とあるドMは神を喰らう - deer

気づいたときには手遅れのやつには敵わない

「肉じゃがを作ったんだ。食べに来ないか?」

前よりずっと近くなったソーマの部屋に行ってそう言ったが、黙ったままベッドに腰掛けて動かなかった。何があったんだ?覗き込むようにベッドの前に屈み込むと、酷く辛そうな顔で出て行けと言われた。

「そんな顔で言われて出て行くわけがないだろう?」

「これ以上俺の中に入ってくるな」

「随分可愛いことを言うんだな」

既に私はソーマの中にいるらしい。それだけ大切なのだと自分で言っているようなものじゃないか。大切なものが増えると臆病になる。それは自分も辿った道で、ソーマも同じ気持ちを体験しているのだと思うと、どうにも愛おしいような気持ちになる。

「俺は、お前に死なれたらどうすればいいんだ。コウタが死んだらどうすればいい」

「コウタは強くなった。あいつはそう簡単には死なないさ」

最近なんて回復しようとしない私に回復球を投げてくるようになった。せめて回復弾にしてくれないかとクリーンヒットした頭をさすれば、オラクルが勿体無いと言われたことは記憶に新しい。
偵察兵として、コウタは冷静に戦えるようになっている。私にとってコウタは背中を預けられる親友なのだ。信頼出来るほど強いからな。ソーマに怯える必要はないと伝えるが、それじゃあ意味ねえだろと睨まれた。

「お前もいねえと意味ねえだろ!」

「そうか、ありがとう」

私が死ぬことを恐れて声を震わせるソーマを立ち上がって抱き締める。こうして気持ちを伝えてくれる仲間が可愛く思えて仕方がない。そんな仲間たちのためにも死ぬわけにはいかないと思った。

「なあ、ソーマ。私も大切なものを失うのは怖い。だからな、私は強くなってそれを守りたいんだ」

アリサが守りたいと言ってくれた。コウタが任せろと言ってくれた。私には背中を預けられる仲間がいる。それがどんなに心強いことか、ソーマにも知って欲しい。

「私はソーマを守る。それが仲間というものだ」

「...頼りない仲間だな」

「じゃあソーマも私を守ってくれないか?」

ソーマがいてくれたら、私はもっと強くなれるからな。固まるソーマに伝えると、馬鹿だとしか思えねえなと言いながら背中に手を回してくれた。

「俺といるとお前も悪く言われるぞ」

「ソーマを悪く言うやつは私が全力で殴り飛ばそう」

「何回懲罰房へ行くつもりだ」

「何度でも」

「本当にお前は馬鹿だな」

「これでも第一部隊の隊長だからな。使える権力はいくらでも使ってやるさ」

腕に力を込めたソーマの背中をゆっくり撫でていく。少しでもソーマが安心出来たらいい。そう思っていると、どこか不服そうな声で腹減ったと呟いた。
ご飯にするか?出来てから時間経ってんだろ。出来立てじゃないことが嫌だったのか。本当に可愛いな。ソーマの髪を撫で回せば、不機嫌そうな顔で睨まれたが、どんな顔をしても可愛く思えるのだから、どうしようもない。

「肉じゃがは冷める時に味が染みるんだ。温め直せばきっと前より美味しいぞ?」

だからそんな可愛い顔してないでご飯を食べよう。可愛いとか言ってんじゃねえよ。米も炊いたんだ。...早く行くぞ。なんだかんだ楽しみだったのだろう。身体を離して早くしろと急かすソーマに手を引かれながら自室へ入る。
温め直した肉じゃがと湯気を立てる白米を並べる。旨い。一口食べたソーマがそう呟いた。鍋も白米で食べるんだが、あれは大人数で食べるともっと美味しいらしいぞ。そうか。ああ、だからみんなで食べないか?改めてそう誘えば、ああという短い返事と共に頷いてくれたのだった。

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