とあるドMは神を喰らう - deer

狐目は8割偽物

榊博士に呼び出されたついでにディスクを返す。中身は見たのかい?はい。短い返事だったが、それだけで十分だったようだ。

「今日君を呼んだのは他でもない。とある極秘任務を頼みたくてね」

以前からソーマには頼んでいたが、人手が足りないので私も駆り出されるそうだ。支部長殿も承認済みという点が少し気にかかるが、命令であれば仕方がない。ソーマと二人でこなしていけばいいらしいので、後で話を聞いておこう。

「ところで君はマーナガルム計画を知っているかい?」

「拾ったディスクで拝見いたしました」

回りくどい言い方だと思うが、おそらくこの博士にも何らかの思惑があるのだろう。私の大切なものを傷つけようとするのであれば容赦はしないが、そうでないのなら都合よく使われてやろうではないか。

「だからソーマの傍にいるのかい?」

「ご想像にお任せいたします」

私の事情や気持ちを話すのはあまり得策ではない。元より表情で気持ちがバレることはないので、最大限にそれを利用することにした。

「ソーマはね、沢山傷ついてきた。私なんかじゃ計り知れないほどにね」

だから、同情なんかで傍にいるのなら止めてやって欲しい。いつも細められている目が開かれる。ディスクを見た限り、榊博士に対して良い感情は持てなかったが、ソーマを心配しているのは本心のようだ。

「お言葉ですが、ソーマはコウタと肉を取り合います。アリサがだし巻き卵にソースをかけようとすると止めます。食べ終われば、洗った食器を拭いてくれます。傍にいる理由など、それだけで十分ではないでしょうか」

ソーマは優しくて可愛い良いやつだ。そんな仲間を守りたい。私からすればそれだけなのだが、そのまま言葉にしてしまうのは勿体無いような気がする。この人が知らないソーマを知っていることは私にとって大切なことなのだ。
そうかい、ソーマが。どこか面白そうに呟く。私は君たちのことを見くびっていたようだ。それがどういう意味なのかは分からなかったが、きっとソーマに悪く働くものではないだろう。

「ソーマをよろしく頼むよ」

「承知いたしました」

深く頭を下げて研究室を後にする。良い仲間を持ったじゃないか。榊博士のそんな呟きが私の耳に届くことはなかった。

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