とあるドMは神を喰らう - deer

鳥は猫に負けるのが定石

任務のブリーフィングをしていると、コウタがアリサを任務に出させてあげて欲しいと提案した。私はもちろん、橘副隊長も賛成したため、アリサも共にヴァジュラ討伐の任務に参加することになった。
リハビリを乗り越えたアリサはもう大丈夫だとは思うが、それでも相手がヴァジュラである以上心配しないわけにはいかない。そう思ってアリサを見れば、病室で泣いていた頃とは全く違う、力強い目で頷いていた。

「大丈夫です。私はもう弱くないんですから!エンですよ?そう言ってくれたの」

「そうだったな。じゃあコウタの活躍を期待して怪我のないように戦うか」

「あ、今自分で言いましたからね?怪我しないでくださいよ!」

「努力するさ」

私はいいがアリサが怪我をするのはいただけない。動きの素早いヴァジュラは気を抜けば猫パンチで重傷を負わされてしまう。私としてはあの猫パンチの往復ビンタを所望したいところだが、今日はやめておこうと思う。
任務開始時刻になり一斉に地面へ飛び降りる。ヴァジュラの位置は分かっていたので、私が先陣を切って奇襲を仕掛けて戦いが始まった。

「一つに固まってると狙われるわ」

ダウンしたと思えば、悪あがきのようにその場から離脱したヴァジュラを探して散開する。捕喰に向かいやすい教会の周りを探すが、その姿は見当たらなかった。
そうしている内にアリサの姿が見えたので駆け寄る。やはりヴァジュラ相手では辛いのだろうか、顔色が悪かった。

「避けて!!!」

そんなアリサの叫び声と共にアサルトから銃弾が発射される。転がるようにそれを避ければ、私の後ろで重たい音がして土煙が立った。コウタと橘副隊長が合流したが、アリサが両手で顔を覆って泣き出してしまった。
後ろから襲ってきたヴァジュラを倒してくれたことにお礼を言えば、馬鹿!と繰り返して声を上げていた。そんなアリサを抱き締める橘副隊長を見て、何か良いな、これとコウタが鼻の下を伸ばしていた。

「それにしてもアリサ強くなったなあ」

帰りのジープの中でコウタがそう言った。近い内に抜かれるかもしれないな。げ!それはまずい!私たちも気が抜けないな。アリサより先輩である以上、アリサを守る側でいたいものだが、このままでは直ぐに追い抜かれてしまいそうだ。

「まあ、その前にエンはツバキさんの説教だけどなー」

「そうね、アリサがいなかったらあなた死んでいたかもしれないもの」

「...アリサ、報告書の改ざんというのはどうだろう」

「駄目に決まってるじゃないですか!ソーマにもきっちり報告しますからね!」

取りつく島もないというのはこういうことか。怪我をしてないだけましではないかと言ってみるが、誰も聞く耳を持ってくれはしなかった。ああ、無常だな。世の中の儚さを思いながら帰れば、雨宮教官とソーマによる長い長い説教が始まったのだった。

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