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その後、きちんと麦わらの一味の皆さんと挨拶をした方がいいだろうとのペンギンさんの発案で、みんなを連れて元いた辺りへ戻ることに。
ウニさんとクリオネさんは目に見えて嫌がっていたけれどとりあえず挨拶だけでもと周りが宥めすかし、連行する形で連れて来た。

先程よりは少々活気が出てきた広場に私やベポさんが顔を出すと、ミンク族は揃って目を輝かせた。

「さっきはありがとう!」
「皆さん、お身体どうですか?」
「かなり良いよ」
「傷はまだ痛いけど、さっきちょうどチョッパー先生に診ていただいたから」
「そうですか、それは良かった」

「ベポ、ゆガラらの待ち人ってのはこの娘のことか?」
「そう!まだもう1人いるけど…おれ達の仲間!看護師なんだ」
「ゆガラには命を、国を救われた。名前を聞きたい」
「はい、ハートの海賊団所属看護師の苗字名前と申します」
「挨拶をしてもいいか?」
「…?どうぞ…?」

ぺこりと頭を下げると謎の赦しを乞うてから不意に近づいてくる大柄な虎のミンク。
え、何、挨拶するだけじゃないの…?
先程親しげにしていたベポさんを返り見ても特に止めるような素振りはない。
虎のミンクはそのまま顔を近づけて来た。
まさか欧米スタイルの挨拶…!?
これどうしたら…!?
戸惑う間にも虎のミンクとの距離はどんどんと近付いていく。
為す術なく身を硬直させると、

すり。
…え?

「ガルチュー。この国での挨拶だ。ゆガラはこの国を救ってくれた恩人の1人。恐らくやたら挨拶を求められるだろうから教えておく」
「それは…どうも…」

魂の抜けたような返答を返す。
ミンク族とはいえ虎の顔面が自分の頭のすぐ横を通ったおそろしさだとか、ガルチューってそれどんな名称だとか、色々思ったことはあったけれども全てが吹き飛ぶ。
そう、全てが吹き飛ぶほどに…

「(やわ、らか〜…)」

もふもふでふわふわで、適度に暖かくて…まさしくベポさんと同じ触り心地に、緩みそうになる頬を必死に引き締める。
もしかしてミンク族はみんなあんなに柔らかい毛を持っているのか。
それってどんな天国だ。

「はは、ミンク族の毛の柔らかさに絶句してる」
「おれらも到着して初めてガルチューされた時は感動に打ち震えたもんな」
「名前!ダメだよ浮気したら!おれがいるでしょ!?」

拗ねたようなベポさんの声。

「麦わらの一味に挨拶するんでしょ!?行かなきゃ!」
「は、あ、そうでしたね。行きましょう」

うっとりと呆けていた私を激しく揺さぶって引き戻すベポさん。
いかん、どっかに飛んでいた。
そのまま私の手を繋いで麦わらの一味を探し出す。

次々に飛んでくるガルチューに幸せを噛み締めながら歩みを進めていると、ナミさん達がこちらに手を振り駆け寄ってきた。

「名前!仲間には会えたのね!」
「良かったですねぇ早くに出会えて」
「はい。ありがとうございます。ご挨拶に来たんですがチョッパー先生とサンジさんは外してますかね」
「そうねぇ、さっきまで見える辺りにいたんだけど…ま、いいわよ」

肩を軽く竦めてみせるナミさんに微笑みを返す。
2人には後で紹介しよう。

「みんな、こちら麦わらの一味のブルックさん。それと「“泥棒猫”ね」…イッカクさん」

私の隣にいたベポさんを押し退けて先頭まで出てきたのは何故か敵対心剥き出しのイッカクさんだ。
ぐいと私の肩を抱き寄せる。
わあ男前。なんで。

「なあに貴女?そんなに睨まれるようなことしたかしら私」
「ハートの海賊団戦闘員のイッカク。よろしく」
「ええ、よろしく」

2人ががっしりと握手をすると見えないはずの火花が飛んだ気がした。なんで。

「イッカクさん、これから同盟長いんでちゃんと仲良くしてくださいね?」
「…なんで」
「え」
「なんで“泥棒猫”は名前ちゃんのこと呼び捨てしてるわけ…?」
「…え」
「キャプテン除けばうちではベポしか呼び捨てしてないのに?なんでよ?」
「えー…とそれは特に、」
「あーら。そんなの仲良しだからに決まってるじゃない。ねぇ名前?」

ナミさんは、イッカクさんに肩を抱かれた状態のままの私の腕に抱きついた。
何この両手に花。なんで。

「私の方が仲良しだっての!何年一緒にいると思ってんのよ」
「それはどうかしら?今はおんなじベッドで寝てるもんねー?」
「は!?ちょっとどういうこと名前ちゃん!?」
「あぁ、はい、そのぅ」

お互いが意見を主張するたびにぐいぐいと引っ張られてたわわなアレが押しつけられる。
私だからちょっと嬉しいなで済んでいるけど、もしここにいるのがサンジさんだったら死んでるかもしれない。

「とにかく!名前と仲良しなのはお宅らだけじゃないってことよ」
「あーもう…名前ちゃん…いや名前!名前って呼ぶからね!」
「ど、どうぞお好きに…」

ああ、完全にナミさんが優勢だ…
ただ私がこれまで大変お世話になったよ、というのとこれからみんなもちゃんと仲良くしてね、というので顔合わせをしたかっただけだというのに。
この時点で既に収集がつけられないが、案の定現れたサンジさんがこちらに向かってダイブ。
ナミさんのパンチとイッカクさんの蹴りによって無事沈められたのであった。

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