とあるドMは神を喰らう - deer

死神も不死鳥も多分飛べる

「...一人で食べられますので」

いつもなら橘副隊長がこうして食べさせてくれるはずなのだが、急な任務が入ってしまったようで、酷く不機嫌そうな顔のフードが皿を持ってやって来た。関わるなと言われている以上、このようなことをさせるのは申し訳ないと思い、全身に走る痛みに悦を感じながら起き上がる。後はフードがテーブルに皿を置いてくれさえすれば食べられそうなものだが、不機嫌な顔のまま動かないフードにどうすればいいのか分からなかった。

「...化け物か」

ポツリとフードが漏らした言葉に首を傾げる。それが私への罵倒であるなら喜んで受けるが、自分に対してなら私と同じ性癖を疑うところである。

「身体中の骨が折れて肋骨が臓器に刺さってたのに四日で起き上がるとはな」

どうやら前者のようだった。ありがとうフード。大変美味しい罵倒です。

「こうしてお手を煩わせることは本意ではありませんので、早く治るのは好都合かと」

これで不死鳥という名に傷は付かないな、と思いながらそう言えば、そうかよ、と鼻で笑われる。言葉責めは嫌いじゃないが、フードは私を傷つけるためにそう言っているのではないようなので、やはり物足りないものがある。
苛立たし気にベッドの側に来て椅子に座る。自分から関わるなと言ってきた癖にいくらなんでも矛盾しすぎてはいないかと思いながら、いただきますと言って、口を開けろとの言葉通りに口を開いて運ばれてくるお粥を咀嚼した。
フードのことなので雑に突っ込んで喉の奥に入って苦しくなるプレイをやってくれるのではないかと期待したのだが、恐る恐るではあるが、とても丁寧に食べさせてくれた。あれほど突き放そうとしていたのに、なるほど、この男は酷く優しい人間のようだ。
そうしてお粥を食べ終わり、ごちそうさまでした、ありがとうございます、と頭を下げる。だが、久しぶりに起き上がったせいか、そのまま身体が前に倒れてしまった。

「おーい、エンー?サクヤさんに言われて見に来たけど飯はソーマが...って、え?」

バランスを崩した私を支えるために身を乗り出したフードの腕になんとか手を添え、謝りながらベッドに戻ろうとした時、そんな声が聞こえてフードが固まる。コウタか、と声をかけようとしたのだが、それより早く耳をつんざくような悲鳴が聞こえた。

「っきゃあああああ!!!ソーマが!!ソーマが!!!」

エンと抱き合ってる!そう叫んで病室から飛び出したコウタにああ、勘違いさせてしまったか、と思っていると、復活したフードが動き出す。カアァァ、と音がしそうなほど顔を赤くしたフードを覗き込めば、傷に障らないよう、壊れ物を扱うかのように私をベッドに寝かせて、律儀に空になった皿まで持って病室を飛び出して行った。

「...仲良しだな」

関わるななんて言いながら、結局コウタと仲が良いとはなんなのだ。放置プレイか、そうなのか。思っていたよりずっと優しい男だったな、と思いながら、遠くで聞こえる叫び声をBGMに目を閉じるのだった。

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