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「ここか!?」
辿り着いた検査室。
入室し、モチャを静かにベッドに移す。
「まずは胃洗浄だ!準備を!」
「はい!」
急性中毒を起こし始めている今、一分一秒が惜しい。
近場にいたチンピラにも声をかけ、急いで準備を進めていく。
チョッパー先生は座ったままではあるが、チンピラに助けてもらいながら催吐剤を用意しているようだ。
「ごめんなモチャ、ちょっとちくっとするぞ」
優しく声をかけながら薬を静脈注射し、ベッドから頭だけ出す形でうつ伏せにさせた。
すかさず顔の下に大きな盥を差し出す。
「頑張れモチャ、全部出すんだ!」
「苦しいねモチャ、ついてるからね、安心していいよ」
必死で声掛けをしながらモチャの片腕にルートを取り、点滴を繋ぐ。
とにかく体内に残っている有害物質を取り出せるだけ取り出さなければならない。
何度か嘔吐した後に胃に管を入れ、水を流し込んでまた吐き出させる。
「ごめんな、辛いなモチャ、頑張るんだぞ!」
幼い子供相手に大人でもキツいこんな処置、本当はしたくない。
でもこれをやらないと命に関わる。
「大丈夫、お家に帰るんだもんね?大人になるんだもんね?モチャは強い、頑張れるよ大丈夫」
声をかけながら背を摩り、嘔吐を促していく。
ただ只管にモチャの救命措置に奔走する私たちを見るチンピラたちも、次第にモチャに声をかけ始めた。
その後何度か吐き、ずっと苦しげだったモチャの呼吸は幾分か落ち着きを取り戻してきたのを確認して一旦は胸を撫で下ろす。
だがゆっくりと休ませてくれるはずもない。
次は建物全体に大きな衝撃が走る。
どんだけ派手に暴れてるんだみんな。
「天井が崩れる!」
「チョッパーヤン!ここはもうダメだぜ!」
「うん!今やれる処置は全部終わった!急いでR棟へ!」
「よし来た任せとけェー!」
慌てふためくチンピラ達は再度モチャを担ぎ上げ、ドタドタと移動を開始する。
「モチャ、移動するよ。大丈夫だからね」
依然として瞼は閉じたまま開かないが、最初よりは顔色も良い。
このまま問題なく回復すると良いんだけど…
「そうだ、名前も腹を鳥女にやられてたよな!?今診るか!?」
モチャの上で揺られながらチョッパー先生が思い出したようにそう声を上げ、リュックの中身をあれこれ漁り出した。
「大丈夫ですよ」
「でも、」
「今はモチャが心配でしょう?この後先生とも落ち合いますし、ひとまずモチャに集中しましょう」
「…分かった、後で必ず診てもらうんだぞ!おれでもいいけど!」
「はい、必ず何方かにお願いします」
取り出されまくった荷物達を仕方無しに仕舞い込んでモチャへの声かけに戻るチョッパー先生。
こっそりとモネさんに抉られた脇腹を盗み見る。
ずっと考えないようにしていたが、改めて意識してみると火がついているのかと錯覚するほどに熱を持って痛みが1秒置くごとに増していく。
先程まで脳内麻薬物質で無理やり押さえ付けられていた痛みが一気に襲いかかってきた。
変わらず出血も止まっていないので本音を言えば早めに処置してもらいたかったところだが、私よりモチャの方が深刻だ。
先生と会えれば何とかしてもらえる。
そこまで耐えよう。
ああ、服もボロボロだ…先生に借りたものなのに申し訳ないな。
、?
突如としてぐるん、と天と地がひっくり返る感覚に陥る。
逆立ちしているチョッパー先生が視界の隅で目を見開いているのが分かった。
「名前!!?」
「だ…じょぶです、」
「卒倒しておいて大丈夫なわけないだろ!!」
「本当に…多分血が、ずっと出てるので」
前後不覚になったのは本当に一瞬だった。
顳顬を押さえて上体を起こす。
恐らく貧血だろう。
「…じゃあ止血だけでもするぞ!今は圧迫するしかないけど、」
「うー…」
不承不承、服の裾を持ち上げるとチョッパー先生が息を呑んだ。
え、何。
「お前これ…」
「何です、」
「よく今まで何も言わずに耐えてたな…!?」
そんなに酷いのだろうか。
卒倒の余韻で下を向くのが難しく、確認できそうにない。
「痛いだろ?」
「それはまぁ…」
チョッパー先生は声をかけながら、そっと優しい手つきでお腹に圧迫包帯を巻いていく。
痛いのは最初のみ、その後は痛みがマシになった。
あとは呼吸が少し苦しく感じるくらいだ。名医。
天井が次々崩落していく中移動していると、
『チョッパー聞こえるかー!?』
「え!?ウソップの声!」
何故か館内放送で鼻の長いお兄さんの声が聞こえ出した。
『前方右の階段を下りろ、最短ルートだ!ガスが入る前にR棟の扉を閉める!急げ!』
「う!うんわかったありがとう!」
どうやら道案内してくれたようだ。
彼自身はガスの被害のない安全な場所にいるのかどうかは少々気掛かりだが、指示してくれた通りに廊下を駆け抜ける。
すると正面から、
「あーっ!チョッパーさーん!」
「えっ!?ブルック〜〜!!」
その人影を見て愕然とする。
骨だ。
まごう事なき動く骨だ。
何故かアフロヘアの動く骨は、何か白い像を抱えていた。
…ん?白い像?
「大変なんですキンエモンさんが!死のガスをくらい死んでしまいましたー!」
「え〜〜〜!?」
どうやら例の“侍”のようだ。
人の形に戻っているところを見るに、麦わらの一味にくっつけてもらったのだろう。
彼自体、息子さんを探しにこの島に上陸しており、その子を探しているうちにガスに曝されてしまったらしい。
そういえばモモノスケ?がどうたらって言ってたような…
「何て無茶な!」
この忙しい時によくもまあこんなトラブルを…
でも待て、もしかしたら。
「…ガスに曝されたの、どれくらい前ですか?」
「え?えーっと…10分程度ですかねぇ?何故そんなことを?」
「なら、もしかしたらまだ間に合うかも…あのガスはまず外側を固めて皮膚から毒を吸収させ、麻痺させるとシーザー本人が言っていました。通常、経皮の吸収速度はそう早くないはずです」
「ホントですか!?ならどうしたら、」
「…外側を…割ってみる、ですかね」
「…やはりそれしかありませんか」
「でも今そんなこと試してる時間ないぞ!?」
「とりあえず集合場所にそのまま向かいましょう。試す時間があるとすればそこです」
「そうだな!ブルック、キンエモン抱えたまま行けるか!?」
「ヨホホ、了解です〜!!」
ひと度止まった足を再度動かし始める。
まずはR棟へ、みんなと落ち合わなくては。
背後から迫り来る“シノクニ”。
死に物狂いで走る私たち、いやチンピラ海軍。
『急げ!あと50m!ガスを振り切れェ!もう扉が閉じちまう滑り込めェ〜〜!』
「ああああああ〜〜!!」
「わかったウソップー!!」
「走ってんのおれらですけど!?」
目の前には閉じかけの扉。
その強固な扉が閉まるにあたって、けたたましい警報音が鳴り響いている。
「頑張ってチンピラ達…」
「なんだその呼び方!」
「乗ってるだけなんだから黙ってろォ!!」
「ル〜〜フィ〜〜〜!!」
チンピラをおちょくっているとチョッパー先生が大声でルフィさんを呼ぶ。
気づいて大きく手を振っているルフィさんがぼんやり見える。
「どわああああ〜〜!!」
扉が閉じ切る瀬戸際で、なんとかギリギリ滑り込めた。
「間に合った〜〜!!」
「走ったのおれ達ですけど!!?」
息も絶え絶えのチンピラ達。
ありがとうね。
シノクニの危険から逃れられて人心地ついたのも束の間、急いで目の前のタンカーに乗り込むように指示される。
どうやら間も無くこの建物は崩壊するようだ。
どんだけ派手に暴れてきたのみんな。
「逃げるぞ野郎共ォ!!」
「「「「「うおおおお〜〜!!」」」」」
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