とあるドMは神を喰らう - deer

こういうときは涙の数だけ強くなる

それから数日後。エントランスでコウタとソーマにイタズラを仕掛ける計画を立てていた。

「やっぱり寝起きドッキリじゃね?」

「甘いと言ってしょっぱい卵焼きを食べさせるとか」

「結局実行は部屋の中だな。よし!こうなったらソーマの部屋に押しかけるか!」

「ああ、それなら食材を用意しておこう。今度は鍋でもするか」

「おお!いいじゃん!って、あ...」

突然言葉に詰まったコウタに、まさかソーマにバレたのかと視線をやれば、俯きながらアリサがこちらへやって来た。

「もう大丈夫なのか」

「はい、本日付けで原隊復帰になりました」

あの仕組まれた事故以来初めて病室から出たアリサの顔色はあまり良いとは言えない。あまり無理はするな。エンこそ、くだらないイタズラなんてやめておいた方がいいですよ?心配していたよりはずっと元気になったようだ。
そんなアリサにコウタがどうにか話しかける。必死に気を遣っているようだが、いつものようにしてあげた方がいい気がする。まあ、それもコウタらしいと思っていると、アリサを中傷する言葉が聞こえてきた。そのせいでますます下を向いてしまう。

「アリサの責任ではありません」

聞こえるように悪口を言い続ける男たちにそう言って前に立つ。顔も名前も知らないが、そんなやつらが私の友人を悪く言うことを許すわけにはいかないのだ。

「お前もリンドウさんに懐いてたじゃねえか」

「ですので、あの場に雨宮隊長を置き去りにしたのは私たち第一部隊の責任です。アリサ一人を悪者にするなど、私たちの隊長は許しません」

「結局あいつが悪いんだろうが!」

「ゴッドイーターに成り立ての新人が突然新種のヴァジュラに襲われれば混乱もするでしょう。私たちも撤退することしか出来ませんでした。もっと自分が強ければ、助けられたかもしれないのです。もし、誰かを責めたいのでしたら私を責めてください」

「新人が粋がってんじゃねえぞ!!」

「申し訳ございません。出過ぎたことを言っているのは百も承知です。ですが、私の友人をこれ以上傷つけるのはやめていただきたい。人を蔑みたいのであれば、私をその対象にしてください」

「チッ、化け物が」

気色悪いから行こうぜ。そんな言葉を吐き捨てて男たちが去って行く。これで少しはアリサの悪い風評が減ればいいのだが。
コウタとアリサの元へ戻れば、コウタが苦笑いしていた。お疲れ。ああ。まあ、友だちが傷つけられるのは嫌だよな。当然だ。それを黙ってみているやつなど友人とは言えないだろう。友人は大切にしろと雨宮教官に言われたのだ。

「それでエンが悪口言われたら意味ないじゃないですか!」

アリサの悲しむ顔が見たくないから文句を言ったのだが、結局アリサを泣かせることになってしまった。すまない、泣かないでくれないか。馬鹿っ!馬鹿っ!思い切り抱き着かれてそのまま尻もちをつく。
後は頼んだ!コウタもこの場から脱走して、静まったエントランスには、アリサの鼻をすする音が響いていた。

「私のせいでエンが悪く言われるなんて嫌なんです」

「それは嬉しいな。ありがとうアリサ」

「だから、私も強くなります。守ってもらうだけじゃなくて、私も大切な人を守れるように」

「ああ、共に強くなろう」

そのために戦い方を教えてくれと言うアリサ。まず武器が違うな。いいんです!私にとってあなたが、その、一番尊敬出来るから...随分可愛いことを言うな。も、もう!茶化さないでください!顔を赤くしながらそう言って笑う友人を改めて守ろうと誓った。
あ、でも怪我はしないでくださいよ?...努力はしよう。絶対!...努力はする。怪我したら怒りますから!!頑張るさ。怪我をしても怒られても私にとっては美味しい限りなのだが、アリサが悲しむ顔はあまり見たくない。どうやら痛みとはしばらくお別れをしなくてはいけないようだ。
これはこれで美味しいプレイだな。結局行き着く思考は、どうやっても同じところのようだった。

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