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「着いたぞー!ドレスローザ〜〜〜!!」

朝ご飯の後は医務室を借りて足とお腹の包帯交換をしてもらい、ちょうど終わった頃に船室の外からルフィさんの大声が聞こえてきた。
ぐるり一周、ゴツゴツとした岩壁に囲まれてわずかな隙間からしか国内が見えないその島の海岸にひっそりと船をつける。
我先にと降りていく皆さん。
そのまま船の上で見送ろうと思っていたが、先生に目で呼ばれたので一旦皆さんに続いて上陸し、今一度これからの作戦会議に加わる。
バサリと広げられた地図。
ベポさんが描いたものだ。
肉球のついたかわいい手で必死にペンを握って描かれたであろうそれをみんなで囲み、全員の動きを再確認する。

先生、ウソップさん、ロビンさんはシーザーを引き渡すために本人を連れてドレスローザと橋で繋がったグリーンビットへ。
ナミさん、サンジさん、チョッパー先生、ブルックさん、モモくん、私は船に残る船番チーム。

「仲間が待つ「ゾウ」を指すビブルカードは名前に渡してある。上陸組に何かあったら先に行け」

懐から先ほど渡された白い紙を取り出した。
これはベポさんのビブルカード。
別名命の紙と呼ばれ、爪の欠片や髪の毛1本などを職人に渡すと作ってもらえるものだ。
燃やしても濡らしても決して破損することのない不思議なこの紙同士はいつも引き合っているため、予測不可能な事象が連続して起こる“新世界”における航海でもかなり有用なのだという。

手のひらに静置すればそれはひとりでに動き出す。
この先にベポさん…ひいてはみんながいる。
もう少しだ。これが落ち着けばまたみんなに会える…

「あれ!?サンジ!?」
「麦わら屋達はどうした!?あいつら作戦のメインだぞ!?」

…ふと気づけば工場破壊&侍救出チームであるルフィさん、ゾロさん、フランキーさん、錦えもんさん、そして何故か船番チームのサンジさんまでもが知らぬ間にいなくなっている。
ついさっきまでここにいたよね…?
早速前途多難だ。

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シーザー引き渡しチームを見送り、船番チームの私たちは船に戻る。
最初こそサンジさんが消えたことに嘆いていたものの、気を取り直してゆったりとみんなの帰船を待つ。
そしてそれは突如始まった。

「茶をもて!チョパえもん!」
「はは〜〜」

チョッパー先生に「毒味」をさせ、正座をするナミさんの膝に転がって風を送られ満足げなモモくん。
…将軍ごっこだそうだ。
モモくんの国には将軍様がいるのか…ますます昔の日本じゃないか。
膝枕パーリーと勘違いしたブルックさんがナミさんに盛大に殴られている。
骨なのにあんなたんこぶ出来るんだ。

「はぁ〜もうびっくりですよ…名前さんはショーグンごっこ、参加されてますか?」
「え、参加…参加制なんですかあれ。それでいうと多分してないですが」
「そうですか、それではちょっと失礼して」

たんこぶを摩りながら徐に近づいてきたと思ったら、やれやれと今度は私の膝に頭を乗せるブルックさん。

「こちらは膝枕パーリーといたしましょう」
「だからどんなパーリーだっつってんのよ!!」
「ドバラダペラ!!」

を、またナミさんが殴り飛ばしてくれた。
この船のああいう担当、どっかの艦の誰かさん達を彷彿とさせるなぁ。
というか欲望に忠実な男はどこにでもいるってことか、ブルックさんなんて骨なのにね。
余興を求められたブルックさんが始めた演奏の途中、事件は起こった。

ガシャン!
「え?」
ドサササ!パリン!

曲の途中で、船室内から人為的に起こされているであろう破壊の音が聞こえてくる。

「やだよー…」
「え!?何!?」

次いで人の声まで。今のは明らかに人の声だ。
聞いたことがない女性の声…
こんな声の人この船にはいなかったし、そもそもここにいる5人以外には誰も居ない筈だ。

「やだよー…全く…」
「男部屋からですね…」
「やだやだ…」
ガチャン!バタン!

何者か分からないぼやきと破壊の音は依然にして止まらない。
モモくんと私を抱きかかえたナミさんに指示された2人が恐る恐る近づいて男部屋の扉を開ける。
全員揃っておっかなびっくり覗き込むと、そこは毒々しい色彩に溢れ、壁や天井を含む全てのものが流動的に動き続けるなんとも悍ましい空間になっていた。
元々こんな部屋…な訳がないよね。
家具なんてほぼほぼ面影すらない。

「なんなのこれ〜〜!!」

ナミさんが泣きそうな声をあげるのも頷ける。

「何がどうなってるんだ…?」
「気持ち悪いでござる…」
「こんなの見せたらフランキーさんに怒られちゃいますよぉ!」
「あーやだやだ…」
「「「!!」」」

男部屋だった空間の暗がりから声がした。
さっきの声だ。
足音と共に徐々に近づいて来る声の主。
それに合わせて少しずつ後退りする私たち。
極彩色の雲が空間から現れたと思いきや、ボワン!と男部屋の入り口までも不思議な造形にされてしまった。

「「「えええええ!!?」」」
「ドアまで変な形に…」
「能力者か…?」
「それっぽいですけど…」
「何の能力よ!?」
「悪趣味…」

口々に目の前で起こる現象について考察してこっそり毒づいていると、ついに人影が姿を現した。
青地にオレンジ柄のワンピースに身を包み、赤と黄色のツートンヘアのおばさん。

「やだよやだよー…芸術的センスがないやつはこれだから嫌ざます…!」
「な、何なのあんた!?」
「お黙るざます!誰が人魚姫ざます!!」
「「言ってねーよ!!」」

こ、濃い…全てが濃い。
見た目も、中身も、口調さえも。
一度見たら絶対に忘れなさそうだ。
彼女の後ろから如何にも三下な見た目の恐らく部下であろう男性2人が現れ、喋り出した。

「このお方こそ、ドンキホーテ・ファミリーのジョーラ様だ!」

ドンキホーテ・ファミリー…ドフラミンゴの部下…!?
何故こんなところに…
シーザーはいない、私たちに用事なんてないはずだけど…
怖がるモモくんの前に、ナミさんと一緒に立ちはだかる。