とあるドMは神を喰らう - deer

怪獣だってバラードがお好き

「そこ座れ」

ベッドに座るように言われて腰を下ろす。冷蔵庫から取り出した缶コーヒーを渡してくれた。

「ありがとう」

それに礼を言って受け取れば、嘘は吐くなよと釘を刺された。

「マーナガルム計画」

小さく呟けばソーマの身体が揺れる。どこで知った。榊博士が落としたディスクで。...そうか。今までソーマが自分を化け物だと言っていたのはこのせいなのだろう。何も悪いことをしていないのにどうしてソーマが傷つかなくてはいけないのか。そんなことばかり考えていた。

「私はソーマの全てを知っているわけじゃない。だが、あのディスクを見て少し安心したんだ」

ソーマの母親はソーマのことを確かに愛しているように見えた。支部長殿はソーマの母親を愛していた。ああ、ソーマは愛されて産まれてきたのだ。そう感じて安心してしまった。
今の支部長殿がソーマのことをどう思っているのかは知らないが、それでもソーマの宿るお腹を撫でる手は優しかった。だからこそ、複雑な気持ちになる。息子を傷つけてまで守ろうとするものは何なのだろうか。

「ソーマは母親に似ているんだな」

隣に座るソーマ頬に手を当てて顔を見る。髪の色は支部長殿に似たようだが、目などは母親に似ているように見える。

「これで分かっただろ。俺は化け物だ」

「そんなわけないだろう。ソーマが産まれなければ今頃人類は滅んでいる。重すぎる使命を背負わされてもなお戦ってくれたソーマのおかげで私はここに生きていられる」

そんなソーマが化け物であるわけがない。本来であれば英雄とも言われるべきではないか。産まれながらに偏食因子を持っているのが何だというのだ。それならば、外から偏食因子を取り込み続けている私たちはどうなる。アラガミを取り込み続けている私たちはもっと化け物ではないのか。

「それに、私はソーマより早く怪我が治る。それをソーマも化け物だと言っただろう?もしもソーマが化け物ならば、私はもっと化け物だ」

「...悪かった」

「お粥を食べさせてくれたからチャラだな」

「そんなこともあったな」

「ああ、あの頃からソーマは優しかったな」

私の言葉にソーマが薄く笑う。随分笑うようになった。そうか?ああ。打ち解けてくれているようで嬉しい限りだ。

「それで、どうして俺の部屋に来たんだ」

さっきの笑顔はどこへ行ったのか、険しい顔をするソーマに両手を上げる。これは嘘を吐いても直ぐにバレるだろう。大人しく本当のことを言うしかないと口を開く。

「盗聴器を見つけてな」

監視カメラのことは言わずにそれだけを教える。だが、それだけでも十分だったのか、あのクソ親父!と今にも飛び出して行きそうなソーマの腕を掴んで止めた。

「仕方ないさ。私はパパの娘で、実験対象だからな」

私は裏切る可能性の高い人間だと思われているはずだ。それが分かった時には迷わず私も消されるのだろう。そうなるとやはり監視カメラが仕掛けてあるのだろう。怪我の治りを見るには映像が手っ取り早いはずだ。

「それだけじゃねえだろ」

「何がだ?」

「盗聴器だけじゃねえだろ」

「...確認は出来ていないが監視カメラもあるだろうな。そうしなければ怪我の治りが見れないからな」

結局ソーマにも隠し事は出来ないようだ。表情は変わっていないはずなのだが、お前は分かりやすいんだと頭を小突かれた。

「もう帰るな」

あのクソ親父の好きにさせてたまるか。あの部屋に帰らなければ私の情報は漏れない。だからここにいろとソーマに迫られる。口説いているようだな。茶化すな。真剣な顔のソーマは本気で言っているようだ。

「勘違いされるぞ?」

「好きにさせとけ」

私が掴んでいたはずの腕を今度はソーマが掴んでいる。私がイエスと言うまで離してはくれないようだ。頑固者め。何とでも言え。そのまま身体が抱えられてベッドの上に投げられる。シーツに埋もれて何とか抜け出そうともがいたが、それより先にソーマの腕を回されて抜け出せなくなった。

「帰るなよ」

少し震えた声でそう呟くソーマから離れられるわけもなく、その頭を抱きかかえるように引き寄せる。甘えん坊だな。細く柔らかな髪を梳けば、うるせえと拗ねられた。

「今日はもう寝てしまうか」

ゆっくりソーマの頭を撫でる。せめて靴を脱げばよかった。そう思いながら、目を閉じて、やって来た眠気に身体を委ねるのだった。

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