先生たちが入れられた檻はバッチリ映されているが、外にあった軍艦が何故か発火しており、その煙で中の様子が窺えない。
檻の中の皆さんは、先生は、無事なのか。
次第に砂煙のような音がして、モニター映像が真っ白く染まる。
外にある映像電伝虫もあの"シノクニ"と呼ばれる煙に包まれたのだろう。
暫く経って、電伝虫を包み込む灰の殻が叩き割られ、全島の様子が映し出された。
そこは恐ろしい毒ガスがそこかしこまで充満している、正しく「
あまりの凄惨さに息を呑む。
「麦わら達は!?ローは!?スモーカーはちゃんと死んだのか!?」
檻自体も白い殻で覆われてしまい、中の様子が分からない事に憤るシーザー。
結局どうなったの…?
上手いこと脱出できたのだろうか…
と、
「M!!」
私がいるところとは違う扉が勢いよく開き、兵士さんが息を切らせて報告する。
「海賊“麦わらのルフィ”を筆頭に敵全員が研究所内A棟ロビーに侵入!さらに奥へと動き始めました!!」
「んなァアにィイ〜〜〜〜!!?中へェ!!?」
その報告は、私にとってなによりも嬉しいものだった。
ルフィさんが逃げ果せたということは、きっと先生も一緒だ。
敵全員とも言っていた。
その中に彼がいないはずがない。
安堵に力が抜けそうになるのも束の間、チョッパー先生が猛ダッシュで帰ってきたのを見て気を引き締める。
「(行くぞ!)」
足を止めずに駆け抜ける彼の後を追う。
「(見つかりました?)」
「(あった!これで本当に完璧だ!)」
私の方を見てにっと笑うチョッパー先生。
なんだか私たちにとって、追い風が吹いているようだ。
「(今度こそ子供達の治療へ!)」
「(あぁ!)」
---
「子供達は恐らく子供部屋にいるかと思います」
「いや外だ!さっきおれ達が連れ出したんだよ」
「外!?」
あの地獄絵図…
そうか、チョッパー先生はノートのページを探していて見ていないかもしれない。
「外はもうガスが、」
「分かってる…でもきっと間に合う!一旦中へ連れ戻して、そこで治療しよう」
「、はい」
となれば向かう先はひとまず外に繋がる扉だ。
こっちの方には連れてきてもらったことがないがきっと何処かに…
「助けてぇ〜〜!!」
その声に、チョッパー先生と私が同時に反応する。
ガンガンと鉄を叩く音も聞こえる。
「怖いよ、出してよ〜〜!!」
間違いなく子供の声だ。
中まで戻ってきていたのだろうか。
「チョッパー先生行きましょう、この上です!」
目の前に現れた階段を指差す。
「…チョッパー先生?」
「…なんで子供がここにいるんだ……!?」
「…え?」
「お兄ちゃん、お姉ちゃん、助けて〜〜!!ここから出して〜〜!!」
困惑するチョッパー先生。
止まない子供の声。
「と、とにかく行きましょう!」
「わ、かった、そうだな!」
止まってしまった足を再度動かして、急いで階段を駆け上がる。
その上には、外に繋がっていそうな扉に張り付き泣き叫ぶ女の子と、それを取り囲む兵士さんが。
「
駆け寄ろうとした時、隣で突然巨大なゴリラ化したチョッパー先生。
呆気に取られているうちに兵士さん達を薙ぎ倒してしまった。
彼も能力者…!?
ただのもふもふかわいいお医者さんでは無かったのか。
「大丈夫か!?」
「…っ、化け物ォ!!」
チョッパー先生は女の子を身を案じて声をかけるが、彼女は何かとんでもないようなものを見てしまったような顔をしてそう叫び、また暴れ始める。
先程から気にはなっていたがこの錯乱しているような様子、これは…
「禁断症状か…落ち着け!」
「チョッパー先生!鎮静剤を!」
「よし、押さえるから打ってくれ!」
チョッパー先生が扉を叩いて泣き狂う子供の背後を取り、リュックから取り出した鎮静剤を彼女に投与する。
次第に落ち着きを取り戻した彼女は、ゆっくりと辺りを見渡した。
「あたし…今まで何を、」
「お前、ここの扉を叩いてたぞ?」
「そうだあたし…ここから出ようとして…」
「なぁ、折角助け出したのにお前なんでここにいるんだ?」
「あたしたちは…“M”が用意してくれた空飛ぶガス風船で研究所に戻ってきたの。でもお兄ちゃんとお姉ちゃんが研究所に戻っちゃダメだって」
「当たり前だよ…!他の子供達は?」
「みんなビスケットルームに向かったよ?そこには“キャンディ”があるから…」
「何…!?」
それを聞いてチョッパー先生と私は血相を変える。
この子達はシーザーの異常さには勘付いていてもキャンディが有害なことは知らない…!
「駄目だよ!そのキャンディを食べちゃ!」
「え…?」
「大変だ…!」
チョッパー先生が女の子の肩から飛び降り、ビスケットルームまでの道を問う。
「着いてきて!」
私たちの顔を見てただ事ではないと子供ながらに察したのだろう。
近道を知っているという「モチャ」と名乗る子供の先導で、来た道を辿りだす。
途中、先程通った道とは違う、角を曲がった先を指差した。
「ビスケットルームはこの先だよ!」
「急ぐぞ!」
そちらへ向かおうとしたその時。
背後突き当たりの半開きになった扉の方から微かに声が聞こえてきた。
「ビスケットルームはこっちだ!」
「キャンディちょうだい…」
「キャンディ…!」
他の子供達が到着してしまったようだ。
咄嗟に飛びついて、半開きの扉を閉め切る。
チョッパー先生も一緒に押さえてくれた。
「モチャ、友達を助けたいなら手伝ってくれ!」
「うん、分かった!」
健気なモチャは扉半分に体重をかける。
扉の向こう側には、すぐ子供達が到着したようで開けろと叩く振動と声が伝わってきた。
「モチャ開けろー!」
「ビスケットルームへ行くんだ!」
「ひ、」
「大丈夫、怖がらないで」
近くにあったかんぬきを取手に差し込んで、モチャの隣で一緒に扉を押さえる。
「絶対にビスケットルームへ行かせてはダメだぞ…!」
「、うん…!」
依然として止まらない外からの衝撃。
ずっと仲良くしてた友達がいきなりこんなことになったら怖いだろうな…