捻り出すが綺麗にホームランで打ち返されてしまう。
なぜそんなにもやる気満々なんだあなた達は…!

「………ど、どんな顔して会ったらいいか、…分からなくて」

搾り出すようにして出てきた声は、自分のものとは思えないほどにか細くて、届いたかどうかすら怪しかったのにしっかりと彼らは動きを止めていた。
みるみるうちに顔に熱が集まってくるのを自覚する。
同時に2人の視線もだ。
ああ、暑い、熱い。

「いやちょっ………と待って?」
「ねえやっぱりキャプテンに名前は勿体無いと私思うんだけど」
「いや逆ですそれイッカクさん」
「逆じゃないわよこんなに可愛いうちの子を!キャプテンになんて!」

ペンギンさんは顔を両手のひらで覆い隠して俯いたまま動かなくなってしまったし、イッカクさんに至っては泣きそうな顔で私を抱きしめて頭を撫でくりまわし続けている。

「…キャプテン早く来てやってくんねえかな」
「ペンギン、こうなったら準備が必要じゃない?」
「それもそうだな。いつ来てもいいようにそろそろ始めるとするか」
「準備ってなんの、」
「我らがキャプテンの長い長い出向からのお帰りだ。それ相応にお出迎えには準備がいるだろ」
「…?」

にっこり笑った2人に首を傾げる私だが、すぐに「準備」とは何かを思い知らされる事となる。