とあるドMは神を喰らう - deer

踏んでもらえるなら道になるのも悪くない

最近の習慣であるアリサの見舞いに行くと、一瞬嬉しそうな顔をした後、酷く暗い顔をした。どうしたのかと尋ねるとパパの捜索打ち切りの話を耳にしたようだった。あまり気にするな、そう簡単に死ぬような人じゃない。そう言ってアリサの頭を撫でれば、また違う映像が頭の中に流れ込んで来た。
もういいかい。まあだだよ。もういいかい。もういいよ。かくれんぼをしていると大人が二人アラガミに襲われる。アリサがゴッドイーターになった時。そして、アラガミと共に映し出されるパパのデータ。アリサの両親を殺したのは、パパだと教えられるアリサがいた。数を数えて引き金を引く。そうすればアラガミを倒せる。強くなれる。そう言われて数を数えるアリサを見た時、また光が強くなった。

「あの、あなたにとって、リンドウさんは...」

「ん?そうだな、父親かな。怪我をしては怒られて、風呂上がりに髪を乾かしていないと怒られて、下着を脱ぎっぱなしで怒られて、パパと呼べと上官命令をしてくるような、そんな父親だ」

「...少し、ドン引きです」

「今日はパパとの時間が見えたのか?」

「はい。とても温かい気持ちが流れ込んで来て」

だから、あなたに嫌われているんじゃないかって...どうしてだ?だって、私がリンドウさんを!さっきも言ったが、パパはあのくらいじゃ死なないさ。自分の両親の仇を取れると思っていたのに、自分でも分からないと自分を責めるアリサを抱き締める。ごめんなさいなんてアリサは言わなくていいのだから。

「少し昔話をしよう」

アリサが落ち着くまでこうしていようと口を開く。あまり口が上手い方ではないので、自分の話を聞かせることにした。
私の父は母に一目惚れして極東へ越して来て、兄と私が産まれた。兄は一回り歳が離れていて、両親が死んだ時にはもう大工として働いて私を育ててくれた。だが、兄は不器用で、家事は何も出来なくて、結局幼い頃から家のことは私がやっていたんだ。
兄が直した壁が希望であること、そんな兄を尊敬していたこと。兄が死んだこと。ゴッドイーターになったこと。友人に父親、最近はソーマとコウタが仲が良いこと、そんな話をアリサは時々相づちを打ちながら聞いていた。パパが服と下着をくれたことを話せば、ドン引きされていた。

「私はな、約束をしたんだ。だからパパを信じる。そのためなら絶望を斬り希望を掴むし、道が無いなら私が道になる。仲間とはそういうものだ。と言っても、パパの受け売りなんだがな」

「仲間...」

「私はアリサを仲間だと思っている。友人だともっと嬉しいが、生憎友人が出来るような人間ではなくてな」

「そ、その!私も、友だちだと、嬉しい...です」

「そうか。それは嬉しいな。アリサで三人目だ」

三人目?コウタとソーマですか?いいや、コウタとリッカだ。ソーマは?強襲兵曹長命令で砕けた言葉を使っているからな、仲間兼先輩、といったところだろうか。真剣に考えてそう言ったのだが、アリサに変な目をされてしまった。友人にその目をされるのは少し悲しいものがあった。

「友人ならなおさら、私はアリサに笑って欲しい。アリサが前を向けないのなら、私が道を作ろう」

「...エンって変な人ですね」

「そうだろうか?」

「でも、嫌いじゃないです」

ありがとう。少し照れたようにそう言ってアリサは綺麗に笑った。私はアリサのことが好きだぞ。え!?友人を嫌う者がどこにいる?本当、変な人。それでアリサが笑うのだからきっと何も問題はない。新しい友人を笑顔にすることが出来るなら、私はいくらでも変な人になろうと思う。

「元気になったら部屋に遊びに来ないか?」

「あ、それいい!やってみたかったんですそういうの!」

「ご飯は任せてくれ」

「じゃあ早く復帰出来るようにしなきゃ」

「あまり気負うな。少しずつでいいさ」

先の方が色々と楽しみになるだろう?ふふっ、そうですね。気づけば随分長居してしまったようで、今日の面会は終了だと告げられて席を立つ。また来てくれますか?ああ、もちろんだ。その返事を聞いて笑ったアリサに手を振って病室を後にするのだった。

ALICE+