とあるドMは神を喰らう - deer

約束を忘れられたら容赦なく殴れ

コウタとソーマ、そして橘副隊長と共にヴァジュラを討伐する任務だった。コウタは初めてヴァジュラを相手にするようで、慣れない動きに狼狽えながらも、ソーマの作った隙に銃弾を叩き込んでいた。
ヒットアンドアウェイ。自分の周囲に電撃を放つヴァジュラに近接攻撃を仕掛けるのはそれが一番効率的だ。いくつもの雷球を作っている隙に捕喰してコウタにリンクバーストすれば、見事にアラガミバレットを撃ち込んでくれた。
そうして大した怪我もないまま帰投しようとしていると、ソーマが何かの音に気づいた。新手のアラガミかと、警戒しながら進んで行くと、本来なら一つのエリアの一組しかチームはいないはずにも関わらず、別任務中のパパとロシアに出くわした。
嫌な予感がするとは思った。他のアラガミが現れるならともかく、他のチームがいるというのはいくら何でもイレギュラーすぎる。だから教会跡に響いた轟音に全力で駆け出したのだ。

「どういうことだよ!?」

教会跡は崩れた天井の瓦礫で半分の広さのなっていた。パパの姿が見えないということはきっとこの奥に閉じ込められているのだろう。ロシアをソーマに任せて力任せに剣を振るう。少しでも穴が開けば向こうの様子が見えるかもしれない。

「アリサを連れて撤退しろ!」

パパの言葉に橘副隊長が嫌だと叫ぶ。私だってこんなところにパパを置いていくのは嫌だ。せめてこの時に備えて用意した物を渡したい。それだけの願いで脆そうな部分にショートブレードを突き立てれば、音を立てて岩が崩れた。
辛うじて保っているといった部分に無理やり自分のポーチを捻じ込む。役に立つはずだ。それだけを口にする。ありがとな。パパの声で思わず命令に背きたくなったが、私がパパを信じないわけにはいかなかった。

「約束を忘れないでくれ」

「ああ。じゃねえと娘に嫌われちまうからな」

いよいよ不味い状況になってきた。ヴァジュラに見たことのないアラガミに囲まれてしまっている。この中をまともに動けないロシアと橘副隊長を庇いながら切り抜けるのは至難の技だろう。

「行くぞ!」

ソーマはロシアを抱えて、コウタは橘副隊長を引っ張っている。私は退路を拓くために全力でヴァジュラに斬りかかった。

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