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先立って様々な島で集めてきた王下七武海加盟の為の駒…基海賊達の心臓。
当初の予定通り無事に100個収集が完了し、無事に海軍本部へと届けられ、ハートの海賊団船長トラファルガー・ローは無事に王下七武海の名を冠することとなった。
そうして“新世界”において航海している途中、最初に打ち立てられ、ローからクルーに向かって告げられた次の目標。

「ドフラミンゴを討ち倒す」

静かに告げられたその言葉でクルーが静まり返るが、名前は1人、困惑する。
どういうことだかまるで分からない。
そもそもドフラミンゴって何。誰。
説明を求めて名前がイッカクと目を合わせると、戸惑いを隠しきれぬまま名前へ大まかな情報が伝えられる。

ドンキホーテ・ドフラミンゴ。
彼と同じ王下七武海の1人である海賊だ。
ドンキホーテ海賊団の船長で、ドレスローザという国の国王も兼ねているらしい。
何故急にそんなことを言い出したのか、理由は尋ねてもローはただはぐらかすのみ。
かなり唐突な話ではあったが、数人のーーハートの海賊団最古参である3人は、何やら合点が行く思いであった。
ここ最近の様子がおかしかったのは、この作戦の為か、と。
ひいてはその作戦第1号として、一行は「パンクハザード」という政府所有の無人島へ向かうこととなった。

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「政府所有の島ってことは私たち入れないんじゃないですか?」
「その為に王下七武海に加盟した。まぁ、意味はないかもしれねェが」
「あー…」

成程。
色々性急すぎると思っていたが、そういうことか。

「そこで何を?」
「情報を集める。長期戦になるかもな」
「じゃあ暫く先生にはお会いできないんですね」
「そうなるな」

事もなげに言うが、船長の長期不在ってあんまり良くないんじゃないか。
どうしようもないことではあるが…

話は戻るが、パンクハザードへは先生が1人で潜入するという。
勿論クルーからは猛反発があった。
が、物分かりの悪い私たちに対して苛立った先生から発せられた「船長命令」という従わざるを得ない単語に無理やり鎮圧され、しょうがなしに納得させられているのだ。
先生が気付いているのかどうかは知らないがパンクハザードに向けて航海中の今、みんなの雰囲気がそのせいでとても暗い。
お通夜かよというレベルだ。
“新世界”という、まだまだ勝手がよく分からない環境において己らのボスをただ1人置き去りにすると言うのは、なかなかどうして気が進むものではない。
それに常に顔を合わせていた相手が1人でもかけると言うのはやっぱりちょっと…

「寂しいか?」

フン、と鼻で笑う先生。
前言撤回。寂しくなんかない。
というか何も言ってないですけど。

「いーえ?清々します」
「よく回る口だな」

素直じゃねえ、と吐き捨てる先生だが、むしろよくもそんなに自信満々でいられるものだ。
他のみんなが自分のこと大好きだからって、私までも貴方のことが大好きだと思うなよ。
みんなの愛され船長め。

そうしてたどり着いたログの取れない島は、半分はマグマが湧き燃え盛り、半分は凍りつき吹雪いているという訳の分からない島であった。
凍りついている側に艦を停め、先生が1人島に降り立つ。

「交渉してくる」

それだけ言ってKEEP OUTの看板が提げられた寂れたフェンスを能力で超え、内部に侵入していく。
交渉してくるって…無人島なんじゃないのかここは。
荷物は全て置いて行っていたため、凍える寒さの中全員が甲板で、そわそわ落ち着かない気持ちのまま一旦の帰艦を待つ。
コートも無しでめちゃくちゃ寒いので正直中で待ちたいところだが、みんな気が気ではないようで動かない。
ベポさんなんか不安に感じすぎて泣きそうなので背中を摩って慰めているほどだ。

「キャプテンはおれたちのこと…信用してないのかな」

ぽつりとベポさんが呟いた。
交渉失敗しろ…という誰発祥かわからない呟きさえも聞こえてくる。
そうまでは思わないが不安は不安だよね、そりゃ。
眼前に広がる凍った大地を凝望する。
1人で滞在すると言った島がもっとノーマルな島であればみんなここまで不安にはならなかったと思う。

「そんなことないです…むしろ信用してるから、だと思いますよ」
「…から?」
「はい。信用していないのなら、己1人がここを離れて後はよろしく、なんてできないはずです。信用されてるから、私たちは先生不在の艦を任されたんですよ」

ベポさんを私流の解釈で宥める。
みんなの気持ちは至極尤もだ。
こんな訳のわからない島に先生1人で…しかも結局無人島ではないようだし…
いくら先生が強いということを皆了知しているとはいえ、こんなところでは何が起こるかわからない。
それにマリンフォードでの戦争あたりから、時折先生が思いつめたような顔をしていたのがずっと気にかかっていた。
あの表情の理由が今回の件に何か関係しているとしたら…今、彼を1人にすべきでは無い。

不安な気持ちがどんどん膨らんで、とりあえず一旦顔を見せてくれ、とみんなが強く思った時。
目の前に“ROOM”が広がり、あ、と思った時には先生が現れた。
瞬時に全身目視で怪我を確認する。
が、行った時と何の変わりもない。
ひとまず交渉が殴り合いに発展した様子ではなさそうだ。

「キャプテン〜!!」
「こんなところで待ってる必要は無かっただろうが」
「だって心配すもん!」

まだ離れてから30分と経っていないのにこの調子だ。

「で、キャプテン。交渉は…?」
「うまく行った。おれはこのまま残る。お前らは伝えた通り「ゾウ」に向かえ」

途端にみんなの顔が引き締まった。
とうとうお別れのようだ。

「が、変更点が1つ」
「なんでしょう?」
「名前」
「はい」
「お前は俺とここに残れ」
「え」

なんだって?