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いつもの5倍は重たく感じる食堂の扉を開け、頭だけ中に入れてニコニコ…いやニヤニヤしているたんこぶ4人組を睨みつける。

「何ですかこれ」
「そんなこと言いながら着てくれてんじゃん!」
「入ってきて見せてよ」
「嫌すぎるんですけど…」
「大丈夫だって制服なんだから!ホラおれらと一緒!」

どこが一緒だ。
これは断じて制服とは認めない。
だって認めたらずっとこれを着ていないといけなくなる。
そのうちに4人の中の1人が近づいていて、扉を一気に開け放った。

「「「ナイスハレンチ!!」」」

制服と銘打って渡されたのは俗に言うミニスカナース服だった。
鼻を押さえてグーサインを出す残り3人(+α)を確認しながら、今後は先生にだけ忠誠を誓おうと遠い目で心に決める。
ナースキャップとナース服は全体が真っ白い生地で出来ており、胸元が大きく開いている。
かなりぴったりとしたデザインで、何とか押し込んだ胸がキツい。
スカート丈はとんでもなく短いのにそれに加えて小さくスリットまで入っていた。
極め付けはガーターベルト付きの網タイツ。
一体どこで買ってきたんだこんなもの。アダルトショップか?

「いややっば…破壊力やっば…」
「その格好でお注射されたい…」

男って生き物は本当に…
ハレンチ云々は置いておいたとしてもこんな非効率的な格好で仕事できるはずがないだろう。
ナース服がいかに動きづらいものであるかを全く分かっていない。
昨今普通のナース服ですら廃れかけているというのに…
そんなにお望みならお注射してやるよ。頭の。

「キャプテン見て見て!」
「白衣の天使っす!」

気がついたら4人のすぐ横に私が忠誠を誓うと決めた先生が立ってこちらを見ていた。
いや気まず…こういうノリ、あんまり得意には見えないんだけど…
そのままツカツカと近付いてきて目の前に立ったと思いきや、完全に品定めの視線でかなり無遠慮に上から下まで眺めてくる。

「……」
「あ、あんまり見ないでもらっていいですか」
「…名前お前、こういうのが好きなのか」

…は?

「どこをどう見たらそう見えるんですかこういうのが好きなのはそちらでしょ!」
「一緒にすんな」
「どの口がその否定をするんですか…?」
「いや、だがまあ…分かった」

な に が!
憤慨する私を素通りし、食堂を出ていく先生。
ただ取り残された私はたんこぶ4人組にご機嫌取りをされながら、不機嫌な気持ちのままお腹を満たすのだった。

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ご飯とお風呂を済ませ、部屋に戻る。
あのナース服どうしてやろうか。
今後着る気は微塵もないが直ぐに捨ててしまうのも勿体無い気がしてしまう。
着ないなら勿体無いも何もない、と言われてしまうとそれまでだが。
これ見よがしに雑巾にでもしてやろうか。
すると、

「ん?」

ベッドの上に見慣れない包みがあることに気付く。
持ち上げていろんな方向から観察してみるが、名前やメッセージなどが付いている形跡もない。
これは私宛…でいいのだろうか。
部屋の中にわざわざ置かれてるってことはそういうことだよね?
まさか忘れ物な筈も無いし。
とりあえず開けてみて、違ったら考えよう。
さっきのトラウマ的デジャヴを若干感じつつも、包みを開く。
そこには、

「…!これ、」

新品の医療用スクラブが2種2枚ずつ、全部で4組入っていた。
片方は鮮やかな黄色地に黒の、もう片方は黒地にオレンジのステッチやパイピングが入っているもの。
袖や裾の色形が違ったり、頭から被るタイプとジッパーの前開きタイプだったりとどちらとも微妙にデザインが違う。
だがどちらとも、左胸と背中に大きく、先生やみんなの服、艦体に入っているのとおんなじハートの海賊団のシンボルが入っていた。

「これ…」

きっと先生の仕業だ。
こっそり用意してくれていたのだろうか。
さっきの謎の観察やら謎の台詞はもしかして確認せずスクラブを用意したことへの不安の表れだったのかな。
そう考えるとなんだかこっちがむず痒いような気持ちになって、真新しいスクラブに顔を埋める。
そうだ、試着してみよう。黄色い方を広げて頭から被り、袖を通す。
サイズも申し分なく、動き易い。
なんだかさっきから頬が緩んで止まらない。
本当の意味で一味の仲間になれた気がするなあ。
ふふ、と1人微笑んでいると大きく揺れた艦体。そうか、出港だ。
明日にでもそれとなく先生にお礼言わないと。

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「あ!名前何その服!」
「えへ、似合いますか?」
「すっごく似合ってる!素敵だね!」
「ありがとうございます。ね、先生」
「……あぁ」

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スクラブはローの2年前・2年後初登場時の衣装に寄せたデザインで考えてみました。イラストとか描ければいいんですけど描けないので各々脳内補完してくださいませ。アダルトなナース服は白ひげの船に乗っていたナースちゃんたちの白バージョンを想像していただければと思います。