とあるドMは神を喰らう - deer

空を飛ぶスカートは無い

「サリエルのスカートを引き千切れば空を」

「飛べねえからな」

空中戦はエアリアルを使う私にとって有利である。あまりダメージを受けないスカートは避け、脳天に思い切り剣を叩き込む。ダウンしたサリエルのスカートでも引き千切れば空を飛べるのかと手を伸ばしたが、ソーマに言葉を遮られると同時に頭を叩かれた。
お前ら緊張感持てよなあ。コウタにすまないと謝って大人しくサリエルを捕喰する。きっちりリンクバーストすれば任せとけと笑っていた。
若干レーザーで腕を焼かれたが、疼くような痛みが実に心地良かった。そのまま発熱ナイフを叩き込めば、重たい音を立ててサリエルが沈黙した。

「だから、怪我をしたなら下がりなさいって言ってるでしょ!?」

「申し訳ございません」

輸送車で火傷を冷やされ、薬を塗りこまれる。冷やされすぎて感覚のない腕ではその痛みを味わえないのが残念なところである。こんなんで隊長なのかー。隊長なら隊長らしく怪我なんかしてんじゃねえ。さっきからボロクソに言われているような気がしてならないが、気にしたら終わりだろう。
この任務の終了をもって私は第一部隊の隊長になることが決まったそうだ。パパの後を私が継ぐことになるとは思ってもみなかったが、権限が強くなるのは悪いことではない。支給品が増えればそれだけ多くの料理を作れるのだ。その前に責任増えるとかじゃねーのかよ!コウタにツッコミを食らったが、仲間を守る覚悟などとうに決めているので今さらだと思うのだ。

「にしてもエンがリーダーかー」

「傷だらけのリーダーっていうのもね。ちょっと頼りないかな?」

「シユウの羽根千切って飛ぼうとするリーダーなんてのはごめんだな」

「精進いたします」

どうやら仲間を守るにはまだ力が足りないようだ。確かに包帯まみれのリーダーとは随分頼りないような気がする。包帯でキツく縛られた腕を見れば、隠しとけ、とソーマが上着をかけてくれた。

「あら?」

「...何だ」

「ちょっと意外だなって思っただけよ?」

優しいのね。チッ。橘副隊長とソーマがそんなことを話している間、私とコウタはソーマの上着で遊ぶ。ブカブカだなー。ああ、ソーマは大きいな。上まで閉めたらすっぽり隠れるんじゃね?チャックを上げてフードを被ればコクーンメイデンのようだ。

「ジャミング?」

「頑張ればレーザーも撃てるかもしれない」

「まずスナイパーに持ち替えるところからじゃね?」

「それは中々先が長いな」

空を飛ぶのは諦めてコクーンメイデンになるかとコウタと装備の相談をしていると、なれねえよ馬鹿とソーマのチョップが降って来る。痛い。痛くしたからな。そんな私たちを見て、お前ら仲良いなーとコウタが笑った。
コクーンメイデンがダメならやはりシユウか?こだわりすぎだろ!空を自由に飛びたいんだ。昔の人は空を飛んだと何かで見たが、どんな気分だったのだろうか。ヘリから飛び降りたことはあるが、あれはただの落下だとアリサに言われた以上、飛んだとは言わないのだろう。

「何だかね、少し分かるの。リンドウやソーマがあの子を構いたくなる気持ち」

「何言ってやがる」

「放っておいたらどこか遠いところに行っちゃう気がする。一人で傷ついて、まるでそれが当たり前みたいに」

「...馬鹿だからな」

「ソーマはリンドウとは違う気持ちみたいだけどね?」

私がコウタと空を飛ぶロマンについて話していると、突然フードが引っ張られて背中から倒れる。どうかしたのか?見上げるように犯人であるソーマに尋ねる。はしゃいでると落ちるぞ。上着の余った袖を羽根に見立ててはためかせているのが危なっかしく見えたようだ。

「だって、パパではないものね」

ソーマにフードを下げられたので顔は見えなかったが、橘副隊長の楽しそうな声が聞こえた。お、着いたな!コウタの声と共に車が止まり、私たちはアナグラへ帰還したのだった。

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