歩くにつれ、だんだんと市民の人通りが減ってきた。
代わりに見た目のイカつい人物が目につくようになる。
樹の番号を見れば「26GR」。いつの間にか20番台に突入していた。
この辺りからもう要注意ゾーンなのであろう。
あっちからこっちから悲鳴混じりの騒いでる声が聞こえてくるのも気のせいではない。
改めてベポさんの手を握りなおす。
「そうだ名前、これ頭に入れといて」
ベポさんが空いている方の手で何か紙の束を手渡してきた。
「何ですかこれ?」
「今この島にいる海賊の手配書」
「手配書…?」
見れば、茶色い紙のど真ん中にでっかく、よく知った顔。
写真の下には「DEAD OR ALIVE」「TRAFALGAR・LAW」「B200.000.000-」の文字列が。
この名前の下の数字は…
「これね、懸賞金。キャプテンの首にかかってる金額だよ」
「け、」
懸賞金という単語をこんなナチュラルに聞くことになるとは…
え、先生ってそんなにしっかり追われてる身なの?
こんな悠長にしてて大丈夫?この島海軍いるんだよね?
手配書と先生の後頭部を何度も見比べてしまう。
しかも恐るべきはその金額…いち、じゅう、ひゃく、せん、まん、じゅうまん、ひゃくまん…
「に、におく…?」
「そう!」
ベポさんは嬉しそうに笑うが、嬉しそうに笑ってる場合ではなくないか。
相場はわからないが、手配書が出るほど危険視され、さらには2億の懸賞金をかけられている海賊のもとにいたのか…と今更ながら震える思いだ。
要約するとめちゃめちゃ悪いやつだと思われてるってことでしょうこれ。
「す、すごいですね…?」
「でしょ!今この島に集まってる中でも上の方なんだ」
でしょうね!
ベポさんが横からペラペラと紙を捲っていく。
当たり前だが知らない顔ばっかり。女の子もいるようだ。
これが誰でこれが誰で、と教えてくれるが覚えられる気がしない。
とりあえず見かけたら隠れよう。基本みんな顔怖いから。
「…ーそれでこれがモンキー・D・ルフィ」
ぺらり、最後に現れた麦わら帽子の彼。
まさかの出来事に目を見開く。
つい手に力が入り、手配書にくしゃりと皺が寄った。
「?どしたの名前」
「……いえ、なんでも…」
さすがの私でもこの人物はわかる。
この人って、「ワンピース」の主人公の…
彼も懸賞金をかけられているのか。
しかも先生よりも金額が高い。
こんな邪気の欠片もないような顔して相当悪どいことをしてきたんだろうな…
先生みたいなタイプなら分からなくもないが…
ちらりと見やると目があったので慌てて逸らす。
彼は邪気に敏感すぎると思う。
歩きながら、今得た情報を整理する。
一気にいろんな情報が雪崩れ込んできて恐ろしい気持ちでいっぱいだが、むしろこれで私があまりビクついていると先生の沽券に関わる気がする。
ハートの海賊団のシンボルを背負っているからにはできる限り毅然とした態度で、堂々としなくては。
…ただ怖いものは怖いのだけど。
ベポさんにくっつくようにして歩いていると、一つの建物が見えてきた。
あまり新しくは見えない上に何処となく小汚いが、やけに人が集まっているようだ。
進行方向的には私たちもそこを目指しているみたいだけど…
入り口の上には、寂れた看板に「HUMAN」の文字。
「人」だよね、HUMANって。人って書いてある建物って何…?
怪訝に思いながらも、建物の中に入っていく先生の後に続く。
垂れ幕をくぐると、奥にステージ、それをすり鉢状に囲むような形で客席が。
中も結構な盛況だ。空いている場所はもうちらほらとしかない。
…サーカスか何か?
中程の席に座る先生に合わせ、席に着くみんな。
私はベポさんとシャチさんの間に入れさせてもらった。
一体何が始まるのか…こっそりキョロキョロしていると急に会場の明かりが落ちる。
爆音の音楽、スポットライトと共に1人の男が板上に現れた。派手に始まった興行。
改めれば、私はこの時点で既にこの後開催される興行がなんなのかは何となく予測がついていた。
「人」と書かれた看板を掲げる建物、見世物小屋のような内装、加えてここは最も治安の悪い「1番
ただどうしてもそれを受け入れたくなくて、そんなことある筈がないと白を切って、何も分からない、何にも気づかないふりでやり過ごそうとしていたのだ。
そんな甘い話がこの世界で通用するはずがないことは、分かっていたはずなのに。
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