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世に名を残す事件となってしまったロッキーポートでの件の後、無事に海軍本部へと届けられた海賊達の100個の心臓。
それを以てハートの海賊団船長トラファルガー・ローは無事に王下七武海の名を冠することとなった。
そうして“新世界”において航海している途中、最初に打ち立てられ、ローからクルーに向かって告げられた次の目標。
「ドフラミンゴを討ち倒す。その為次はパンクハザードを目指す」
静かに告げられたその言葉でクルーが静まり返るが、名前は1人、怪訝な顔をする。
どういうことだかまるで分からない。
そもそもドフラミンゴって何。誰。
説明を求めて名前がイッカクと目を合わせると、戸惑いを隠しきれぬまま名前へ大まかな情報が伝えられる。
ドンキホーテ・ドフラミンゴ。
彼と同じ王下七武海の1人である海賊だ。
ドンキホーテ海賊団の船長で、ドレスローザという国の国王も兼ねているらしい。
また並んで挙げられたパンクハザードというのは政府所有の無人島のこと。
そこにローが1人潜入し、他クルーは先に「ゾウ」という島を目指すように言い渡された。
全てが寝耳に水で、一同はひどく困惑をする。
「え…キャプテン1人別行動ですか?」
「そうだ」
「いつまでです?」
「さぁな…まだなんとも言えねェ」
「何のために!?」
「いくらキャプテンが強いからと言っても“新世界”の島に1人置いていくなんてできねぇよ!」
1人がそう声をあげると、そうだそうだと口を揃えて反対し始めるクルーたち。
この男がクルーに大した相談もなく重要な局面を1人で決めて乗り切ってしまうことは珍しいことではないが、こればっかりは説明が欲しかった。
何故慣れない場所に我らがキャプテンを置き去りにしなくてはならないのか。
何故同行を許されないのか。だがそう口々に責め立てたところで結果は同じ。
「どうしたもこうしたもねぇ。これは船長命令だ。つべこべ言わず従え」
そう突っぱねられるだけであった。
最近続いているローのおかしな様子といい、頑なに別行動の理由を言わないところといい、クルーの中では悶々と疑念が募る。
「…ね、キャプテンなんであんなこと言ったと思う?」
「ほぼ確実に1人で危ないことしようとしてるよな」
「おれらが不甲斐ないから…」
「違う、おれらに火の粉がかからないようにしてくれてるんだよ」
「マジで1人で行かすの?」
「万が一なんかあったら新聞で自分達のキャプテンの訃報を知るのか?あり得ないだろ」
「どうにかして誰かを同行させたいよな」
「誰なら自然に同行できるかな」
「潜入の仕方にもよるか…」
着々と目的の島に近付きつつある間にも、ローの目を盗んで顔を突き合わせてはそんな話ばかり。
やがては名前の耳にも秘密の会議の内容が届く。
ーーー
「先生がまさかそんな…」
「いや、別に本人に聞いたわけじゃねえから確定ではねえよ?」
「ただ今までの傾向から考えてその線が一番濃いんだよ」
ここ最近密かに船内を騒がせている先生の別行動宣言。
1人だけでも連れて行ってくれと言っても拒否をされ、ならば何故別行動をと聞いてもはぐらかされる。
理由だけでも教えてくれれば良いものを、何をそんなに隠しているのか。
戦争の後あたりから、時折先生が思いつめたような顔をしていたのは思い過ごしではなかったようだ。
本当にただ1人で行動するだけならいざ知らず、危険なことをしようとしている可能性があるとなれば話は別と、なんとしてでも一緒に潜入しようと極秘会議を白熱させているみんなを見ていると私も混ざらざるを得ないわけで。名誉なことに特攻隊長に任命された私は先生の元へと足を運んだ。
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質問ついでに入り浸っているいつもの先生の部屋の扉をノックし中へ。
今回もカモフラージュに本を手にしながら、こちらの疑問のキリがついた頃にそれとなくくだんの話題を持ちかけた。
「パンクハザードって政府が所有している島って聞きましたけど、入れないんじゃないですか?」
「その為に王下七武海に加盟した。まぁ、意味はないかもしれねェが」
「あー…」
成程。
近頃色々と性急すぎると思っていたが、そういうことか。
要は七武海の称号が貰えるか否かよりもその島に入れるか否かの方が重要だったわけだ。
「そこで何を?」
「情報を集める。恐らくは長期戦になるだろうな」
「じゃあ暫く先生にはお会いできないんですね」
「そうなる」
事もなげに言うが、船長の長期不在ってあんまり良くないんじゃないか。どうなの、そこんところ。
“新世界”という、まだまだ勝手がよく分からない環境において己らのボスをただ1人置き去りにすると言うのも、なかなかどうして気が進むものではない。
それに常に顔を合わせていた相手が1人でも欠けると言うのはやっぱりちょっと…
「寂しいか?」
フン、と鼻で笑う先生。
前言撤回。寂しくなんかない。というか何も言ってないですけど。
艦内全体がお通夜テンションなのは認めるが、私が寂しいなんてそんな…
そんなこと言ってないし。
「いーえ?清々します」
「よく回る口だな」
可愛くねェ奴、と吐き捨てる先生だがむしろよくもそんなに自信満々でいられるものだ。
他のみんなが自分のこと大好きだからって、私までも貴方のことが大好きだと思うなよ。
みんなの愛され船長め。
そうしてたどり着いたログの取れない島、パンクハザード。
半分はマグマが湧き燃え盛り、半分は凍りつき吹雪いているという訳の分からない島であった。
凍りついている側に艦を停め、先生が1人島に降り立つ。
「交渉してくる」
それだけ言ってKEEP OUTの看板が提げられた寂れたフェンスを能力で超え、施設内部に侵入していった。
交渉してくるって…無人島なんじゃないのかここは。
荷物は全て置いて行ったため、凍える寒さの中全員が甲板で、そわそわ落ち着かない気持ちのまま一旦の帰艦を待つ。
コートも無しでめちゃくちゃ寒いので正直中で待ちたいところだが、みんな気が気ではないようで動かない。
ベポさんなんか不安に感じすぎて泣きそうなので背中を摩って慰めているほどだ。
「キャプテンはおれたちのこと…信用してないのかな」
ぽつりとベポさんが呟いた。
交渉失敗しろ…という誰発祥かわからない呟きさえも聞こえてくる。
そうまでは思わないが不安は不安だよね、そりゃ。
眼前に広がる凍った大地を凝望する。
1人で滞在すると言った島がもっとノーマルな島であればみんなここまで不安にはならなかっただろう。不安を煽るのに十分すぎる風景だ。
「そんなことないです…むしろ信用してるから、だと思いますよ」
「…から?」
「はい。信用していないのなら、己1人がここを離れて後はよろしく、なんてできないはずです。信用されてるから、私たちは先生不在の艦を任されたんですよ」
ベポさんを私流の解釈で宥める。
みんなの気持ちは至極尤もだ。
こんな訳のわからない島に先生1人で…しかも結局無人島ではないようだし…
いくら先生が強いということを皆了知しているとはいえ、こんなところでは何が起こるかわからないし…今、彼を1人にすべきでは無い。私でもそう感じるくらいには最近の彼の様子は不穏だから。
先生が施設に入っていって10分、いやそんなには経っていないだろうか、とりあえず一旦顔を見せてくれ、とみんなが強く思った時。
目の前に“ROOM”が広がり、あ、と思った時には先生が現れた。
瞬時に全身目視で怪我を確認する。
が、行った時と何の変わりもない。
ひとまず交渉が殴り合いに発展した様子ではなさそうだ。
「キャプテン〜!!」
「こんなところで待ってる必要は無かっただろうが」
「だって心配すもん!」
「で、キャプテン。交渉は…?」
「うまく行った。おれはこのまま残る。お前らは伝えた通り「ゾウ」に向かえ」
途端にみんなの顔が引き締まった。
とうとうお別れのようだ。
「が、変更点が1つ。名前」
「はい」
「お前は俺とここに残れ」
「え」
なんだって?