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「そっちはどう!?」
「今のところ見えません!」
「やっと撒いたか…」
「ゼィ…ゼィ…」
全速前進、“ビッグ・マム”の艦から逃れてゾウへと向かうサニー号。
奴らはかなりしつこくこちらを追いまわしシーザーを奪おうと攻撃してきたが、そのシーザーを利用しながら攻撃を避け、どうにかこうにか逃げ果せた。
「もう影も見えねェ…ひとまずは安心だ…」
「相手は“四皇”だ、各々警戒は解くなよ」
「名前、ビブルカードは?」
「はい、ここに」
ベポさんのビブルカードをナミさんに渡す。
それを手のひらに置いて方向を確認するナミさんに、おずおずと声をかけた。
「あの、」
「ん?」
「すみませんでした…暴走して」
「あら、暴走してた自覚はあるのね」
目線はそのまま、ふふんと口の端で嫌味なく笑うナミさんに、気まずさから俯きがちに目を逸らす。
先生の危機に錯乱していたのは事実だが、私のよくない癖が出ていたのもまた事実。
今回もサンジさんがうまく止めてくれなければ本気で海に飛び込んでいた自信がある。
「馬鹿なこと言い出して、本気で一発ぶってやろうかしらなんて思ってたけど…いいわよもう。ひとつ面白い事実も発覚したことだし」
「…え、何の話ですか?」
「あんた、トラ男君のこと好きなんでしょう」
「は!?」
ぼっと顔に熱が集まる。
ナミさんはようやく目線を此方へと向けた。
「ななななんですかそれ!?何故!?」
「誤魔化し不要。誰が見ても分かるわ」
「別にさっきのあれはそういうのじゃなくて…!部下としての忠誠心で!」
「わかったわかった。素直じゃないわね」
「違うんですってば!」
ナミさんの中ではすっかりアレがそうなってしまっているようだ。
…強ち間違ってはいないかもしれないところが強く拒否ができない所以である。
「んナミさ〜〜〜ん!!名前さ〜〜〜ん!!」
「サンジさん」
「ブレイクタイムにスイーツは如何ですか?」
すっと差し出されたお盆の上にはきらきら輝くグラスに入れられた何か。
何だろうこれ…
「あらありがとう。丁度甘いもの食べたかったのよね」
「これなんですか?」
「ピーチのグラスリーですレディ」
「ぐらすりー…」
とはなんぞや。
ピーチはわかるけど…
遠慮がちに受け取ってひと匙口に運ぶと、それはしゃり、と舌の上で優しく解けてとろける。
シャーベット?ジェラート?
それらとは少々違うような気もするがそんな感じの氷菓子だ。
何より美味しい。
さすがサンジさん。
「…元気出たかい?」
はた、とサンジさんを見ると優しく眉を下げ、上目遣いでこちらを窺うような表情をしていて。
「…はい。ありがとうございます」
「そっか、良かった」
そのまま目を細めるサンジさん。
彼にも申し訳ないことをしたな。
「サンジさんも、さっきはごめんなさい」
「ん?あぁいや、名前さんが謝ることじゃねェよ」
「いえでも…」
「そもそもローが急に単独で無鉄砲なことしなきゃ済んだ話だろ。あいつにゃあいつなりの考えがあったんだろうことは理解してるが…」
彼は他の皆さんに先程のデザートを少々雑に配りながら煙草を吹かす。
ふわりと紫煙が立ち上った。
「何にせよレディーを泣かせた事実は変わらねェ」
「ふふ、サンジさんがそう言ってくれるだけで救われます」
「惚れた?」
「いいえ」
はっきり言ってもめげる様子が微塵も感じられないサンジさんに苦笑しながら食べ終わった食器をお返しした。
先生が心配な気持ちは勿論拭いきれないままだけど、いちばん苦しかった時よりは幾分もマシになっていた。
さぁ、とにかく今は全速前進、皆さんと一緒に「ゾウ」に向かわなくては。
それが私に下された「船長命令」だから。
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