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ある夜。
ペンギン、シャチの2人はローに呼び出され船長室へと向かっていた。
それぞれ詳細は分からずとも長年の仲により様々な作戦の主力とされている自負はあった為に、今後の作戦についてであろうことは大方予想がついていた。
扉を開け、中に入ると椅子に腰掛けたまま振り返るロー。
相変わらず何か書類仕事は抱えているようだったが、その手を止めて2人にある話を切り出した。

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翌朝、食堂に全クルーが集められた。

「七武海に入ろうと思う」

突然の話に困惑する者、驚きから微動だにしなくなる者、そもそもそれが何かわかっていない者。
三者三様な反応を前にしながら、ローは言葉を続ける。

「その為に幾つか作戦を考えている。まずは、ーー…」

すらすらと作戦が告げられていき、次第に全員がそれに聞き入る。
流石は一船の船長と言うべきか、綿密に組まれた隙のない作戦に頷かざるを得ない面々。
そもそも七武海は海軍などと同様にその他大勢の海賊の抑止力となる存在であるため、「強さ」と「知名度」が必要となるもの。
足がかりは既に得ているものとは思うものの、さらにもう一押しするための今策。

それが何を間違ったかーーいやある意味はじめから間違えてしまっていたのだがーー結果として想定通り七武海には成り上がれたものの、想定以上に世に名を売るきっかけとなり、「ロッキーポート事件の首謀者」などと呼ばれるようになってしまったのはまた別のお話。

ーーー

先生が妙なことを言い出した。

「七武海に入ろうと思う」

はてシチブカイとは何ぞや、と思考を巡らせる。
シャボンディ諸島で出会ったビームを出す大男(機械)の名前として記憶していたがどうもそうではないらしく、世界政府によって海賊行為を公認された海賊のことをそう呼ぶらしい。
政府側から依頼されて加盟する場合が多いようだが、こちらから働きかけて加盟することもまた可能らしく、そのために今回の作戦を練ったと。
個人的には作戦自体がどうこうと言うよりも、今まで眼中にもなかったはずの「七武海」と言う立場に急に興味を示し出したのが気になってしまう。
わざわざ入りたいと言うからには、何か理由があってのことなんだろうけど…

「名前ちゃーん、今日はおれと組手しようぜ」
「はい、お願いします」

私はといえば、最近は専ら鍛錬に励んでいる。
先生の七武海加盟宣言からというもの、こまめに島に停泊するようになったのだ。
大きくて沢山人が住んでいそうな島へ行く事もあれば、あまり栄えていないような島へも。
今後の情報収集のためのようで先生は毎回数人のクルーを引き連れて島の内部へと出かけていくが、私個人としては何もやることがない。

というのも何故か停泊しても船の近くから決して離れるなと先生から釘を刺されているのだ。
それも私だけ。
誰かと一緒でもダメなんだって。
先生についていくのもダメなんだって。
自分は出かけるくせになんでよ。
そんな私を見かねてみんながお土産を買ってきてくれるのだが、そうじゃない私は色んな島を見て回りたい。お土産は貰うが。

そこで、ただ手持ち無沙汰になるだけなのはつまらないと以前からペンギンさんとベポさんにお願いしていた修行を色々な人にお願いして、色々な攻撃パターンに対応できるようになるべく日々精進中なわけだ。

何とも好都合なことに、色々な島を転々としている故に春夏秋冬様々な気候の中で修行が出来る。
秋の次に春が来たり、春の次に冬が来たりとこの海は本当にしっちゃかめっちゃかだなぁと感じるが、そのお陰で雪が積もっている場合に注意すべきことや、灼熱の中で上手く体力を持たせる方法なんかも皆さんが教えてくれるのだ。
先生はそんな私を見る度に「無理するな」と溢すけれど…
高い場所に行こうと言うのならますますそんなことを言っている場合ではない。
私の身に及ぶ危険から自分で身を守ると言うのは勿論であるが、ある程度は自分で戦えないと。
そんな人の部下であるならば、だ。

幸い続けていくうちにメキメキと上達しておりクルーの皆さんと遜色ない…は言い過ぎだが、それなりにはなれてきている、と思う。
今日もたどり着いた人気の少ない島の裏手…船を停めたすぐ近くの空き地で、手が空いたというシャチさんと組手する。
流石にシャチさんには手加減してもらわないと追いつくこともできないが…最初よりだいぶマシだ。

「名前ちゃんも強くなったなー、今いろんな奴に鍛えてもらってんだろ?」
「はい、皆さんに手を貸してっ、いただいて、ます!」
「そりゃいいことだな!」
「はいっ、!」

こうして手合わせ中に会話ができるくらいにはなった。
やればやるほど身についていくので大変ではあるがそれ以上に面白い。
若いって素晴らしいね。

「名前ちゃんはよく足が出るよな」
「足、ですか」

組手を終わらせ、一息ついたタイミングでシャチさんにそう言われる。

「あんまり良くないですか?」
「いや、むしろ最近こういうこと始めたばっかなのによくあんないいタイミングで蹴りが出せるなと思って感心してんだよ。しかもちゃんと相手にダメージを与えられる蹴り」
「そうですかね、自分だとよく…」

足、か。
ふむ、と地面に座るため伸ばされている自身の足を見やる。
昔から手が塞がっていれば足でものぐさなことをすることが多く、女の子なのに足癖が悪いと親に怒られた経験が多々ある。
それは成長してからも同じで、むしろオペ前などでは基本手は清潔を保っておきたいためものぐさにものぐさを重ねたような足癖の悪い行動ばかりしていた。
決して足癖の悪さイコール蹴りの強さに繋がるとは思わないが、足を使いがちなのはそのせいかもしれないな、と何やら少し腑に落ちた。
初めてここで戦い方を教わった時も決まりはしなかったがトドメとして自然に出てきたのは上段回し蹴りだったし…
今ではそれも卒なく熟せてしまう。
足技極めるのアリかもな。腕よりリーチもあるわけだし。

「何かヒントをもらえた気がします。ありがとうございますシャチさん」
「いいってことよ。じゃあま、怪我しないようにとおれは超えないように」
「善処します」

くすりと笑って立ち上がる。
ちょうど、島の中に出かけていた先生たちも戻ってくる頃合いだ。
昨日読んでいた本の中で先生に質問したい部分があった。
忘れないうちに聞いておかなければ。
汗を拭きつつ、本を取りに部屋に戻った。