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「ただいま戻りました!」
「名前おか…え!?どうしたのその格好!?」
「あっちで着せてもらったんです。似合いますか?」
「くじらの森」で復興作業を手伝っていたみんなに一頻り衣装を見せびらかす。
みんな口々に褒めそやしてくれてなかなか嬉し恥ずかしな気分だ。
今まで見えていなかった包帯が見えてしまった事によってイッカクさんにやいやい言われたがご愛嬌だろう。
「えっうわっ名前ちゃんかっわい!」
「うちの子かっわい!!」
「そんなセクシーな格好するような子に育てた覚えはありません!」
「奇遇なことに私もシャチさんに育てられた覚えないです」
「こりゃキャプテン喜ぶぞ。良かったな」
「残念でした、あの人私がどんな格好してようが何も言ったことないですよ」
「それはキャプテンからのお褒めの言葉が欲しくて拗ねてるって解釈で合ってる?名前ちゃんよぉ」
「……ペンギンさんなんて嫌いです」
至って冷静な、今まで通りの返答を返したつもりだったが、まさかペンギンさんの策略に嵌っているとは気が付かなかった。
こっそりと図星を指摘され、我ながら子どもじみた返事を膨れっ面で返すと、ペンギンさんはおもちゃを見つけた悪戯っ子のような笑いを零した。
「そうかそうか、名前ちゃんがなぁ」
「なんですか!何も言ってないですよ私!」
「いんや、その態度だけで充分だ。これでも感慨深いと思ってんのよ、遂に!みたいなさ」
ええい、ならばニヤニヤするのを止めろ。
ていうか遂にってなんだ。
そんな言い方したらずっと前から私が……
…みたいじゃないか!!
そんなんじゃない…はず!なのに!
「何の話してんのよ、2人で」
「これが、これで、こうな話」
言葉に合わせて私を指差し、私の両肩に手を置き、私の頭上でハートマークをつくるペンギンさん。
ハートマークを作る時にくねりと体をくねらす彼に無性に腹が立つ。
こんなんで通じてたまるかと思ったが、イッカクさんまでニヤニヤしだした。
なんならこのやりとりを見ていた他のみんなまでも。
「ははーん。成程ね?遂に」
「そう、遂に」
「その遂にってなんなんですか…!」
なんでみんなして通じるんだ。
私ってそんなに分かりやすいのだろうか…?
自分的にはちゃんと向き合ってもいなかったような感情がみんなにダダ漏れって、そんな恥ずかしいことある?
熱が集まった頬を冷ますように手で顔を仰ぐ。
ダメだ、引かない。
「ま、なんだ。とりあえず早くキャプテンが帰って来るといいな」
語尾にハートマークがつく勢いでそう言ってのけたペンギンさんに、全力で殴りたい思いを必死で堪えてふん、と顔を背けてやったのだった。
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「こ、これって…」
「新聞と共に見せようと思っていたのだが忘れていてな。この男、ゆガラらの船長なのだろう?」
「そうです…!」
修復作業の合間についつい話し込んでしまい、私もこの服だと動きづらいからとりあえず着替えて作業をお手伝いしようかな、と思った矢先、ペドロさんが紙の束を持って話しかけてきた。
紙の束が何かといえば、
「また懸賞金上がってる…」
「うおー!流石我らがキャプテン!!」
手配書の束だ。
纏められたものの1番上に来ている見知ったニヒルな顔。
なんなら先立って見せてもらった新聞にも同じ写真が載っていたなぁ。
その顔の下に書かれた数字は5億。
ピシリと音を立てて固まる私とは対照的に喜び勇むみんな。
ちょっと待ってくれ。
5億だよ、みんな事の重大さが分かってないよ。
うちの先生がとうとう5億の賞金首なんて……
どんどん悪いやつ認定されているじゃないか。
ていうか王下七武海の制度はどうなった。
七武海は懸賞金撤廃されるんじゃないのか。
七武海でありながら他の海賊と手を組んじゃったわけだし、七武海じゃなくなったということだろうか。
そうしたら懸賞金は…高い方がいい…のか?
あれ?
「めでたいことだろもっと喜べ!」
「え?めでたい…やっぱあの、あれ?」
「何混乱してんだ?」
「うちのキャプテンは大海賊なんだ。懸賞金なんてもんは高けりゃ高いに越したことねェって!」
「そうそう!箔が付くしな!」
「箔…」
固まる私の背中を叩いてはしゃぐ皆に、混乱しているこっちがおかしいような気持ちに…
いや待て、やっぱり一般的には私の考えが正しいはずだ。
危ない危ない。