「よかった来てくれたのか…!おれ達じゃもう手に追えなくて、」
「達?」
「そこにいるだろ、ローの仲間の名前だ!一緒に子供達を止めてたんだけど…」
「え?あ、あれ!?あんた、」
「すみません自己紹介は後でさせてください!まずは子供達を止めないと…この奥のビスケットルームに“キャンディ”があるんです!」
「え!?」
次々と子供達が雪崩れ込んでいく一室。
ビスケットルームは間違いなくあそこだ。
流れに乗って一緒に走っていくと、子供達の前に大きな手のひらが2つ現れる。
「“
先ほど先生と一緒に捕まっていた黒髪のお姉さんの能力のようだ。
物理的に子供達が先に進むのを止めてくれている。
「「モチャ」って女の子には鎮静剤を打つことができて、彼女は安定してるんですが…」
「今部屋で“キャンディ”を守ってくれてるんだ!モチャが危ない!」
「そりゃヤベー!こいつら手段選ばねェぞ!」
鼻が長いお兄さんがそういった途端、黒髪お姉さんが顔を顰めた。
地から生やした大きな手に、子供達が食らいついたようだ。
緩んだ防御を掻い潜った子供達は、その先でキャンディを抱えるモチャに駆け寄っていく。
「それキャンディだろ!」
「くれ!キャンディくれ!!」
モチャが大きな声を張り上げてみんなに訴えかけるが、叫び声や暴れる音にかき消されてしまう。
「ムダだ逃げろモチャー!!」
ようやくたどり着いたキャンディルームの入り口で、チョッパー先生の叫びすら届いたかどうか。
モチャはキャンディを抱き抱えたまま、反対側の出入り口に向かって走る。
でも開いていたはずの出入り口は白い壁で固く閉ざされ、そこにいたのは。
「何だ?ありゃ…」
「…モネ、さん」
「知り合いなのかよあの鳥女!」
「ここに来て長いので、」
見慣れた微笑みを湛える彼女に一瞬動揺してしまうが、もとよりこうなる運命だった。
改めて気を引き締める。
「じゃあおれ達はここで!」
「ええ、必ずまた落ち合いましょう!」
麦わらの一味のうち数人が違う道を走り出す。
何か他の作戦も並行しているのだろう。
モチャを追い、先に飛び出したポニテビキニのお姉さんの後を追うようにビスケットルームに足を踏み入れれば凄まじいまでの吹雪が吹き荒れる。
なんでここ…建物の中なのに…!
「ウフフ、言ってなかったかしら…私はユキユキの実の“雪人間”」
「、っぅあぁっ!!」
モネさんの声がすぐ後ろで囁かれ、振り返ろうとした瞬間に横っ腹を何か熱いものがすり抜けていく。
「、ちょっとあんた!大丈夫!?」
「っつぅ、う、」
私の絶叫を聞いたポニテビキニさんが足を止めて振り返り声を投げかけてくる。
いつもなら大丈夫ですと即答するが、今回ばかりは無理そうだ。
モネさんが持っている錐に脇腹を抉られたのだから。
膝をつき、あまりの痛みに呼吸が浅くなって気を失いそうになる。
それでも辛うじて手を伸ばして抉られた部分を服の上から手のひらで強く押さえるが、…ダメだ、こんなもので出血が止まるはずがない。
眼下の雪にぼたぼたと垂れた鮮血が染みていく。
「名前ったら…“また”がこんな機会だなんて、私悲しいわ」
「っどの口が…!誰のせいだと!!」
「あら、まだそんな元気があるのね」
私からは目を離さず、奥で子供達の足止めをしようとする黒髪のお姉さんに向かって錐を片方、ダーツのように投げ当てる。
それは肩を掠め、彼女を地に平伏させた。
「ロビン!」
「貴方達全員…邪魔しないでもらえるかしら」
再度私に向かって襲いかかってくるモネさん。
蠢くことしかできない私は、抵抗すらできない。
今度こそ私の体を貫くかと思えたその錐は、
ギィンッ!!
麦わらの一味の緑髪剣士さんによって止められた。
「敵は自然系!おれがやる!!お前らガキ共抑えに行け!!」
錐を刀で何度か弾き、一旦モネさんが引いたところで怪我を負った方とは逆側の腕を、ぐいと上に引っ張り上げられる。
「…!!っつぅ、」
「歩けんのか」
「た、ぶん行けます。行けるんで引っ張んないでください…!」
「そうか」
結果として立ち上がれはしたが無駄に痛い思いをさせられた気がする。
「お前も死にたくなきゃ早く行け」
「…はい」
なんか色々納得いかないがここで揉めるのも面倒なのでジト目で見るだけに止め、痛みを堪えて子供達の後を追う。
痛い。つらい。
その単語で脳内が占拠される。
本来ならば動けるはずがない怪我だろうが、こんなとこで立ち止まっている暇は私にはないのだ。
「…チッ」
え、何。
ジト目で見たのが気に障った…?
恐る恐る舌打ちの聞こえた方を振り返ると、抜き身の刀を手にしたまま此方に向かって走ってくる緑髪剣士さん。
いやちょっと待ってそんなに!?
「ごごごごめ「避けろ!」な……え?」
頭を庇いながら謝れば、すぐ横を走り抜けて行った。
な、何?
遅れて目で追うと、ポニテビキニさん達に襲い掛かるモネさん。
「残念」
「何弱ェの狙ってんだてめェ!」
ぎらりと光る錐。
防御があと一歩遅ければ…
「…!そこどいて!“
ポニテビキニさんが反撃を仕掛ける。
能力者…ではなさそうだがなんとも不思議な武器だ。
名の通り熱を持っているのか、モネさんの翼が溶け、するりと雪の中に逃げ込まれてしまう。
いつまでもこのままではないだろうが…今のうちだ。
ぶんぶんと棒を振り回しながら走っていくポニテビキニさんを筆頭に、急いでモチャを追う。
出口を通過する直前。
「!!」
「しまった!」
先程の白い壁。
モネさんの仕業だ。
姿が見えないが…何処に、
「わ!」
「ナミ!?」
俄に意志を持っているかのように自在に動き出した雪に、ポニテビキニさんの足が絡め取られた。
「冷たっ、動けない!」
みるみるうちにその雪はモネさんを形取っていくが、私のよく知るモネさんではない。
恐ろしい顔つきに鋭い牙、まるで本物の「
「ギイャアァア〜〜〜〜!!!」
それを目前にしたチョッパー先生は力の限り叫ぶ。
そりゃあそうだ、雪に埋もれてしまわないよう掲げられているせいでいちばん狙われる場所にいるのだから。
ものすごい勢いで噛みつきにきたモネさんから、間一髪でチョッパー先生を遠ざけるポニテビキニさん。
「
黒髪さんの能力のお陰でモネさんの体は崩壊し、なんとか危機を免れた。
ガラスの像が壊れたかの如く粉々に砕け散ったのにも関わらず、すぐにまたいつものモネさんに戻っていく。