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船室内に広がる手術台。
まずはいちばん重篤なモチャのオペから始まった。

「うわぁ!」
「フカフカの兄ちゃん何すんだよ!」
「モチャが!」

絶望の顔で口々に騒ぎ出す子供達。
中には泣き出す子もいる。
何の説明もしないんだから当たり前である。

「宥めとけ」
「いや…はい」

それ要員かよ。てっきりオペの手伝いかと思っていたのだが。

「お姉ちゃんあのお兄ちゃん怖い!」
「大丈夫大丈夫、今ね、モチャの中の悪いものを取ってるんだよ」
「悪いもの…?」
「そう。みんな聞いて」

今にもパニックに陥り出しそうな子供達をひとところに集め、モチャと先生が見える角度で座らせる。
その前に立って今モチャは何をされているのか、何故そんなことをしなくてはならないのかの説明を始めた。
子供に説明…難しいな。
上手にモチャに説明していたチョッパー先生の言葉を所々借りながら言葉を続ける。
先生も比較的気を遣っているのか、子供達に臓器やなんやらのショッキングな部分が見えないよう、此方に背を向けた状態で手を動かしていた。

「ーーだから、みんなもこの後モチャとおんなじように先生にオペしてもらうからね。痛くないから大丈夫」
「……うん…分かった!」
「お家に帰るためだもんね!」
「頑張る!…でも手は握っててほしい…」
「勿論!あ、ほら」
「次」
「はい!」

モチャのオペが終わり、先生が振り返る。
力のある大きな子たちに手伝ってもらってモチャをマットを敷いた床に動かした。

「はい、次の子先生のところに行ってね。ちゃんと「お願いします」って挨拶するんだよ」
「うん!行ってくる!」
「ねえ名前お姉ちゃん、モチャ大丈夫だよね…?」

不安そうな目で訴えてくる、モチャの隣に座り込む女の子。
特別仲が良かったりしたんだろうか。

「きっと大丈夫。今は疲れて寝ちゃってるだけだから、すぐに目を覚ますよ」

無くなりそうな輸液バッグを交換しながらそう笑いかける。
その言葉は決して幼い子供の不安を誤魔化す為のものなんかではなくて、チョッパー先生が急性期救急処置を施した後よりもモチャは更に顔色が良く、穏やかに眠っているように見える。
油断は許されないと思うけど、きっと家に帰れるだろう。

「ありがとうございました!」
「次呼んでこい」
「うん!名前お姉ちゃん、終わったよ!」
「よし偉かった!がんばったね」
「えへへ、うん!」

走って戻ってくる私よりも大きな男の子を抱き止めれば、満面の笑み。
此方も笑顔が溢れる。
子供と触れ合うのは久しぶりだし、あまり得意じゃないと思ってたけど実際こう懐かれると可愛いものだ。

「じゃあ次の子!今手が空いたから一緒に行こうか。みんなはモチャの応援しててあげて」
「…うん、」
「わかったー!」

さっき少し怖がっていた子だ。
モチャのことを子供達に頼み、手を繋いで先生の元へ。

「はい、お願いします」
「…お願いします」
「ここ寝てね。手握ってるから」

恐る恐る横になり、不安そうな顔で先生と私を見比べる女の子。

「大丈夫。一緒にいるよ」
「本当に…ずっといる?」
「ずっといるよ。……先生、なんかちょっと気を紛らわせられるようなこと言ってあげてください。みんな怖がってます」

私が小声で咎めるような声を上げれば、ちらりと横目で此方を見て小さく息を吐き出した。

「……目を閉じてろ。すぐに終わる」
「うん、」
「大丈夫、大丈夫」

ベッドの傍に膝をつき、安心させるように手を握って声をかけると、意を決したように目を閉じる女の子。
それを確認した先生が彼女の体を開いて肝臓を抜き取った。
肝臓に蓄積した薬物を抜くのか。
的確に肝臓を切り開き、手際よく毒物を取り払っていく。
先生が名医なのは知っていたが、改めて客観的に見ると…

「…すごく手慣れてますね」

手伝おうかと思ってはいたが、以前にも増して一切の迷いなく進んでいく手技に、私の入り込む余地などなさそうだ。

「…まあ、そうだな」

何処となく煮え切らない返事。いつもだったら当たり前だ、とかドヤ顔してきそうなのに。
彼の物言いを不思議に思って仰ぎ見るが、その表情はよく見えなかった。

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オペの痛みに関してはNovel lawから能力も腕も成長したということでひとつ…