とあるドMは神を喰らう - deer

翼をねだるのではなくもぎ取って飛べ

「リンドウは消息不明・除隊として扱われることになった」

その知らせはアナグラを絶望に染めるには十分すぎるものだった。上が決めたことだと言う雨宮教官に橘副隊長が食ってかかる。神機も見つかっていないというのに捜索が打ち切られるとは。確実に支部長殿が一枚噛んでいるだろう。
新種の出現が増えている今、行方不明者の捜索に割く時間は無いというのが建前であるらしい。納得出来ないという橘副隊長が取り乱してそんなのおかしいと声を上げるが、話は以上だと雨宮教官は去って行ってしまった。
取り乱していた橘副隊長も冷静を取り戻したが、休むと謝って自分の部屋へ帰って行ってしまった。

「...任務へ向おう」

重苦しい空気を切るように動き出す。動けない人間が多い今、私たちは任務をこなすしかないのだ。こちらがどんな状況であろうとアラガミは待ってくれない。

「でも、サクヤさんもアリサもさ...」

「コウタ、今は出来ることをするしかない。前が見えないのなら私が道を作る。絶望に押し潰されそうなら私が希望になろう。だからどうか止まらないでくれ」

雨宮リンドウは生きている。私との約束を破るような男じゃない。私が今前を見ることが出来るのはそう信じているからだ。私のパパを信じているからだ。だからコウタにも諦めて欲しくなかった。私と共に前を見て欲しかった。

「こいつの言う通りだ。今俺たちが潰れりゃあこのまま全滅するぞ」

「エン...ソーマ...分かったよ。今いない仲間の分も働かねえとな!そんで配給品交換してもらうんだ!」

それにしても似合わねえこと言ったなー。そうか?兄が同じようなことを良く言っていたからな。サテライト拠点で外壁を壊されても兄が直し続けることを希望を直していると言っていたことを思い出す。無いなら作る。壊れたなら直す。シンプルだが、それが人々に希望を与えていたのだと知ったのはどれくらい前のことだろうか。

「まあ、そうだな。生きてさえいれば、万事どうにかなるもんだ。だな」

パパの言葉を借りればソーマが薄く笑った。その言葉忘れるなよ。もちろんだ。何たって不死鳥だもんなー。不死鳥になれるかは分からないが、せめて鳥にでもなるかな。空でも飛ぶのか。空中ジャンプで飛ぶかな。良かった、これでいつも通りだ。パパのことを忘れたわけではないだろうが、それでも二人が悲しそうな顔をするよりは笑っていて欲しい。

「今日の相手はシユウか。羽根をもぎ取れば私も空を飛べるだろうか」

「...やめておけ」

「エンってやっぱり馬鹿だよな...」

「すまない。学は無くてな」

コウタとソーマが呆れたように溜め息を吐く。仲良しだな。首を傾げながらそう言えば、さらに深い溜め息を吐かれたのだった。

ALICE+