とあるドMは神を喰らう - deer

二人だけの秘密は永遠のロマン

アリサのリハビリに付き合っているとはいえ、第一部隊で動けるのは三人しかいない。その中で新型神機使いである私が任務に駆り出されないわけがなく、クアドリガ一体の討伐に単独で挑んだはずだった。
もちろん情報は異なっていて、通信機も使えない。私が知っているクアドリガは火を出してくるはずなのだが、こいつは氷を出してくるようだ。私の武器の属性は火なので丁度良い相手ではあるが、通常のクアドリガより攻撃範囲が広いようで、地面から生えた氷に足を貫かれて激痛が走った。
氷ごと叩き斬りそのまま攻撃を続けたが、クアドリガを倒す頃には凍傷のようになっていた。これで歩くのは中々辛いな。そう思いながら警戒を続けていると、ズボッと音を立てて大量のコクーンメイデンが生えてきた。
クアドリガから得たアラガミバレットを打ち込み続け倒していくが、数が多すぎて怪我が増えていく。本当にジャミングを受けたので、今日は嘘にはならないはずだ。何とかコクーンメイデンを潰して回復錠を噛み砕く。
やっと使えるようになった通信機で任務完了を伝えたが、今日の支部長殿の機嫌が悪いのか、大型アラガミが現れたと言われた。迎撃する。私の言葉を最後に通信機がブツリと切れた。まるで私が嫌な奴のようだな。至極冷静にそんなことを考えながら、姿を現したボルグ・カムランに突っ込んだ。
足に力を込めた瞬間に二段階ジャンプで攻撃を避ける。アラガミが倒れる直前になると悪あがきで同じ攻撃を続けると聞いたが、今のボルグ・カムランがそうなのだろう。何度も一回転して尻尾を振り回してくる。またか。ジャンプで避けようとした瞬間、ボルグ・カムランに体当たりをされる。もろにそれを受けて壁に激突してしまった。
打撲だけで済んだのか、骨折しているのか、もはや痛みでどうなっているのか分からないが、この状況は非常にまずい。目の前で針を突き刺そうとしているボルグ・カムランが見えるあたり、私はここで殺されてしまうのかもしれない。
アリサが部屋に遊びに来る約束をした。ソーマにイタズラをする計画を立てた。また一緒にご飯を食べようと、楽しみだったのに。パパとの約束は、ああ、死んだら絶望になってしまう。生きて希望でありたいというのに。
ボルグ・カムランの針にが目の前に迫った時、エンッ!ソーマの声が聞こえてボルグ・カムランが仰け反る。

「ソーマ...」

名前を呼んだはずだったが、私の口から出たのは自分の血反吐だけだった。ろくに動かない身体を無理やり動かして回復錠を噛み砕く。休んでろ馬鹿野郎!そう言うソーマに返事も出来ないまま、壁に背中を預けた。
元々体力を削っていたせいか、ギャアアと声を上げてひっくり返ったボルグ・カムランをソーマが捕喰する。お礼を言わなくてはと口を開くが、黙ってろ馬鹿とお礼を言う前にソーマに遮られてしまった。

「死にてえのかよ...」

何かを耐えるように私を睨むソーマ。前も言われたな。血を吐きながらそう言えば、誤魔化すなと睨まれる。死にたいわけじゃないさ。じゃあ何で通信を切った。どうやら私が通信を切ったと思った竹田オペレーターが救援を出してくれたらしい。それが無かったら死んでいたのだから帰ったらお礼を言わなければならない。

「ソーマ、通信を切ってくれないか」

ソーマの通信機にまで何かを仕込んでいるわけではないだろう。聞かれたらまずい話なんだ。睨み合いの末、舌打ちをして通信を切ったソーマに礼を言う。どう説明すればいいだろうか。パパも知っていたことを踏まえて話さなければならない。

「私の偏食因子は普通じゃないらしくてな。異常な回復力を持つらしいんだが、それを試すために支部長殿が実験と称して任務内容を書き換え、イレギュラーなアラガミとの交戦で私に怪我をするように仕組んでいるんだ」

私と任務に行くと必ず他のアラガミがくるのはそのせいだ。巻き込んでしまってすまない。本当は単独任務だけを受注して誰も巻き込まないようにしたいのだが、私にはまだ実力が足りない。それに私は仲間が共に戦ってくれるのは何よりも心強いと思うのだ。

「パパはそれを知っていた。だから気にかけてくれたんだ。他にも支部長殿の大きな計画を探っていたんだが、そのせいでアリサは精神操作を受けてパパを消すように仕組まれたんだ」

私の見た感応現象の内容を合わせて考えるとそういう結論へたどり着く。パパにアリサ、私の大切な人たちを巻き込んだ計画とやらを私は許すわけにはいかない。
だから、死にたいわけじゃない。死なない程度に怪我をするよう仕組まれているだけだ。そう言ってソーマを見れば、酷く傷ついた顔をフードで隠そうとしていた。

「...いつからだ」

「初任務からだな」

「何で黙ってた」

「巻き込みたくなかった。私は怪我をしてもすぐ直るが、ソーマたちはそうじゃない。怪我をするのは私だけで十分だ」

「馬鹿野郎ッ!!」

どこが痛いのかも分からない身体を抱き締められる。中々強い力でそうされているからか、激痛で意識が飛びそうで、喉の奥から溢れてくる叫び声を歯を食いしばって耐えた。同時に感じる快楽に身を委ねたいところであるが、それより先にソーマの声が聞こえた。

「お前が怪我をすれば傷つくやつがいるだろうが!何で一人で抱えてんだ!何でお前が傷つけられねえといけねえんだ!!」

あのクソ親父が、すまねえ。何よりも辛そうにそう吐き出したソーマが腕の力を緩める。そんな顔をしないでくれ。ソーマの顔に手を伸ばすが上手く動かない。そんな私の手を掴んで自分の頬に当てたソーマは、すまねえと謝り続けていた。

「ソーマは悪くないだろう?」

「だが、俺はお前を傷つけてるやつの息子だ...」

「私はいいさ。だが、パパやアリサのことは絶対に許さない。ソーマにこんな顔をさせていることも許せないな。父親の記憶は無いが、子どもを悲しませるのが親ではないはずだ」

「俺のことを責めねえのか」

「だから、ソーマは悪くないだろう?それにな、私は、ご飯を残さず食べてくれるやつは好きなんだ」

むしろこの話を聞かせたことで私がソーマを傷つけてしまった。すまない、ソーマにそんな顔をさせてしまったな。...本当に、馬鹿だなお前は。ソーマの表情が少し和らいだのだから、馬鹿で十分だ。

「ジャミングだったことにしないか?」

こうなったら共犯者だとソーマに通信を繋がせる。直ぐに来てくれるという輸送班との合流地点までおぶってくれたソーマの服に血がついたことを謝れば、じゃあお前が洗えと上着を着せられたのだった。

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