とあるドMは神を喰らう - deer

髪撫で先の米

内臓の傷を一晩で治し、何事もなかったかのように復帰した日、アリサの最後のリハビリとしてボルグ・カムランを討伐した。ロングブレードとアサルトの切り替えも、捕喰してリンクバーストすることも前より上手くなったとアリサに伝えると、嬉しそうに頬を染めていた。
そんなアリサを帰投させてそのままシユウを狩りに行く。最近増えてきた堕天種というやつで、通常のシユウとは異なり、電撃で攻撃してくる。直撃を受けるとその場で動けなくなってしまうため、シールドで防ぎながら確実に仕留めていった。
情報には無かったオウガテイル堕天に盛大に吹っ飛ばされながら警戒して進んで行くと、視線のようなものを感じた。アラガミかと思い発熱ナイフを構えたが、どうやら気のせいだったようだ。

「それで、今日はどうだった」

「堕天種が増えてきていることが気になりました」

「馬鹿者!そんな報告をする前に手当てを受けろ!」

何も言っていないのになぜ分かるのだろうか。雨宮教官の叱責に興奮しながら頭を下げて医務室へ向かう。最近、帰投して直ぐに雨宮教官に捕まっては医務室へ行かされることが増えたと思う。今日は精々肋骨が折れている程度なので見た目では分からないと思うのだが。

「あー!また怪我したのか!」

医務室でコウタに会ってそう迫られる。今度はどこだよ!肋骨だ。どうせオウガテイルかなんかだろー。よく分かったな。だって小型苦手じゃんか。そうだろうか。前も言われたような気がするが、あまり苦手意識はないので首を傾げることしか出来なかった。

「あんまり怪我してたらお嫁に行けねえからな!」

「コウタまで言うのか」

「リンドウさんにでも言われたのか?」

「いや、ソーマにな」

へえ、ソーマが。ニヤニヤと気持ちの悪い顔をするコウタ。またソーマに怒られるぞ?そん時は助けてくれよな!親友!私は随分都合の良い親友のようだ。

「そうだ、さっきソーマが探してたぞ?」

「分かった。後で部屋へ行ってみよう」

「ちゃんと怪我治せよー?」

「ああ」

手を振って出て行くコウタに片手を上げて別れる。あまり心配はかけさせたくないが、ソーマは既に怪我をしたことを知っているのだろう。また怒られるのか。どうせならビンタもオプションにつけてはくれないだろうか。そんなことを思いながらレントゲンを受ければ、案の定肋骨が折れていて、強制的にギプスをつけさせられた。
雨宮教官へそれを報告してソーマの部屋へ寄れば、開口一番に馬鹿がと言われる。雨宮教官にも言われてきたところだ。それだけ言われても治らねえのは筋金入りの馬鹿だとしか思えねえな。どちらかと言えば筋金入りのドMなのだが、私の口はすまないと言うことしか出来ない。

「その内アリサにもバレるぞ」

「それはまずいな。アリサに怪我をしないと約束したのに」

「なら怪我なんかしてんじゃねえよ」

「精進する」

一応怪我をしないようにしているつもりなのだが、超接近型である私はアラガミの攻撃を受けやすいのだ。結局、私が強くなるしかないのだろう。とりあえず今度リッカに装備の相談をしようと思う。

「ところでソーマ、探していたと聞いたが私に何か用があるのか?」

馬鹿と言うために探していたのであれば、それはそれで大変嬉しいのだが、きっとそうではないだろう。ああ、そうだった。ソーマが立ち上がって何か袋を持って来た。

「配給品で余ったらしいからな」

やる。短い言葉と共に差し出されたそれを受け取る。想像より重たいそれを開けてみると、夢のまた夢だとばかり思っていた米が沢山入っていた。

「いいのか?貴重なものだろう」

「俺はいらねえからな」

「そうか、ありがとうソーマ」

「別にお前のためじゃねえ」

「ああ、そうだったな」

こんな貴重なものを入手するにはそれ相応の身分と実績が必要なはずだ。最近一人で任務に行っているのを見かけたのは、このためだったのだろう。本当に可愛いやつだと頭を撫でれば、止めろと睨まれる。それでも無理やり引き剥がさないあたり満更でもないのだろう。
ソーマは撫でられるのが好きだな。...ふん。今度ご飯を作るから一緒に食べないか?肉じゃが。どうやら前の肉じゃがが気に入ったらしい。極東の家庭料理だったそれを一緒に食べるとは、家族のようだと思う。もう無くしたものだと思っていたが、こんなところでまた家族が出来るとは。

「その前に怪我治せよ」

「心得よう」

そう言って心配性なソーマの髪を掻き乱せば、止めろ馬鹿と睨まれるのだった。

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