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「終わったぞ。包帯当てるからまだそのまま待て」
「ありがとうございました…」
なんというか…空気に肉が晒されている感が無くなったというか。
共感されづらい説明しかできないが、本当にそのままそんな感じだ。
「はい、じゃあ約束の心臓です。スモーカーさんもありがとうございました」
「海軍にわざわざ敬称つけるなさっきから」
「一応お世話になったんですよ?先生」
終始苦い顔のままの彼はひったくるようにして心臓を私から取り戻すと、胸に空いた穴に押し沈める。
「…そういや、なぜシーザーはおれの心臓を持ってるつもりでいたんだ」
「今ここで聞くことか?」
そう言えばそうだった。
海軍と最初にぶつかった後、シーザーと少し揉めて手土産と銘打って「スモーカーの心臓」を渡していた。
本当のスモーカーの心臓は私に預けた上で、だ。
あれは誰の…
「…奴の勝手な勘違いさ。おれは秘書モネの心臓を親切に返してやっただけだ」
成程、あれはモネさんのものだったのか。
今となってはもう同情の念など湧かないが、先生達が檻で捕らえられている時なんかに戯れに攻撃、なんてことが起こらなくて本当に良かった…
「あーー!出口が見えた!!」
先頭のルフィさんの声にみんなが反応し、前方に注目が集まる。
トンネルが崩れる時の砂煙で若干分かりづらくはあるが、確かに光が見える。
漸くだ。
でも外って…シノクニが蔓延ってるんじゃなかろうか。
先生の風を起こせる者はいないかという問いかけに、ポニテビキニさんが手を上げる。
あの不思議な棒で風まで起こせるんだって。不思議棒だ。
どんどん近づいてくる出口はもう目の前。
外の光が入り、一気に明るくなり目を細めた。
「「「「「出ェたァ〜〜〜〜!!」」」」」
飛び出した久しぶりに感じる外。
あれ、シノクニが無い…
「おお!あれ見ろ!!」
「うおお〜〜!!」
「ショーグンだァ〜〜〜!!」
「「「ロ・ボ・だ〜〜〜!!!」」」
出た途端に目の前に仁王立ちしていたロボに男性陣は子供から大人まで一同大興奮だ。
さっき見たロボとフォルムは同じなのにさっきよりもかなり大きい。
大興奮する気持ちも…まぁ分からなくはない。
泣きながら騒ぐ程ではないが。
対して女性陣の冷め方がえぐい。
そ、そんな全力で興味ない時の顔…もうちょっと反応してあげてよ。
こっちも気持ちは分かるけど。
隣にいた先生が何かに気付いたらしく声を上げる。
「バッファロー!…お前は……ベビー5か!?」
「ロー!…貴方本当にジョーカーに盾つく気!?」
「この裏切り者がァ!ジョーカーはお前の為にまだ“ハート”の席を…!」
ロボの近くには見慣れない2人組が、先生を“裏切り者”と呼び、聞いたことのある“ジョーカー”という単語を並べる。
…ジョーカー……そうだ、モネさんから聞いたんだ。
捕まった時に、私をジョーカーに引き渡したらどうなるか、と……
あの2人とモネさんがジョーカーの部下なことは理解したが、肝心の先生とジョーカーの関係って…
「ん?誰だ?あいつら友達か?」
「いや、“敵”だ!」
先生がそうきっぱり言い放てば、外に落ちていたシーザーを連れて慌てて逃げていく2人組。
成程、あれだけ焦っていても忘れていかない感じ、ジョーカーにとってシーザーは随分大切らしい。
でもこちら側にもあれを誘拐するという作戦があった筈だ。
何処までなのかは分からないがもういいんだろうか。
ふいと先生を仰ぎ見ると、やはりまだ逃してはならないようで“ROOM”を広げようとしていた。
その手をルフィさんが止める。
「ウソップが任せろって言ったろ!」
「ウチの狙撃手ナメんじゃねェぞ、鼻が長ェからって!」
緑髪剣士さんも援護射撃をするが謎すぎるだろうその文句は。
どっちかというとナメてるのはそちらでは感すら感じる。
憤る先生を、今度はポニテビキニさんが窘めた。
先頭に立ち、逃げ行く敵目掛けてびしっとポーズまで決めちゃうお2人。
そこからはもう凄かった。
長鼻さんの武器がどわーっと大きくなって、ポニテビキニさんが雷雲を発生させてバリバリバリっと敵を痺れさせる。
最後は長鼻さんがびゅびゅびゅんとシーザーを捕らえた。
何が何だか分からないかもしれないが、2人の連携プレーはこれぐらいのスピード感だったのだ。
持ち前の頑固すぎる性格のせいで思ってもない言葉を並べて人を褒めたり持ち上げたりするのは苦手なのだが、逆に心底思っているから言える。
鮮やか。
凄すぎる。
歓喜に沸くみんなに混ざって拍手を送る。
海へと落下した3人を拾い上げ、しっかりと捕縛をする。
その間に、先生に呼ばれた。
「はい」
「ガキ共はタンカーに乗せてそれで移動するらしい。そっちに全員乗せろ。“オペ”をする」
「分かりました」
中毒物質を物理的に取り払うのか。
たしかに最初の治療にはいいかもしれない。
子供達に声を掛けてタンカーの船室内に移動させる。
チョッパー先生がそれに気づいて声を掛けてきた。
「ん?なんだ、どうしたんだ?」
「これから先生がオペしてくれるとのことなので…」
「オペ?」
「はい」
「すぐ済む。中は覗くなよ」
疑問符を飛ばす彼に無駄に怖い顔で圧をかけて船室の扉を閉める先生。
「…さて」
音もなくすらりと抜かれる“鬼哭”。
子供達はまだ気が付いていない。
「“ROOM”」