とあるドMは神を喰らう - deer

挨拶ができれば一人前

二回おかわりをしたコウタは口を開けて眠っていた。お腹がいっぱいになって眠る、こんなに幸せなことは他にないな。そう思うと直ぐに起こすのは少し忍びない。真っ先にコウタを起こそうとしたフードにそう言えば、納得したのか黙ってお茶を飲んでいた。

「...旨かった」

「お口に合ったようでなによりです」

出来るだけ音を立てないように皿を片付ける。手伝う。いえ、お客様ですから。飯の礼だ。案外フードは義理堅い。ご飯も綺麗に食べてくれたし、かなり良い人なのではないだろうか。

「俺もコウタと同じで構わない」

「と、言いますと?」

私が洗った皿を拭いてくれているフードが唐突にそんなことを言った。一体何が同じでいいのかと首を傾げる。堅苦しいのは好きじゃねえ。ああ、どうやらリッカと同じことを言っているようだ。だが、そう言われてもフードは私より身分が上の人である。コウタは同期で、リッカは整備士。何より二人とも私の数少ない友人なのだ。

「自分より身分の高い方に砕けた言葉を使うのは憚られます」

「リンドウには使ってるだろ」

「パパは上官命令でしたので」

「なら俺も強襲兵曹長命令だ」

ありがとうございます!と内心悦ぶ。命令という言葉より魅力的な言葉はこの世にあるのだろうか。最近命令されることが多い気がするが、大変美味しくいただく次第である。

「承知した。命令には従うが、一つ確認したい。以前私に近づくなと言っていたが、それはもういいのか?」

「...悪かった」

「いや、大丈夫ならいいんだ。むしろこうして片付けを手伝ってくれていることにお礼がしたいくらいだ」

「飯作ったのはお前だろ」

「何と言えばいいのかな。私は兄以外にご飯を作ったことが無くて、こうして人に食べてもらえると嬉しいんだ」

一緒に片付けをするのはソーマが初めてだ。そうか。ああ、だからありがとう。少し顔が赤くなっているように見えるが、それを言うのは野暮というものだ。目を逸らしたソーマの顔を見ないようにして蛇口を閉めた。
慣れない手つきで拭いてくれた皿を片付けると来た時から随分時間が過ぎていた。楽しい時間というのはあっという間で、そろそろ自室に戻って休んだ方がいいだろう。そう思っていると、ノゾミ、母さん...涎を垂らしながら寝言を言うコウタの頭ををソーマが盛大に叩いた。

「痛ってえ!」

「そろそろ部屋に帰る時間だぞ」

「お前は寝すぎだ」

「折角旨い飯食って気持ちよく寝てたのによー。まあいいや!本当に旨かったよ!ありがとな!」

「こちらこそありがとう。今日は楽しかった」

じゃあ帰るか!ソーマと肩を組もうとして避けられたコウタがずっこけながら部屋を出る。おやすみ。...ああ。ソーマに手を振りながらそう言えば、少し照れた様子で部屋を出て行った。

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