とあるドMは神を喰らう - deer

たまには過去も振り返れ

私が第一部隊のリーダーになり、少し経った頃、エレベーターを待っていると雨宮教官に会った。怪我はないか?第一声がそれとは、どれだけ信用がないのだろうか。いや、今日も今日とて怪我をしているわけだが。

「だからあれほど医務室へ行けと言っているだろう!」

クアドリガの突進で外れた肩を放置していたのだが、一目で見抜くとは流石雨宮教官である。お前がいくら怪我を隠しても直ぐに分かる程度には慣れたさ。エスパーのように心を読んだ雨宮教官に医務室へ押し込まれた。

「肩が外れているのを放置して何をしようとしていた?」

「リッカに神機のメンテナンスに来るように言われたので整備室へ向かおうとしておりました」

「肩が外れたままで行く馬鹿がどこにいる!」

「ここに、でしょうか」

馬鹿正直に返事をしすぎたせいでファイルの角で殴られる。雨宮教官の折檻を受けられることに涎が垂れそうだが、それより先に大きな溜息が降って来た。

「お前は本当に...兄に似ているな」

「私の兄をご存知なのですか?」

「ああ。以前お前たちのいたサテライト拠点の近くでアラガミが出た時にな、避難しろと言っても頑なに防護壁を修理し続ける大馬鹿者がいてな」

「...申し訳ございません」

「その馬鹿は全く口を開かなかったが、無理やり避難させようとすれば、諦めたら希望は絶望になると言ってな。アラガミが迫る中でも逃げずに修理し続けていた」

兄がご迷惑をおかけしました。兄らしいと思いながら深々と頭を下げようとしたが、あまり肩を動かすなとそれを止められる。お前たち兄妹は本当に手が焼けるな。溜息混じりの雨宮教官に返す言葉も見つからなかった。

「だがな、私はそういう馬鹿は嫌いじゃない。そんな馬鹿のおかげで救われる者がいるのもまた事実だ」

アリサはもちろん、ソーマは少し柔らかくなった。コウタも随分立ち回れるようになった。そして、サクヤは前より笑えるようになった。それは紛れもなくお前のおかげだ。そんな雨宮教官の言葉に腹の中がくすぐったいような感じがした。恐縮です。今度は肩を動かさないように頭を下げた。

「リンドウのようになる必要はない。お前はお前のままにリーダーとして第一部隊を率いればいい。だがな、これだけは忘れるな」

死ぬな。何よりも重い命令に承知いたしましたと返答する。本当なら怪我も無茶もするなと言いたいが、お前はそんなことは聞かないからな。申し訳ございません。アリサとの約束も守れていないのだ、何を言われても仕方がない。

「お前には友と仲間がいる。それだけは忘れるなよ」

「はい」

外れてない方の肩に手を置いて雨宮教官が医務室を出て行く。リッカの元へ行こうと医師に頭を下げて整備室へ行けば、神機も君も傷だらけじゃない!!とみっちり説教されたのだった。

ALICE+